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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第4.5章:揺れる宙
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4.5-3:束の間の平穏③

話が、進まない、よ。

だって、一馬とドクターだからね。

 ボルジア共和国の主星である『ステッサ』での戦闘で搭乗した『オグマ』には、確かに腕と上腿部が存在した。だが、目の前のハンガーに鎮座して、周囲にメカニック達が群がっている機体はどうだろうか? その両方が存在していない様に見える。いや、確実に存在していない。


 オッサンが、目の前の機体が『オグマ』の成れの果てだと気が付けたのは、コクピットを含めた胴体部分がほぼオリジナルの意匠そのままだったからだ。逆に言えば、それ以外の部分は全て違うとも言える。頭部も、腕の代わりについているナニカも、背面のスラスター類も、股関節周りや上腿部も全くの別物だ。


 頭部と四肢と、腰下が全て総入れ替えになっている。パッと見で、ドクターが求めた機体コンセプトは凡そ把握出来た。見まごうことない、機動性と運動性に全振りした機体だわ。何処からどう説明すれば良いんだこれ?


 「ドクター。先ずは頭部から説明してくれる? 何て言うか、角ばった砲弾みたいだけど」

 「では。先ず頭部には、巡洋艦クラスが搭載している長距離索敵用レーダーを再設計し小型化した物と、狙撃仕様のミディール改に搭載されている、精密射撃用の専用FCSをこの機体専用に再改良したものが搭載されております。形状に関しましては、それらの搭載スペースを確保する為と、正面からの被弾面積を出来る限り抑えると共に傾斜装甲としての役割も与えております」

 「それらは、胴体には搭載出来なかったの?」

 「先の機体同様に基礎フレームから見直した結果、搭載スペースが減少しましてな? 機体構成上、無用となる可変機構を廃したものの、追加となるこれらを搭載するスペースまでは確保出来なかったのです。それと、胴体部にこれ以上センサー類を集中的に集めますと、被弾時に連鎖的に失われる恐れもありましたので」

 「なるほど」


 基礎フレームの改良によって、機体のダウンサイジング化には成功したものの、結果として内部スペースに皺寄せがいったか。一応、ネックになっていたであろう可変機構を廃した事で多少は余裕が出来たのだろうが、それでも被弾時の連鎖的な損失は避ける迄には至らなかったと。痛し痒しだなぁ。


 「胴体に関しては、基礎フレームの改良による小型化と可変機構の廃止、後はコクピット周りの装甲強化が主ですな」

 「それで、オリジナルのデザインが残っていた訳か。まぁ、内部構造がかなり違うんだろうけどさ」

 「そうですな。特に、可変機構を廃した事でこれまでとは機体バランスが大きく変わったかと。整備性に関しては、結果的に改善されましたがな」

 「了解。全体の機体バランスを早めに掴んでおかないとな」


 可変機構がオミットされたが、その全体形状はミディールの様な人型の機体とは大きく異なる。機体の重量バランスが大きく違うし、何よりこの機体のコンセプト的に正攻法での回避行動が主となりそうだ。


 「次は……、腕部? てか、これは腕なのか?」

 「これまでの機動兵器に搭載されていた、人の腕部を模したマニュピレータかと問われれば否ですな」

 「だよな。どう見ても、全く別物だ」

 「はい。これは複合ユニットとでも申せば良いでしょうかな」

 「見た目は、スラスター付きの分厚いサーフボード?」


 何となく感じたままに口にしたが、サーフボードって表現が一番しっくり来る気がする。まぁ、スラスターが2基も搭載されている、機動サーフボードなんて実際には無いけどね。これで、波が無くても大丈夫!


