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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第4章:マーク・トゥウェイン要塞攻略戦
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4-26:マーク・トゥウェイン要塞攻略戦④

今回はサウサン回。


コロニーレーザーの被害が少ない?

此方に横っ腹を見せる形で敵艦隊が三次元的に展開している以上、凪ぎ払いでもしない限り、一点照射ではこの位が限度なのよ。照射自体も収束型だしね。


※誤字報告、何時もありがとうございます。

「ふむ。まずまずの賑わいか……」


 ボルジア共和国の主星『ステッサ』の、静止衛星軌道上に設けられた宇宙ステーションの一角に私達はいた。此処には、共和国の勢力圏内外の各惑星やコロニーからの便が発着する船着き場と、『ステッサ』の地上各地とを此処を結ぶシャトル便の船着き場がそれぞれ設けられている。流石に主星だけあって、その規模は広大だ。


 何百と言う船舶が絶えず、船着き場に接舷と離岸を繰り返す。多くの人が乗り降りし、大量の貨物が行き来する。そして、そんな人と物を地上とやり取りするシャトルの数も膨大だ。こうして、地上へのシャトル乗り場へ向かう途中でも、何機もの連絡シャトルが飛び交っている。ある意味、戦場レベルの騒がしさかもしれんな。


 幾ら戦時下とは言え、勢力内だけでなく国外の各惑星やコロニーを結ぶ定期旅客便・貨客便・貨物便も戦前と変わらず運行されている。各勢力とも自国勢力内を航行する民間の船舶に対しては、所属を問わず万が一の事故が発生しない様にと十分に気を配っているからな。人・物・金の流れが止まれば、経済が止まる。経済が止まれば、国が止まる。それは、何れの勢力でも同じことだ。


 刻一刻と戦況が悪くなっている共和国ではあるが、それでも民衆がその日の食事に困る様な事態には陥っていない。偏に、経済分野を束ねるバイメン商務大臣の手腕によるものだろう。彼は、人・物・金を効率良く動かし、戦時体制に多大なる貢献をしている。とは言え、あのサルがトップでは何れ……。


 そんな事をツラツラと考えている内に、地上へ向かうシャトルの乗り場へと辿り着いた。国際線と異なり、国内線の乗客に対するセキュリティチェックはかなり緩い。問題無く、搭乗手続きを終え私と部下達はシャトルへと乗り込んだ。


 ちなみに国際線に比べてチェック体制は緩いとは言え、本来ならば検査機に引っ掛かるリスクを私は抱えている。なんせ、元をただせば金属生命体だからな。それが偏に露呈しないのは、腐っても管理者と言う上位存在が創り出した存在だからだ。要塞で生み出された各種アンドロイド達も同様、彼の存在によって、その手の対策はキッチリと採られている。


 一方で、一馬は知らない事だがその手の探知を潜り抜けられる代わりに、幾らかの制限を私達は与えられている。あのバカ曰く、簡単になり過ぎない様にとの事だ。まぁ、一馬からすれば、その手のハンデは想定内ではあるだろうがな。本当に、中々底が見えないから一馬は面白い。




 ボルジア共和国の首都たる『コロンビア』近郊に設けられた空港まで、凡そ1時間程度のフライトだった。特段、機中では取り留めて何かの事態が発生する訳もなく、ここまでは順調と言って良いだろう。


 「オルディス(・・・・・)様。手配した車を回してきますので、正面ゲートでお待ち下さい」

 「頼む。……気を付けろよ」

 「はっ」


 ソフィー達と同様に、私も金属生命体として生を受けた。故に、この手の潜入工作では姿形を変えるのが手っ取り早い。今の私は、40代半ばの男性の姿をしている。オルディスとは、この姿である際の偽名だ。わざわざ、敵地で本名を名乗る馬鹿はおるまい。


 バックグラウンドとしては、共和国勢力圏内の惑星『ヤーク』出身で、職業は古美術商。今回は、新しく『ステッサ』に店をオープンさせる為の下見という建前だ。当たり前の話だが、『ヤーク』には実際に店があるし、商いも行っている。情報だけ偽造する方が簡単ではあるが、足を運ばれてバレる様では意味が無いからな。それに、拠点としても何かと役に立つ。


