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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第4章:マーク・トゥウェイン要塞攻略戦
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4-35:『オペレーション・ヴァルゴ』⑤

実に久しぶりな登場です!(前書きでネタバレする馬鹿作者の鏡

 『予定より、だいぶ遅くないか?』

 「……いや、敵機の追撃が中々に激しくてね?」

 『……』

 「……」

 『……ハァ。まぁ、そういう事にしておいてやろう。予定通り、彼女の身柄は一馬に預けるぞ?』

 「了解」


 適当に周囲の敵を叩いたら研究所に向かう予定だったのだが、些か興に乗り過ぎてしまい時間を消費してしまった。サウサンには咄嗟の嘘がバレバレだった様だが、仕方が無い。そういう時もあるよね? だって、男の子だもん。


 さて、此処からは脱出となる訳だが。サウサン達、諜報チームは各々でミディールのコクピットへと乗り込んで脱出する手筈になっている。有人仕様の機体と違って、簡易シートしか備え付けられていなけど、空母へと乗り込むまでの短い時間だからさして問題無いだろう。それに、下手な乗り物よりもミディールの方が盾もあるし、元々の装甲も厚いってのもあるからな。


 パメラ嬢をオッサンの機体に乗せるのは、顔なじみの方が良いだろうって判断と、単純にコクピットの広さの問題もある。そもそも、無人機に1人で放り込むってのも危険だしね。空母に乗るまでの短い時間、相席お願いしますって事だ。


 機動形態から人型へと可変させつつ、機体を慎重に降下させていく。全周囲モニター越しに確認する限り、撃破されたミディールの姿は無いようだ。流石に、残骸とは言えミディールの一部が共和国に渡ったら、後々不味いからな。事前の打ち合わせでは、万が一にも撃破された機体が出た場合、可能な限り残骸を回収してから撤退する事になっていたので、余計な時間を要するところだった。


 「周辺は一先ず安全の様だな?」

 『あぁ。とは言え、そう時間も無い。さっさと撤収するぞ』

 「了解。サウサン達はミディールへ。パメラ嬢は、『オグマ』の手の平に乗る様に指示してくれ」

 『了解だ』


 地上でテキパキと指示を出すサウサンを横目に、コクピットのハッチを解放しつつ、『オグマ』の右腕を地表へとゆっくりと近づけていく。『オグマ』は機体形状の関係から、ミディールの様に片膝立ちなんて事は出来ないので、うつ伏せに近い形で地表スレスレまで降下し、各部のサブスラスターで姿勢制御をしつつ腕を伸ばすなんていう、とても珍妙な事をせざるを得ない。


 「君は、その機体に乗りたまえ。大丈夫、必ず逃げ出せるとも」

 「……」


 男性の姿をしたサウサンに促され、1歩1歩こちらへと近づいてくるパメラ嬢。以前、会った時に比べて幾らかやつれた感じはあるものの、自分の足で歩く位ならば問題は無い様だ。まぁ、ダメならダメで、その場合はサウサンなりが背負うなりして連れてくる予定だったのだがね。自力で歩けるならば、それに越した事はない。健康が何よりです。


 サウサンの助けを借りて、どうにか『オグマ』の手の平へと上がったパメラ嬢。そこで漸く此方に気が付いたのか、オッサンの顔を見て酷く驚いた様相を見せる。いや、そんなに驚く程には酷い顔では無いと個人的には思いたいです。


 「……っアンタ!?」

 「よう。何時かぶりだな?」

 「何でアンタが……?」

 「何でって、助けに来たんだけど?」

 「そういう事じゃなくて!?」


 サウサンは、既に自分の正体をパメラ嬢にはやんわりと伝えている筈なので、此処での彼女の驚きの原因はオッサンが現場までノコノコと足を運んだ事に付いてだろう。組織のトップが自ら現場に駆け付ける。彼女の常識からしたら、それはあり得ない事なのだろうね。でも、残念ながらウチの組織ってのは、そのトップが異端でしてね? ホイホイ、要塞の外に出向いちゃう訳ですよ。


 ……まぁ、そこまでの自由を得るには大変な道のりがありましたけどね。ソフィーを説得し、シャンインを懐柔し、ドクターに懇願し、サウサンには……特に何もしてないな。そんな山あり谷ありの交渉を経て、今の自由があるのです。自由って素晴らしい!


