4-30:マーク・トゥウェイン要塞攻略戦⑧
このメンバーが揃うと、色々と色物感が強くなる。
以前にも書いたが、こんな感じ攻略戦を書く作者は怒られるべし。
「結局、帝国優位のまま要塞宙域制圧まで終わったか」
『はい。ファリアス艦隊が敵の遊撃戦力を完全に無力化しましたので、後は時間の問題だったかと』
開戦から18時間余りが経過し、マーク・トゥウェイン要塞周辺宙域は帝国軍の制圧下となった。とは言え、まだ巨大な要塞内部では激しい抵抗が続いてらしく、要塞自体の陥落にはもう暫くの時間と流血が必要となる様だ。
「折角だ、共和国には最後の一兵まで帝国に流血を敷いて貰う事を期待しよう」
『帝国軍の機動艦隊は、事前予想よりも損害が少なかった様です』
「こっちが、少しばかり暴れ過ぎたかな?」
『えぇ。ですが、今回の戦闘で得られた物から考えて、それは些細な問題かと。ドクターが言うには、今までとは比べ物にならない程の実戦データが収集出来たとのことですので、戦闘AIの大幅な成長が見込める様です』
「なるほど。今後を見据えるならば、帝国の被害が多少減った事くらい大したこと無いか」
開戦前には45個機動艦隊という大戦力を誇った共和国軍だが、最終的に帝国側に降伏したのは合計で5個機動艦隊に満たない隻数だった。他にも数百隻が後方の最終防衛ラインへ散り散りになりながらも撤退している。これらの艦は何れもファリアス艦隊によって捕捉・追撃が可能だったが、要塞を巡る戦いが共和国の事実上の敗北で終わった事を彼らの口から直接広めさせる為に、意図的に見逃す様に指示を出しておいた。
一方で、帝国軍の戦闘による損害は10個艦隊程度と、共和国に比べればかなり少ないものとなっている。彼の国の国力から考えるならば、短期間で補填出来るものだろう。もう少し、削れてくれても良かったのだが、共和国軍が不甲斐なさ過ぎたとしか言いようが無い。
それに比べて、40個余りの艦隊を失った共和国側の戦力低下は今後著しいものになるだろう。国力は勿論、建造能力や動員力でも帝国・連邦に劣る共和国に取って、それらの損失を補填することは容易ではない。無理矢理に動員を掛けたところで、反発が強まるだけだ。着実に共和国は追い詰められているな。
ちなみに、マーク・トゥウェイン要塞の司令官を務めていた、アラン・エイデン上級大将と側近達は要塞を見捨てシャトルで逃亡を図ろうとした所をファリアス艦隊が発見し、身柄は帝国軍に引き渡してある。サウサンの人物評を見る限り、部下に言われて仕方なくではなく、自分から積極的に逃げ出すタイプだな。
「シャンイン。敵司令官について、帝国は何か言ってきた?」
『とーっても苦い顔をしながら、礼を述べてきましたわ』
「まぁ、危うく敵司令官を取り逃がすところだった訳だし、余計な借りを作ったって思ってるのかな」
『精々、高く返させますわ?』
「程々にね」
一応、釘は刺しておくが、多分それほどの効果は見込めないだろう。何て言っても、敵の大将首だからな。要塞を墜としましたが、敵将を取り逃がしましたでは恰好も付かないだろう。とは言え、事実を事実として上に報告出来るか少しばかり見物ではあるな。
「艦隊戦も終わったし、シャンインは要塞に戻るんだろ?」
『勿論ですわ。それで……、一馬様にお願いがあるんですの!』
「凄く却下したい!」
『何故ですの!?』
「シャンインだからね……」
モニター越しで、同意するかの様に首を縦に振るソフィーとドクター。一方でシャンインは心外だとばかりにブーブー文句をたれる。だってさ、このタイミングでのシャンインのお願いだよ? 根拠は無くても、嫌な予感しかしないよ……。だから、却下と言いたいところだけど。
「それで、何を仕出かしたいのかな?」
『一馬様。端からやらかす前提は酷いですわ!?』
「良いから、さっさと白状しなさい。何をやるつもりだ?」
『実は……』
シャンインのお願いは、まぁギリギリ許容範囲内ではあったので許可した。彼女も一応友軍とは言え、潜在的な敵勢力の真っ只中に居たのでストレスも溜まっていたのだろう。許可すると、メッチャ良い笑顔で喜んでくれた。
まぁ、ちょっとした悪戯だし、きっと問題にはならないだろう。
「一馬様から許可も出ましたし、派手に退場と行きますわ!」
「かず」
「まー」
「「南無」」
「何ですの、その言い様は!?」
全く、心外ですわ! ヘイスァもバイスァも、誰の補佐を任されたのかもう1度再教育が必要ですの。って、話が脱線しましたわ。折角、一馬様からちょっとしたお遊びの許可がおりましたのに……。
「フィンジアス艦隊は、所定位置に付きましたの?」
「配置」
「完了」
「した?」
「かも?」
「どっちですの!?」
『かもかも?』
要塞に戻るまでに再教育決定ですわ! 一馬様はヘイスァとバイスァを気に入られている様ですけど、上官たる私として恥ずかしいばかりですの。徹底的に再教育ですわ! 徹底的にですの!
「準備」
「完了」
「した」
「はず……」
「……さっさと帰りますわ!」
『すたこらさっさー』
別に仲間でも無いので、何とかって言う上級大将にお別れの挨拶は不要ですの。そもそも、向こうはまだ忙しいでしょうし、此方に無駄な時間を割く事すら惜しむはずですわ。
「機関」
「始動」
「出力」
「安定」
「っぽい」
「かも」
「しれ」
「黙って仕事しなさいですの!」
「シャンイン様」
「ツッコミ担当?」
「フシャッー!!」
……凄く、疲れますの。まぁ、それでも仕事はキッチリやってますし、その才には文句の付けようが無いですの。性格にだけ問題がありありですわ!
「フィンジアス艦隊に、隠蔽解除を伝達ですの。その後、全艦最大戦速で帝国艦隊の真っ只中を突っ切りますわ!」
「フィンジアス艦隊、隠蔽解除を確認」
「全艦、機関最大出力」
「宙域を離脱。帰投針路へ」
「帝国軍より通信」
「無視ですわ! さっさと帰りますわ!」
帝国軍機動艦隊のど真ん中にいた私達の専属艦隊を囲むように、周囲へと極秘に展開していたフィンジアス艦隊。隠匿を解除した事で、その雄姿を要塞に帰る前に少しばかり帝国軍の皆様にご披露した訳ですわ。まぁ、結果的に彼方は大混乱になりつつある様ですの。
「……帝国の探知能力もこれでハッキリしましたの。全艦、あばよーですわ」
「あばよー」
「あばーよ」
要塞への帰路、少しばかりのお遊びですわ? 元友軍である帝国軍艦隊の真っ只中を、護衛艦隊共々一方的に高速で突っ切って帰るだけですの。では、あばよーですわ!
お読みいただきありがとうございました!
次回もお楽しみに!