 「……」


 表向き、秘書兼運転手兼護衛を兼ねた女性の部下を1人だけ帯同させている。実際には、バラバラのルートで『ヤーク』から『ステッサ』へと20名余り直属の部下を送り込んではある。何れも要塞出身の諜報アンドロイド達であり、出来る限り失いたくない者達だ。とは言え、この世界では部下の命など重要な情報の前には紙切れ同然になる事も多々あるが。幸いにして、今の所はそういった事態までにはなっていないが……。


 『お待たせしました』

 「あぁ」


 耳に付けた小型の端末から私を呼ぶ部下の声が聞こえてきた。そのまま、空港の正面ゲートに回された車へと乗り込む。それまでの喧騒がシャットアウトされ、漸く人心地つけた。この車の様に防諜関係が整えられていない屋外では、下手にお喋りも出来ないからな。何処に敵の目や耳があるか不明な以上、身バレする様な下手な言動は出来ない。まぁ、当たり前の事ではあるが。一馬なら嬉々してやりそうだが……。


 「先行隊の話では、市内では特に変わった様子は無いようです」

 「まぁ、まだ攻撃が開始されてからそう時間も経っていないからな。とは言え、軍上層部は今頃大慌てになっているだろうが……」

 「例の兵器ですか?」

 「そうだ。出力を抑えた試射レベルのものとは言え、奴らからすれば驚嘆すべき事態だろうからな。本来ならば、要塞そのものへの直接照射となる筈だったが……」

 「帝国の手柄にする為に見送ったとか」

 「これも政治というヤツだろう。まぁ、その帝国も大慌てになるだろうがな」


 今は共和国に向けられているソレが、いつ自分達に向けられるか分からないのだ。当然、帝国側は焦る。とは言え、取れる選択肢は少ないが……。


 空港から都市部へと直通する高規格道路。車窓からの風景は正直つまらないものだ。高く聳え立つ無数のビル群。その合間を縫って数多の道が交差し、多くの車と人が行き来する。彼らの内、果たしてどれだけの人間が、今の共和国がおかれた状況を正しく理解しているのだろうか?


 恐らく、そう多くは無いだろう。多くの者は政府発表を疑いもせずに鵜呑みにし、明日も今日と何も変わらないと信じ切って眠りにつくはずだ。今までがそうであった様に、明日も同じだと。無論、それが悪い訳ではないし、一般市民からしたら当たり前の事でしかない。


 ただ、情勢とは刻一刻と変化するものだ。ゆったりとした流れに気ままに身を任せていたら、ふと気が付くと激流に流され身動きが取れなくなるなど、良くあることだろう。あくまで、今この時は緩やかに流れに漂っているだけだ。激流の入り口はもう直ぐそこまで来ているのだ。


 「オルディス様。まもなく目的地へ到着です。既にチームαは現地に到着し、安全確保をしております。チームβは第2ポイントで待機中です。その他のメンバーは、情報収集に当たっております」

 「分かった」

 「念のため、事前の取り決めに従い該当ブロックを1周してから止めます」

 「よろしく頼む」


 共和国とて、他国ないし他勢力の諜報員には最大の警戒をしている。故に、宇宙ステーションや地上空港には、常に防諜を担う者達が目を光らせている。更に言えば、事前情報に基づき空港からの尾行なども行われる。今の所、私が乗っている車を尾行している可能性のある者達の影は見えないが、何も同じ車で追跡するだけが手ではない。


 常に騙し騙され、騙され騙しの世界だ。相手の考えを読み裏をかく。敵はその裏を読み、更に次の手を打つ。相手よりも何手先を正確に読めるか、それが生き残る最大の術だろう。そうして生き残った者達が、組織の強さの源となる。


 「……到着しました。チームαより、周囲に異常無しとのことです」

 「ふむ。では、始めるとするか。我々の戦いをな?」

 「はい」


 一馬が殴り込みを掛けるまで、そう時間は無い。さて、共和国のお手並み拝見といこうじゃないか。

お読みいただきありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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