4-41:楽しい時間
一馬と愉快な仲間達。
自室でシャワーを浴び、サッパリとしてからミーティングルームへと足を踏み入れた。既に、オッサン以外のメンツは全員揃い済み。開始時間にはまだ余裕があるが、何だか遅れた気分になるのは日本人ゆえだろうか?
「改めて、皆おはよう」
『おはようございます!』
作業の手を少しだけ止めて挨拶を返してくれる皆。ソフィー、シャンイン、ドクター、サウサン、ヘイスァ、バイスァ、テトラ、ヤヴァナ。何時の間にか、メンバーも賑やかになったもので。男女比が偏っているのは、まぁ良いか。
テーブルに並べられた朝食の数々。今日は数種類の焼き立てパンをメインに、サラダや卵料理、ベーコンやソーセージ等の肉料理、ヨーグルトにジャムやバター、飲み物にはミルクやジュース、コーヒーに紅茶と洋のテイストで纏められている様だ。いわゆる、ブレックファーストでイメージされる品々だろうか?
「先ずは、食事にしよう。1分を争う様な火急の判断が必要な情報でも無い限りね?」
「内務担当は問題ありません」
「外務担当も同じくですわ」
「開発担当も同じくですな」
「諜報担当も問題ない」
「なら、食事を楽しむとしよう」
久しぶりの要塞で、みんなで囲む食事だ。面倒な話や厄介な話は抜きに、純粋にこの時間を楽しみたいのですよ。勿論、要塞司令官として、やる事はやるけどね。まぁ、そもそも火急の判断が必要な情報があったら、既に話が来ていただろうがな。朝食兼ミーティングまで報告せずに待っている時点で、特段の問題は無いだろう。
「では、いただきます」
『いただきます』
この星系で食前の言葉が何と言うのか、実は知らない。要塞の場合は、オッサンが「いたただきます」と口にしていた事で自然と統一された形。まぁ、日々の糧に感謝する行為なので、重要なのは言葉ではなく、込める想いだけどな。
「空母での食事も悪くなかったけど、やっぱり要塞での食事の方が楽しいな」
握り拳サイズの丸いパンを千切って口に運びながら、そう呟くと。
「往きはともあれ、帰りはパメラ嬢が同席だったからな。一馬には中々きつかっただろうさ」
サウサンが茶々を入れてくる。まぁ、理由も良く分からず不機嫌っぽい感じをずっと醸し出しているパメラ嬢との食事は、中々にきつかったよ。それでも、食事の味が分からないって事は無かったけどね。流石にそこまで追い詰められる様だったら、食事の場所をずらすわ。
「まぁ、終わった事だからな。今は目の前の食事を楽しむだけだ」
「そうですわ! 今は、戦いも終わり、次に備えて英気を養う時ですの!」
「シャンインには、色々と聞きたい事があるかな? 場合によっては、説教部屋送りだ」
「何故ですの!?」
「シャンインだからね」
「全くだ」
「一馬様は兎も角、サウサンに言われるのは心外ですわ!?」
おっと、早速食事を前にしてシャンインとサウサンの場外戦が始まりそうな予感。これも既に要塞名物だよな。大体、サウサンがシャンインをからかって始まる。で、毎回シャンインが言い負かされるか煙に巻かれて終わる。まぁ、別に2人が犬猿の仲って訳では無いから良いのだけど。2人のやり取りは、傍から見ていて楽しいしね。
「ソフィー。留守中、助かったよ」
「いえ、一馬さんが事前に決定されていた事に従ったまでですので」
「それでも、状況に応じて臨機応変に対応してくれただろ? 君のお陰だよ」
「ありがとうございます」
ソフィーは、内務担当であると同時に、要塞のNo.2と言って良いだけの権限が与えられている。彼女の言う様に、今回の要塞攻略から星女救出戦までの大まかな流れは事前に決定していたが、それでもどうしたってその都度ごとに細かい指示と言うのは必須な訳で。それらを、その場で瞬時に判断し下していたのは彼女だ。とても、優秀なのですよ、彼女はね。
「テトラとヤヴァナも、ご苦労様。ソフィーの負担もだいぶ減った様で助かったよ」
「「ありがとうございます!」」
ソフィーの補佐を担う、テトラとヤヴァナ。2人とも、ソフィーが育成に関わっただけに非常に優秀かつ真面目な性格をしている。テトラは、黒い髪と瞳に白い肌、それにフレームレスの眼鏡をかけている。要塞で数少ない眼鏡っ娘です。ドクター? 彼も眼鏡を掛けてはいるけど、眼鏡っ娘では断じてない。
一方のヤヴァナは、金髪碧眼。何気に、金髪碧眼って要塞では、余り見掛けない気がする。ソフィーは髪が亜麻色だしね。まぁ、色どうこうよりも重要なのは能力ですが。で、能力は問題なしと。2人のお陰でソフィーの負担がかなり減った様で万々歳だよ。何事も、無理は禁物だからね。
「かず」
「まー」
「ん?」
何時の間にか両隣へと来ていたヘイスァとバイスァに声を掛けられた。取り合えず2人とも、手に持ったお皿やフォークはテーブルに置いてこようか?
「ヘイスァと」
「バイスァも」
「「頑張った!」」
「あぁ、ヘイスァとバイスァも、シャンインのお目付け役ご苦労様」
「お安い」
「御用だぜ」
「一馬様!?」
サウサンと漫才中のシャンインが、とても心外だと言う表情を浮かべながら此方を振り返る。いや、ヘイスァとバイスァが居なかったら、何らかの形で暴走していた可能性は十二分にあるでしょ? だって、シャンインだもの。帝国軍機動艦隊のど真ん中なんて、悪戯するには絶好の場所にいた訳だしね。此方に話が来ていないだけで、最後の去り際以外にも何かやらかしそうになっていたのは間違い無いと思っている。
「まぁ、シャンインですからね」
「シャンイン嬢ですからな」
「シャンインだからな」
「シャッーー!!」
怒るシャンイン、皆を笑わす。要塞は、今日も愉快な仲間達と楽しい日々を過ごしております。
お読みいただきありがとうございました!
次回もお楽しみに!