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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第4章:マーク・トゥウェイン要塞攻略戦
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4-32:『オペレーション・ヴァルゴ』②

時代はサイドスティック。思考操作? 知らんね。

 人生初の大気圏突入―そもそも突破経験が無し―となる訳なのだが、自分でも不思議な位に落ち着いている。まぁ、『オグマ』のシートに座っているしか無いので、騒いだところで何か変わる訳でも無いけどな。


 「……」


 どうやら、いよいよ大気圏への突入が開始された様だ。僅かだが、船体の揺れがコクピットへも小さな振動として響いてくる。とは言え、この程度であれば元いた世界の電車の振動の方が大きいのではないかとすら錯覚するレベルだがな。この星系、正確にはかつての銀河連邦の技術力の高さを体現しているという事だろうか。


 「現在地はと……」


 左のアームレストに設置されているスイッチの1つを操作して、小型の空間モニターを呼び出す。枠は勿論、支えも何もない画面部分のみが目の前に映し出される。映像の解像度ってどの位なのだろうかなんて、どうでも良い事を考えつつ、視線で画面の切り替えを行う。


 「コースは予定通りか」


 今のところ、予定されていた突入コース通りに艦は進んでいる様だ。まぁ、サウサンのお陰で敵さんの防衛システムは絶賛ダウン中だし、存在しない筈の何かでも無い限りは問題ないだろう。むしろ、あっては困るんだけどな。


 相変わらず、僅かな揺れがコクピットに伝わってくる。別に乗り物酔いするタイプでは無いが、小さな地震がずっと続いている様な感覚ってのは好かない。何て言うか、ケツがムズムズとするんだよな。早く、落ち着いてくれ。


 『香月司令官。もう間も無く、本艦は予定降下高度へと到達します。艦内の揺れも、もうじき収まりますので準備をお願い致します』

 「了解。降下空域に敵影は?」

 『現在のところ、まだ確認はされておりません。絶好の降下日和となりそうです』

 「それは上々だ。では、艦を頼む」

 『ご武運を』

 「あぁ、無事に戻れたら、祝杯だ」

 『楽しみにしております』


 よし、これで無事に死亡フラグも立てたし、後は盛大に圧し折りに行くとしようかね。フラグってのは、立てたら必ず折りましょう。乙女座のオッサンとの約束だぜ?




 機関出力を落とし、各部のスラスターによって大気圏内での最低航行速度ギリギリまで減速した母艦から、発艦用の電磁カタパルトを使用せず自由降下での空挺となる。母艦たるクロークヘイブン級空母は、上甲板と下甲板に前後2基ずつの合計8基の電磁カタパルトを有している。更に、両舷には3ヶ所ずつ艦載兵器の発着艦にも使用出来る開閉式ハッチが設けられていて、戦域到着後にカタパルトと併用する事で迅速な部隊展開が可能となっている。


 で、今回はその左右6ヶ所のハッチから一斉に空挺降下する訳だ。1隻辺り最大25機のミディール改B型が搭載されているが、ハッチの数からして大した時間も掛からずに格納庫は空になる。何て言うか、人型の機動兵器がハッチの前で降下の順番待ちをしている光景って凄くシュールだな。無人機ゆえか、規則正しく並んで無駄に揃っているのが、また何とも言えない雰囲気を醸し出している。


 『香月司令官。間も無く、予定降下空域へと到着します』

 「了解」

 『それと、此方へと急速接近する機影を多数捉えました。迎撃に上がってきた、共和国軍の戦闘機の様です』

 「了解。艦隊は我々の降下完了後、予定通り直ちに離脱してくれ。再突入のタイミングは、此方から指示する」

 『了解しました。では、各ハッチ解放します』


 装甲も兼ねている複層式のハッチが順番に解放され、遂に『ステッサ』の青い空が全周囲モニター越しに目の前へと広がった。ギリギリまで速度を落としているとは言え、それなりの速度が出ている。タイミングが遅れれば遅れるほど、目的地からは遠ざかる事になるので、さっさと降下するとしよう。


 流れる雲を横目に、船外へと飛び出す。僚機であるミディール改とは異なり、この機体には空挺用の装備は装着されてはいない。まぁ、そもそも自機で大気圏内でも飛行可能だから不要と言えば不要なんだがね。でも、パラシュートを利用しての降下も絶対に楽しいと思う。次の機会があれば、ドクターに頼んで『オグマ』にも付けて貰うかな。


 機体を飛行形態へと変形させ、機首を研究所へと向ける。周囲には、各母艦から第1陣として空挺降下を開始した多数のミディール改が、背部のメインスラスターを吹かせ落下軌道を修正しながら、此方を追い越す勢いで地表へと突き進んでいく。機体重量もあってか、降下時間はそれほど長くはない。


 「各機、予定通り研究所とその周辺の制圧・確保を目指せ。俺は、ハエを叩き落とす」


 此処で有人機ならば一斉に『了』なんてカッコイイ返答が返ってくるのだろうが、生憎と僚機は全て無人機。返答の代わりとばかりに一斉にパラシュートが開かれ、敵国の空へ真っ赤な華が無数に咲いた。えっ? 普通、軍用のパラシュートは目立たない色を選択するって? 知らんがな、こちとら民間武装組織だからな!


 「……さて、そろそろ仕掛けてくる頃合いか?」


 レーダーに、此方へと高速で接近する反応が多数確認出来る。母艦の長距離レーダーが捉えていた、共和国軍機が漸くご登場らしい。ようこそ、共和国軍の皆様。そして、さようなら。悪いが、ミディール隊の邪魔をさせる訳にはいかないのでね? それに、地上ではサウサン達も行動を開始している。頑張って、制空権を確保するとしよう。


 「頼むぜ、相棒?」


 コクピットの側方に設置された、サイドスティック式の操縦桿とスロットルレバー。2度、3度と握り心地を確かめてから、改めて握り締める。さて、ドクター謹製のこの機体。何処まで、オッサンを連れ行ってくれるのか。見せて貰おうじゃないか(以下、自主規制

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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