4-31:『オペレーション・ヴァルゴ』①
かつてこれほど、適当に攻略された要塞があっただろうか?
更に言えば、戦闘シーンもごく僅かと言う酷さ。
その分、星女救出ではガンガン戦闘シーン入れていく(筈)。
大規模な戦力って、作者の腕では文中でどうにも動かし難い……。
未だ、帝国軍によるマーク・トゥウェイン要塞の完全制圧は成っていない様だ。内部に突入した陸戦隊と、共和国軍要塞守備隊との戦闘が苛烈を極めているらしい。まぁ、既に現場宙域から艦隊ごと離脱しているシャンイン達には関係の無い話ではあるけどな。
結局、敵戦力の誘引を担う筈だった此方の戦力は、敵の遊撃戦力を撃滅する形で戦闘を終えた。ソフィーからの中間報告では大破した艦は1隻も無く、損傷の度合いが酷くても自力航行可能な中破レベルだそうだ。修理を必要とする艦は、推定で500隻前後との話だが同行している拠点艦で問題無く対応出来るだろう。
第1防衛ラインに続けて、第2防衛ラインにも穴が開いた共和国は慌てる事だろう。情報分析室からの報告では、勢力圏内に展開させていた戦力の大部分を、最終防衛ラインと主星『ステッサ』防衛の為に大規模に動かし始めた様だ。
だが、それは悪手だろう。既に各地で政情に不安定さが見られ始めたと言うのに、治安維持を担う戦力まで引き抜いたら抑えらえるものも抑えられなくなるのは自明。そもそも、第1防衛ラインも第2防衛ラインも構成する軍事拠点が1つ落ちた程度でしかなかった。それを、自ら崩壊させているのは共和国だ。
帝国とて、敵勢力圏内に自軍戦力が突出するリスクは理解している。マーク・トゥウェイン要塞の破壊では無く、占領を進めているのも前線拠点とする為だ。共和国側の防衛ラインに楔を打って再構築を阻止し、将来的な大規模侵攻の為の足掛かりにするのが狙い。共和国としては、最終防衛ラインの守りを固めるよりも、戦力を投じて最外周となる第1防衛ラインを再構築し、内部の帝国軍を包囲無力化してしまった方が幾分マシだと思うがね。
「まぁ、敵さんが勝手に自爆してくれるなら構わないか……」
「香月司令官。間も無く、大気圏突入のお時間となります。『オグマ』での待機をお願い致します」
「了解。じゃ、此処は頼むよ?」
「お任せ下さい!」
ソフィーとドクターは要塞で陣頭指揮、シャンインは帝国との連絡役、サウサンは現地へ潜入。結果として、ドクターのラボからオッサンの機体の専属メカニックとして幾人かのアンドロイド達が派遣されている。その内の1人に艦橋を預け、パイロットスーツに着替えてから格納庫へと向かう。
「『オグマ』か……」
「何か?」
「ん? いや、随分と見違えちゃったと思ってね?」
「あぁ、なるほど。確かに以前の『オグマ』系列の機体とは、コンセプトからして全く別の機体ではありますね」
「むしろ、名前以外に共通点無いよな……」
今回、共和国軍の研究所を襲撃するに辺り、専用機としてドクター謹製の『オグマ』を持って来ている。この機体は、以前の『オグマ』とは同じ名前を持つ全くの別機体となっている。かつての『オグマ』は、可変戦闘機の名の通り戦闘機としての特性を最大限残しつつ、可変機構を取り入れる事で多様性を持たせていたのだ。
だが、それは一方で機体形状に空力面での制限を発生させ、結果として複雑な可変機構の採用により量産性と整備性の両面で著しい低下を招いていた。『オグマ』の開発先であったミディールでは、そう言った要素のある可変機構の一切が排除され、各種派生型によって多任務に対応する形へと改められたのも、その辺りが理由となる。
では、今回の『オグマ』は何が違うかと言えば、設計思想が逆になっている。人型の機動兵器である点を第一とし、それに上半身のみ可変機構を一部だけ組み込む事で最低限の高速飛行を可能としているのだ。なお、人型の機動兵器では意義が良く議論されるであろう脚部だが、この『オグマ』では膝から下が推力偏向ノズルを用いた高出力スラスターとなっている。脚など飾り(自主検閲。
一応、スラスター部分を覆う様に前後2本ずつ爪状のパーツが備わっているので自立することも可能ではあるが、地上ではスラスターを用いた、ホバー移動がメインとなるだろう。
全体の意匠はミディールに似ているだろうか? 量産性を考慮して、華美な装飾等は一切無く無骨な兵器としての存在感が強い。ミディール同様にダークグレー系統のカラーリングが施されており、頭部の赤いバイザーも馴染み深い。敢えて言うならば、バイザー部分がこれまでのゴーグル型ではなくT字にデザインされている事だろうか。何となく、悪役っぽい。
「さてと……」
出撃前の最終点検を進めるメカニック達を横目にコクピットへと乗り込み、システムのチェックを始める。ぶっちゃけ、この機体の完成から出撃までに殆ど時間が無かった関係で、シミュレーターでの操縦しか経験してないんだよね。後は格納庫内で最低限動かした程度。
ほぼ、ぶっつけ本番とも言える状況で敵の本拠地近郊に直接乗り込もうって言うのだから、我ながら思考がぶっ飛んでいる様だ。まぁ、ドクターが心血注いで創り上げた機体だ。命を預けるには、申し分無い代物だよ。
「システム、オールグリーンと……。こっちはOKだ!そっちはどうだ?」
「全て問題ありません! 間も無く大気圏への突入となります。ご武運を」
「了解。ハッチ閉めるぞ!」
メカニック達が離れるのを確認してハッチを閉める。一瞬、各種モニターからの光だけとなるが、直ぐに全周囲モニターに外の様子が映し出される。格納庫内にズラリと並び立つ、ミディール改B型。B型ってのは、光学兵器の1種であるビーム兵器を運用可能となったミディール改の事だ。勿論、新『オグマ』もビーム兵器を最初から搭載してますよ? 遂に、ビーム兵器が一部の部隊向けに先行配備されました。
今回の作戦には、『ランドグリーズ』隊が保有する3個連隊340機(予備16機含む)のミディール改B型が、オッサンの駆る『オグマ』の直掩として投入される。大気圏内でのビーム兵器運用となるので、ビームそのものの減衰が気になるところだが、その辺りのデータ収集も兼ねているのだろう。
『大気圏突入。最終シークエンス開始』
『敵防衛システムのダウンを確認』
『降下角、最終調整完了』
『大気圏内推進システム、正常に稼働中』
『船外温度、上昇を確認。冷却システム稼働を開始』
『香月司令官。大気圏へ突入します』
「了解。総員、これよりマーク・トゥウェイン要塞攻略を囮とした、『オペレーション・ヴァルゴ』を開始する!」
『『『了解!』』』
何でおとめ座かって? オッサンがおとめ座だからだよ。 1人の少女を救う、おとめ座のオッサンとかウケるだろ? なお、最終的に直接研究所を強襲して救出する事にしました!(今更
お読みいただきありがとうございました!
次回もお楽しみに!