 「まぁ、君が言いたい事にはだいたい想像が付く。でも、今は俺を信じてコイツに乗って欲しい」

 「……」

 「共和国に未練があるって言うならば……」

 「そんなもん、ある訳ないでしょ!?」

 「そうか。じゃ、乗ってくれ?」

 「ハァ、……分かったわよ」


 乗る前に色々とオッサンへ問い詰めたい事があるものの、それをする時間は無く。かと言って共和国の研究所へととんぼ返りする気は毛頭ないらしく、大きくため息を吐いた後で漸く決心を付けてくれた様だ。


 「此方へ手を出せ。それから、足元が滑るから気を付けろよ?」

 「わかっ!?」


 大部分が金属パーツで構成されている『オグマ』の外装部分ってのは、コーティングなどの関係もあってか意外に滑りやすくなっている。それは、パメラ嬢がバランスを取る為に片膝立ちしている手の平の上も同様。で、その事をしっかりと注意したにも関わらず、案の定というか立ち上がる際にバランスを崩して足を滑らせ、此方側へ前のめりに倒れそうになった彼女を、若干強引に胸元へと引っ張り込んだ。まぁ、その代償として鳩尾に良い一撃が入っている気がするのは、きっと気のせいだ……。


 「……だから、気を付けろって言ったろ?」

 「……うるさいわよ!」

 「はいはい、文句を言う元気があって何より。わんさかと共和国軍が迫って来てるから、さっさと、脱出するぞ」

 「……」


 複雑そうな表情を浮かべながら、此方を見上げるパメラ嬢。嬉しいとか悲しいといった分かり易いものではなく、もっと複雑な表情。はて、何か問題でもあっただろうか?


 「どうかしたか?」

 「……何で、こんな所まで助けに来たのよ」

 「何でって、君を星女から解放するって誓ったろ? その為には、先ずは共和国から君を助け出す必要があったからな」

 「……アンタ。アレ、本気だったの?」

 「……心外だな。これでも、可能かどうかの見極めくらいは出来るぜ?」

 「馬鹿じゃないの!? アンタ、此処に来る為に一体どれだけのリスクを犯した訳!?」

 「さぁ?それでも出来たから、俺は此処にいる。それが全てだろ?」

 「……」


 パメラ嬢から、思いっきりダメだコイツって感じの視線を浴びせられる。残念ながら、その手の視線で興奮する性質の人間ではありません。攻められるより、攻める派です。いや、話が脱線したじゃないか!?


 「アンタの部下だか仲間だかは止めなかった訳? こんな、どうでも良い女1人助けに無茶するアンタを……」

 「どうでも良く無いさ。そもそも、俺が君を助けると決めたんだ。皆はそれに賛同して力を貸してくれた。全ては、それだけの話だ」

 「……アンタ達。お人好しが過ぎるわよ」

 「お人好しでけっこう。これ位を簡単にやってのけなきゃ、星系統一なんぞ不可能だからな」

 「はっ?」

 「いや、独り言だ。さて、さっさとコクピットに乗ってくれ」

 「……分かったわよ」


 流石に、敵地のど真ん中で何時までもパメラ嬢と抱き合っている訳にはいかないからな。敵地じゃなければ、もう少しこの心地良さを味わっていたくはあるが……。えっ? セクハラ案件? タイーホ? はい、反省します。長いけど、3秒間も反省するわ。


 「……ん?」


 改めて、パメラ嬢を『オグマ』のコクピットへと乗せようとした時だった。其方に意識が向いたのは、正に偶然の産物だったのだと思う。本来ならばスラスターの轟音でかき消されるであろう、金属同士がこすれる様な音が、少しばかり耳に届いたのだ。そして視界に飛び込んできたのは、額から血を流し地に倒れながらもなお、最後の足掻きとばかりに此方へと銃口を向けている兵士の姿だった。


 「……危ないっ!!」


 咄嗟に身体が動いた。


 そして、一発の銃声が響いた。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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