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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第4章:マーク・トゥウェイン要塞攻略戦
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4-38:『オペレーション・ヴァルゴ』⑧

数多の置き土産byサウサン

 「エンタープライズ……」


 遠く離れたこの宙で、その艦の名を聞くとはね。まぁ、別にその艦名に対して、個人的に思うところがある訳ではない。ただ、元の世界同様、この宙でも厄介な艦として目の前に実在している事実に、多少だが愚痴りたくなるだけだ。


 「どうする? 帰り掛けの駄賃代わりに、共和国一の殊勲艦と一戦交えてみるか?」

 「……サウサン、俺は指示を変えるつもりは無いぞ?」

 「そうなのか? 一馬の事だから、『オグマ』で打って出るかと思ったのだがな?」

 「サウサンの中で、俺のイメージがどうなっているのか、一度じっくりと聞いてみたいな?」

 「ハハハハハッ! 生憎と、忙しい身でな?」


 調子の良い奴め。まぁ、少しだけ本音を漏らすならば戦ってみたい気持ちはある。とは言え、それをすべきタイミングでは無い事も理解している。生意気な言い方で悪いが、今回は見逃してやるだけだ。次に相まみえる時は、その幸運に終止符を打たせて貰う。


 「全艦、艦隊最大戦速にて現宙域を離脱する。繰り返しになるが、敵艦隊へは所定のプラン通り、必要最低限の迎撃に留める。分かっていると思うが、本作戦はランドロッサ要塞への艦隊帰投が最優先である。総員、己が役目を果たせ!!」

 「「「「了解だ!!」」」」


 こういった時だけは、サウサンもキッチリと合わせてくるんだよね。良くも悪くも、公私の切替が素早いというか。流石は諜報の長だけあって、周囲に溶け込むのが上手いんだよ。少々、調子に乗りやすいのが玉に瑕なんだがな。その辺は、シャンインと良く似ている。


 要塞のメンツで言えば、ソフィーが良識派であり、シャンインとサウサンは過激派、ドクターは両方の性質を持っているといったところだろう。勿論、この区分けは思想や宗教的な意味では無い。各々の思考パターンとでも言えば良いだろうか?


 ソフィーは、何事にも実直であり、堅実である事を好む。

 シャンインは、何だかんだと直感に従いつつ、その過程で愉悦を求める傾向が非常に強い。

 ドクターは、実利を追求しつつ飽くなき探究にひた走るが、極端にドライな思考も併せ持つ。

 サウサンは、極めて合理的に職務を遂行する一方、遊び相手を必要以上に弄ぶ傾向が強い。


 うん、シャンインとサウサンがやっぱりヤバいわ。ドクターは、ドライな部分があるとは言っても、あくまで探究の邪魔さえしなければ、無害だからな。なので、ソフィーが要塞の良心です。逆に言えば、ソフィーにすら見捨てられたら、ソイツは終わりってこと。オッサンも、ソフィーに見捨てられたら詰みます。


 「……ま。一馬!」

 「……ん?」

 「平気か? ボンヤリしていたが」

 「あぁ、悪い。少しばかり考え事していただけだ」

 「そうか。まぁ、此処まで来れば我々に出来る事も殆ど無いしな」


 サウサンの言う通り、後は要塞に帰投するだけであり、オッサン達がどうこうする事は皆無。必要な作業は全部アンドロイド達が万全の体制でやってくれるしな。突発的な事態が起きない限り、帰投までは往路と同様に食って寝ての繰り返しになるだけだ。


 「状況は?」

 「往路でばら撒いておいた機動爆雷が、良い具合に敵の注意を引いている様だな」

 「嫌がらせ程度のつもりだったが、熱探知に頼る相手には格好の撒き餌になったか」

 「そもそも、共和国は此方の艦艇数すら把握出来ていないからな? 奴らのシステムを落とす際に、色々と細工した甲斐があるというものだ」

 「……それは、敵ながら同情するわ」


 事前に『ステッサ』へと潜入したサウサン達は、共和国軍の防衛システムを此方の大気圏突入に合わせてダウンさせた。勿論、彼女がただダウンさせるだけで満足する事など、決して、絶対に、天地がひっくり返ろうともあり得ない事だと確信している。当人が言う様に、色々と厄介な置き土産を山積みにしてきたのだろう。それらが何時、何処で、どの様に作用するのかは知らないが、碌な事にならない事は確かだだろう。


 「……まぁ、何か一つに頼り切ると、それを逆手に取られるという、何ともありがたい教訓だな」

 「ふっ、違いない」

 「それは、俺達もだけどな」

 「あぁ、そうだ。明日は我が身とは良く言ったものだな。一馬は、くれぐれも自重しろよ? お前は、超が付く一流のパイロットだが、少々遊びが過ぎる傾向にある。傍から見ていると、生死の狭間に居場所を見出さんと足掻き藻掻いている様にすら思えるぞ?」


 サウサンや、それはかなり危ない人だぜ? 少なくとも、オッサンにはその様な危険な趣味はございません。死神とダンスなんぞ、御免被る。可愛い女の子とのダンスなら大歓迎だけどね! えっ? お前、ダンス踊れるのかって? 踊れる訳が無いだろうが!!


 「心配するな、サウサン。俺にはやらなければならない事があるからな? この星系を統一するまで、余計な雑念に囚われる様な事にはならんさ」

 「……そうだな。それに、我々がいる。見ていて非常に危なっかしい一馬の世話は、任せておけ!」

 「サウサンに言われると、グサッとくるものが……」


 そんなに危なっかしいだろうか? 非常に現実的な考えのもと、地に足のついた言動を心掛けている筈なのだが。解せぬ。


 「……まぁ、一馬は一馬らしく好きに歩め。余計な障害は、我々補佐官が万全を期して排除してやる」

 「そいつは頼もしい限りだな?」

 「その為の存在と言っても、過言では無いからな。これも、適材適所と言うヤツだろう」

 「適材適所ね……」


 内務、外務、研究開発、諜報。一見すると必要な人材が揃っている様に思えるんだけど、この先の事を考えると足りてない分野の人材がいるんだよな。まぁ、現状ではソフィー達でも問題無くカバー出来ているから、一刻を争うって訳でも無いのが何ともな。かと言って、その分野に外部の人材を今さら登用ってのも……。ある意味で、要塞の要とも言える分野だしな。


 「んー」

 「どうかしたか、一馬?」

 「あぁ、サウサンから適材適所と聞いてさ、軍事部門をメインに任せられる人材がいないものかと思ってね」

 「……なるほど。確かに、軍事部門を統括する補佐官が要塞には欠けているか。とは言え、現状の補佐官でカバー出来る範囲ではあるがな」

 「そう、結局のところ行き着く先はそこなんだよ。要塞運用に絶対不可欠かと言われれば否だけど、いれば皆の負担が減るからな」


 本当に難しいところだ。まぁ、その辺も管理者(バカ)が何だかんだと考えてはいるのだろうがね。此方が考え付く事くらい、あのバカの頭でも考え付くだろう。バカを馬鹿にし過ぎだってか? 要塞メンバーの総意ですので悪しからず!

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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