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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第4章:マーク・トゥウェイン要塞攻略戦
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4-25:マーク・トゥウェイン要塞攻略戦③

戦いはまだ始まったばかり。

 「ふむ、初撃は想定通りのコースで発射出来た様ですな」

 「分かりました。では、予定通りコロニーレーザーはゴリアス艦隊と共に一時後退しつつ、冷却並びに点検と再チャージを開始して下さい」

 「任されよ」

 「テトラは、戦果分析を任せます。ヤヴァナは、後退するゴリアス艦隊の指揮を執りなさい」

 「「了解しました」」


 一馬さんからお預かりした、補佐役の2名。シャンインの補佐をするヘイスァとバイスァ同様、彼女達はドクターの協力の元、私の監修によってこの世に生を受けた。彼女達を生み出す上で最も重視したのは、処理能力の高さ。今後、一馬さんが掌握する領域は、飛躍的に増大する事が見込まれる。そうなってくると、内務面でサポートする私とその補佐に求められるのは、細々かつ大量の事務処理となるのは明白。


 外務を担うシャンインの補佐をするヘイスァとバイスァには、心理分析や人心掌握、交渉術といった分野での高い才が与えられている。勿論、シャンインの護衛も兼ねているのでそれなりの護身術や武器の扱いにも長けているが、あくまでオマケ程度のもの。外務で成果を出す事が、彼女達に求められる全て。


 (まぁ、あの様子を見る限りだと、何処か致命的に設定をミスったわね、シャンイン)


 普段のヘイスァとバイスァの様子を思い出し、1人苦笑する。あのシャンインが振り回されるのだから、彼女達は本物だ。一馬さんがその様子をコッソリと伺っていて、大声を上げて笑われていたのは印象に強く残っている。あの時の、シャンインの絶望した様な表情と共にね?


 一方、私の補佐となったテトラとヤヴァナの2人に関しては、そういった事も無くその才を様々な場面で如何なく発揮してくれている。何処で差が出たかと言うならば、恐らく、初期のディープラーニング中だろうか。当初の予定を思い付きで度々変更し好き勝手に手を出したシャンインと、計画通りの学習を進めさせた私。


 (そう言えば、ドクターが呆れた様にぼやいてたわね)


 アレコレと手を出すシャンインに、ドクターも手を焼いていた。あくまで彼女の補佐役である以上、その教育に関しては余り彼が手を出す訳にもいかなかったのだ。それでも、何度かコッソリと再教育をしたと言うのだから、闇は深い。シャンインに、人材教育は不向きね。


 「ソフィー様。シャンイン様からの情報を基にした、コロニーレーザーの戦果報告が纏まりました。正面のモニターに出しますか?」

 「お願い」

 「畏まりました」

 「……撃沈確実が800隻前後、余波による損傷艦が程度問わずで300隻前後。チャージを抑え、照射も集束型にした割にはソコソコの戦果でしょうか?」

 「試射を兼ねた初撃として、まずまずと言った結果ですな」

 「次は、予定通りフルチャージで?」

 「香月司令官は、2撃目については撃っても撃たなくても構わないと仰りましたが。……1人の探究者として、あれほど都合の良い標的は、そう数が無いのも事実。排除すべき敵艦隊と共に、宙の彼方へと葬り去ってしまっても問題は無いでしょう。技術の進歩に犠牲は付き物ですしな?」


 ドクターの、探究者として残酷なまでに自分本位の判断。とは言え、一馬様も2撃目は彼の判断に任せると言われた以上、私がどうこう言う必要は無い。撃たれる側からすれば、たまったものでは無いだろうが、陸戦隊と戦って散るか、コロニーレーザーで散るかの違いだけだ。まぁ、前者なら降伏という選択肢もありますけどね。


 「発射の判断はドクターに任せます。ちなみに、再チャージまでの時間にズレは?」

 「随行している工作艦からの情報では、予定よりも内部の損傷は少ない様ですな。……これならば、予定より6時間ばかりは次弾発射までの時間が短縮出来るかと」

 「そうすると……。後8時間程ですか」

 「ですな。まぁ、その前にアレが落ちた場合は……」

 「彼方にシャンインがいる以上、誤射(・・)ではダメですよ?」

 「残念ですな……」


 ドクターのことだ。相互連絡のミスなどと理由(イチャモン)を付けて、占領行動中の帝国軍諸共に要塞を破壊しかねない。シャンインには護衛を付けているとは言え、帝国軍艦隊のど真ん中にいる。出来る限り、リスクは減らすに限るわ。


 「で、前線の艦隊は如何ほどですかな?」

 「……そうですね。ドクターの開発された技術のお陰で、此処までは一方的な戦闘になっていますよ。まぁ、流石に戦闘状態である以上、火砲や機関部に対する熱探知を用いた反撃は避けられませんが」

 「まぁ、何事も完璧にはとはいきませんな。故に、我々の様な探究者は職を失わずに済む。良いではありませんか?」

 「何処までも、追求し続けると?」

 「愚問ですな。我ら探究者は、止まれぬ生き物ですぞ?」


 そう言い切るドクター。一馬さんに必要とされ、その上で自身の探究の為に自由な研究開発が許されている今の環境が、よほど心地良いみたいね。まぁ、私もそうだけど。一馬さんに必要とされ、信頼され、重要な職務を任されるというのは、何にも代えられない喜びとなる。彼の補佐官になれた事、それだけはあのバカに感謝しても良いわね。


 「ただ、コロニーレーザーの衝撃が強過ぎたのか、敵艦隊の誘引は完全に失敗ですね。右往左往しているだけで、追撃してくる様子は見られません」

 「ふむ。些か与えたインパクトが強過ぎましたかな?」

 「えぇ……。実際に沈んだ艦は少なくとも、アレを見せつけられた将兵が立ち直るには、今少し時間が掛かるでしょうね」


 下手すれば、あの一撃で心折れて立ち直れなくなる者も出るのかしら? まぁ、人は良くも悪くも慣れるイキモノ。意外とコロッと開き直って、気にしなくなるかもしれないわ。いえ、そうしないと心が持たないと言うべきか?


 「帝国軍が先に立ち直れば、情勢は一気に傾くかしら?」

 「そうですな。護る共和国軍は、次に何時・何処を撃たれるのかに自然と囚われざるを得ないでしょう。正対する帝国軍と交戦しつつ、此方にも意識を向け続けなくてはならない。更に前線には此方の艦隊もいる」

 「帝国艦隊、ファリアス艦隊、そしてコロニーレーザー。3方に気を取られれば、1度途切れてしまった彼らの集中力では、もはや止められないでしょうね」


 まぁ、友軍―帝国軍に非ず―を誤射する訳にはいかない以上、要塞付近で乱戦ともなれば早々撃てませんが。共和国軍がそれに気が付けるかどうか……。少なくとも、ファリアス艦隊とコロニーレーザーが同勢力である事実に気が付けなければ、無理ですね。


 「ソフィー様。シャンイン様から通信です」

 「正面モニターへ」

 「了解しました」


 さて、帝国側の状況はどうかしら? 此方を先鋒に使い、要塞は自分達で片付けると豪語したのだから、さっさと片付けて欲しいものね。そうすれば、幾らかの艦隊を一馬さんの下へ送れると言うのに……。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに!

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[気になる点] ディープランニングじゃなくて、ディープラーニングですぜ?
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