4-40:我が家
今日は、短め。
この3人が揃うと話が全く進みません。
実に2週間振りの我が家である。フォラフ自治国家宙域から5光分ほど離れたデブリ帯に、我が家たるランドロッサ要塞とコロニーレーザー2基、廃棄コロニー2基が身を潜めている。この辺り一帯は、惑星間を航行する艦船の航路からは大きく逸れており、発見される可能性はそれなりに低い場所だ。勿論、ダミーバルーンを大量に使って、デブリそのものの数も増やしているがね。
要塞の軍港へとゆっくり近づくと、周囲の警戒に当たっていたミディール改の部隊が艦隊の針路両側へと展開し、捧げ銃を行って出迎えてくれた。恐らく、ソフィー辺りの手配だろう。正に、凱旋って感じだな。オッサン、年柄もなくその光景に興奮しております。だって、ただの一般人が捧げ銃で出迎えて貰える機会なんて、普通は一生無いぜ? 我が家は最高です!
『お帰りなさい、一馬さん』
「ただいま、ソフィー」
こうやって、ソフィーに出迎えて貰えると、帰ってきたなって事を強く感じる。シャンイン達からの出迎えの挨拶も良いのだけれど、やっぱりソフィーは最初の補佐官だからね。少しばかり、気分も高揚すると言うものなのですよ。
「ソフィー。急で悪いけど、2時間後の8時から朝食兼ミーティングをしたいから、準備頼めるかな?」
『そう言われると思い、既に手配は済ませてあります』
「流石は、ソフィー。じゃ、よろしくね。また、後で」
『はい。お待ちしております』
軍港入港に向け最後の減速を行った艦隊は、艦首スラスターを起動させ艦尾を要塞側へと向ける。要は、バックで軍港へと入港するって事だね。先ず初めに、オッサン達が乗艦しているクロークヘイブン級空母と直掩を担うサムズ・クロス級駆逐艦がゆっくりとした速度でゲートを潜り、軍港内へと入港を果たす。その後も続々と『ランドグリーズ』艦隊の艦艇が軍港内へと入港していく。まぁ、全ての艦の入港を見ずに、さっさと下艦しますがね。
軍港から司令ブロックへと向かう通路を、サウサンや彼女の部下達、艦隊運営を担ったドクター旗下のアンドロイド達、そしてパメラ嬢と共に少しばかり早足で進む。いや、久しぶりの我が家で興奮が抑えきれないのよ。さっさと、自室でシャワーを浴びてベッドに寝転びたい。まぁ、その前に必要な指示は出しておくけどね。
「サウサン。悪いけど、パメラ嬢を部屋まで案内してあげてくれるかな?」
「了解した。では、後ほど会おう」
「あぁ、よろしく」
パメラ嬢には、暫く生活スペースの1室で生活して貰う。本当は共和国軍のヴァルドリッジ中将らがいる生活スペースからは離したいところではあるが、かと言って機密エリアに部屋を与える訳にもいかないしね。念のため、サウサンの部下を護衛要員として配置する事でお茶を濁した。
「『オグマ』とミディール改B型の運用データに関しては、任せて良いかな?」
「お任せ下さい。既にドクター・ラクランに送付したデータも含め、急ぎフィードバックを進めます」
「よろしく頼むよ。また、近いうちにラボには顔を出すから、その時はよろしく!」
「はっ! お待ちしております。では、我々もこれで」
此方へ目礼し、別の通路へと入っていくドクター旗下のアンドロイド達。今回は、彼らに本当に助けられた。主星『ステッサ』で、少しばかり派手に動かし過ぎて彼方此方にダメージが入っていた『オグマ』も、彼らが帰路でキッチリと修繕してくれたからね。若干、損傷具合に引き気味だったのは気のせいだと思いたいが……。
さて、そんな訳で司令ブロックへと向かう通路にはオッサンと、護衛役を担う彼女達が残された訳だが。物凄く、何かを期待した表情を浮かべられているのだが、生憎とそれらを用意する暇なんて無かった訳で。
「ヘイスァ、バイスァ。期待しているところ悪いんだけど、お土産は無いよ?」
「「……マジ?」」
「マジ」
「「マジマジ?」」
「見つめて?」
「「ダーリン!!」」
「「「イェーイ!!」」」
3人で、一斉にハイタッチを交わす。うん、流石はヘイスァとバイスァだ。ノリが完全にオッサンとシンクロしております。ベストマッチ賞を受賞出来る位に良いシンクロです。人型兵器とか余裕で動かせちゃいますよ!
「流石にお土産を買う余裕は無かったからね。お詫びと言っては何だけど、後でパフェでも一緒に食べようか」
「パフェー」
「カフェー」
「チョコ?」
「モナカー?」
「ジャンボー!」
「バケツー!」
「大食い?」
「早食い?」
「「三角食べ!!」」
相変わらず、彼女達の摩訶不思議なやり取りは想像の斜め上をいくなぁ。取り合えず、バケツサイズのパフェが必要な様だ。それにしても三角食いって、パフェ以外に何を食べるつもりなのやら……。
「かず」
「まー」
「んっ? どうした?」
「「おかえりー!!」」
「ただいま、2人とも。留守番、ご苦労様」
「ヘイスァと!」
「バイスァ!」
「「頑張った!!」」
「あぁ、ありがとう。ヘイスァとバイスァは、本当に良く頑張ってくれたよ」
「「むっ、ふぅー!」」
労いの言葉と共に頭を撫でてあげると、メッチャ良い笑顔を浮かべドヤ顔を決めるヘイスァとバイスァ。シャンインは、再教育ですわ!って息巻いているらしいが、彼女達はこのままで良いと思います。個性って大事だと思うよ。それに、そもそもシャンインからして個性強いからな。彼女の補佐は、ヘイスァとバイスァ位に個性的な存在じゃないと務まらないと思う今日この頃です。
ランドロッサ要塞は、今日も平和です。
お読みいただきありがとうございました!
次回もお楽しみに!