 「前部には200㎜ビームキャノンを2門搭載し、両舷にはミサイルランチャーを搭載。ユニット中央には、攻勢型の電磁パルス発生装置を搭載しておりますので、敵中で周囲へと使用すれば効果は絶大かと。それと、後部にはミディール改にも搭載されているメインスラスターを2基積んでおります。更にユニット内部には、ビームキャノン・電磁パルス・スラスターそれぞれ専用のサブジェネレーターを内蔵。無論、推進剤タンクも内包しております」

 「……盛り過ぎだろ」

 「それから、機体全体にビーム及び電磁パルス対策として特殊コーティングを施しておりますので、ご安心ください。先ほどお見せした、直掩機となる予定の機体にも同様の処置が施されます。あくまで、餌食になるのは敵のみですぞ?」

 「腕の代わりに武装付きのスラスターか。でも、これだと武装としての取り回しが悪いし、射角も厳しくない?」


 ドクターがメッチャ喋る。いや、今は良いか。


 常に三次元の動きが可能な腕部に比べて、どうしても動きが縦回転のみの二次元に制限されるであろう複合ユニットでは 色々と使い勝手に差がありそうだが。その都度、機体ごと向き直るってのはね……。


 「その点は、ご安心を。複合ユニットは、胴体と有線での接続を行う分離式となっております。攻撃に使用する際は、各ユニットを随意に胴体から分離し操作していただければ問題ございません。勿論、これまでの香月司令官の戦闘データを基にした補助AIを搭載しておりますので、ある程度の自立戦闘も可能ですぞ?」

 「……以前、複数の『オグマ改Ⅱ型』を思考制御で同時に操縦した覚えがあるけれど、それと似たようなものって事か」

 「はい。複合ユニットは『オグマ』の様な可変機構を持ちませんし、その構造は極力シンプルかつ堅牢な物にしておりますので、香月司令官の次元が異なる操縦技術にも追従出来るかと」


 某作品シリーズで言うところの、オールレンジ攻撃って奴ね。まぁ、確かにそれなら取り回しと言う意味では問題無いだろうし、射角も自由自在だな。ただ、有線が切れたら終わりじゃね?


 「有線が切られた場合は?」

 「推進剤の残量がある内は、補助AIによって自立行動・戦闘を継続します。また、コクピットからの指示で、胴体へと再接合させる事も可能です。まぁ、その場合は分離式の強みが消えますので、余りお勧め出来る手段ではございませんな」

 「なるほど」

 「それを解消する為、同型のユニット2基1組を、直掩の機体にはサブアームを介して装備させます。必要に応じて、この機体へと譲渡させれば再び有線での使用も可能となりますぞ」

 「直掩機の武装兼スラスターとして利用しつつ、状況に応じてこっちでもスペアとして使えるって事か」

 「はい。左右のユニットは何れも同一規格ですので、その辺りの問題もございません。また有線が破壊されたユニットも、直掩機であればサブアームを介しての運用が可能ですので、此方も問題ございませんな」


 なるほど。確かに、腕の場合だと右左で違うからな。右腕には右腕しか再装着出来ないが、この複合ユニットならば、左右は問わずって事ね。万が一、複合ユニットそのものが破壊されても、直掩機から譲渡されれば戦闘継続が可能。譲渡した方の直掩機は、そもそも追加武装兼スラスターの扱いだから、それらが欠けても多少戦闘能力が落ちる程度で戦闘自体は継続可能と。


 「ちなみに、直掩機の複合ユニットをこっちで操作する事は?」

 「勿論、可能ですぞ? とは言え、直掩機の動きを阻害してしまう可能性が高いですので、基本的には手を出されない方がよろしいかと思われますな」

 「あー、それもそうか。でも、上手くタイミングを合わせれば面白い運用が出来そうだよね?」

 「……今から、香月司令官と相対するであろう者達に、心からの同情を禁じ得ませんな」


 解せぬ。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] 頭部にコクピットを乗せるのは無理か・・・ 撃破されたら胴体を分離して、口のビーム砲で攻撃可能にしてほしかった。
[良い点] 宇宙(ソラ)は夢(ロマン)の塊さっ [一言] いっそ腕の武装は。。。 ファンネルにしちゃったら?
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