表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第4章:マーク・トゥウェイン要塞攻略戦
173/336

4-24:マーク・トゥウェイン要塞攻略戦②

シャンイン視点。

 「……了解ですの。そちらも十分に気を付けてですわ?」

 『えぇ、シャンインも気を付けてね。万が一は、後方のフィンジアス艦隊を壁にしなさいよ?』

 「分かってますわ。私達補佐官は、最後まで一馬様と共にあるのが最大の使命ですもの」

 『その通りよ。まぁ、そっちには帝国軍と言う、優秀な友軍(ニクノカベ)もいるものね』

 「そうは言いますけど、帝国軍の機動艦隊を率いる、トラウゴット・シェーバー上級大将。現皇帝の信頼を得る、それなりの現場指揮官の様ですわ? 此処で使い捨てるには、些か勿体無いですの」


 要塞で指揮を執る、ソフィーとモニター越しの何時も通りの雑談。一馬様は、今の所は順調に共和国領内を進まれている様ですの。サウサンも現地に先回りしているし、余程の事態が起きない限りは問題無く進むはずですわ。まぁ、最初にプランを聞かされた時は内心では反対すべきと思いましたけど……。


 「では、また何かあれば連絡を下さいな?」

 『えぇ。また後でね』


 要塞との通信を終了し顔を上げると、補佐として共に乗艦しオペレーター席に鎮座しているバイスァとヘイスァが視界に入る。連絡役と言う体の良い人質である以上、必要以上に人員を増やす必要は無かったのですが、一馬様から連れて行くようにと言われてしまっては、仕方がありませんわ。それに、帝国側に知らせていない戦力まで、護衛も兼ねて後方に展開してますもの。


 ―帝国とシャンイン。どちらかを取るなんて、言わずとも明白だろ?―


 そう言い切った一馬様。私達の護衛に5個艦隊、ソフィーとドクターのいる要塞には艦艇に加えミディール隊が実に6,000機弱。サウサンには任務上、大規模な護衛は付けられ無いが、それでも諜報部門から選りすぐりの精鋭が行動を共にしてますの。言っては何ですけど、敵地ど真ん中へ向かっている一馬様の周りが最も手隙ですわ。


 「バイスァ。ファリアス艦隊は会敵まで後どの位ですの?」

 「ん。後5分くらいで、最外縁の敵艦隊を射程に収める」

 「そうですの。共和国守備隊の動きは?」

 「正面の帝国軍を全力警戒中。こっちに気付いてない」

 「幾ら3大勢力とは言え、ドクターの技術には形無しですの」


 今回の帝国軍の動きに対し、共和国軍もマーク・トゥウェイン要塞に戦力を集結させて迎え撃つつもりですの。攻める帝国軍30個艦隊に対し、護る共和国軍は実に45個もの機動艦隊を集結させているわ。まぁ、実際には帝国側に私達ランドロッサ要塞陣営が加わるから、数的にはほぼ同数ですの。兵法では、同数の場合だと護る側の方が有利なのは間違いないですけど……。


 「コロニー」

 「レーザー」

 「さい」

 「つよ」

 「一々、2人で言葉を分けないですの!」


 ヘイスァとバイスァが言う様に、コロニーレーザーが此方にはありますわ。特に、その存在が知られていない初撃は確実に共和国の戦力を削れる強みがありますもの。正面の帝国軍に気を取られている共和国軍守備隊たる数多の機動艦隊。その無防備な横っ腹にどデカい一撃を挨拶代わりに噛ませば、愉快痛快な惨劇の幕開けですの。


 「この要塞を巡る戦闘の主役は、私達ランドロッサ要塞ですわ。その他の者達など、画面を埋めるモブでしか無いですもの」

 「シャンイン様」

 「後1分」

 「了解ですわ。帝国軍に通信を」

 「あい」

 「まむ」


 今回のマーク・トゥウェイン要塞攻略に向け派遣された、帝国軍機動艦隊の総旗艦を務める戦艦『ベルンシュタイン』。皇帝の趣味らしく、白磁の様な白一色のその威容はセンスの欠片も感じさせないB級品ですの。どうして、『スレイプニル』の様な気品と優雅さと、何よりの軍艦としての力強さを追求しないのか不思議でならないですわ。


 『開戦直前の忙しい時に、一体なにかね、シャンイン嬢?』

 「貴方がたが驚きの余り無様に腰を抜かさない様、事前に忠告する為ですわ?」

 『ほう? 言うではないか? まぁ、お手並み拝見といこうではないか。くれぐれも陛下の前で無様な様だけは晒さないで貰いたいがね』

 「気付け薬の準備が必要ですの」

 『面白い。では、見せて貰おうか。辺境育ちの戦いと言うものを』

 「とくと、ご覧あれですわ!」


 白髪交じりの黒髪を、整髪剤で撫でつける様に背面へと流しているトラウゴット・シェーバー上級大将。少しばかり、運動不足が目立ちます体型ですの。貴族だか何だか知りませんが、もう少し見た目にも気を付けるべきですわ。貴族とは、常に民衆の模範となるべきもの。あれでは……。


 「シャンイン様」

 「だんちゃーく」

 「今!」

 「へっ?」


 貴族とは何てくだらない事に気を取られている隙に、『スレイプニル』率いるファリアス艦隊による先制砲撃が始まってしまった。何て言うか失態ですの!? まさか、初撃を見落とすなんて……。命中弾を受け、次々と爆散し果てていく数多の艦艇群。


 「たまやー」

 「かぎやー」

 「それは花火ですの!?」


 まぁ、正面の敵に気を取られ過ぎて、回避行動のかの字すら見られなかった共和国艦隊にとって、遠距離からとは言え精度の高い砲撃は悪夢そのものですわ。文字通り横っ腹を滅多打ちにされ、圧し折れる船体。初撃でどれだけの艦が沈んだかは不明ですが、立ち直る前に2撃・3撃と叩き込めば彼らの気勢を削ぐには十分ですの。後は、敵を誘引して要塞から引き剥がすのみ。


 「問題は、どの程度の敵艦隊を釣れるかですわ」

 「敵、大混乱」

 「わいわいがやがや」

 「ぐーるぐる」

 「えんやこーら」

 「報告は適切にしなさいですの!」


 相変わらずヘイスァとバイスァは、ポンコツですの。この私がイチから誕生まで関わった筈なのに、どうしてこうなったのか不明ですわ! ソフィーの補佐をするアンドロイド達は、彼女に似て真面目で優秀ですのに。


 「撃沈確定、2,300弱」

 「1個艦隊弱、ドカーン」

 「それは、とても物騒な出だしですわ」

 「乱戦乱戦」

 「共和国。まだウロウロ中」

 「見えざる敵との戦い。未だに有効策を見出せていないようですわ。学習能力の無いサルが指導者では、当然の帰結ですの」


 総旗艦たる『スレイプニル』率いるファリアス艦隊は、僅か5個艦隊3,900隻に過ぎませんわ。後方支援を主とする拠点艦を除けば、更に戦闘艦の数は減少。それにも関わらず高い戦果を挙げられるのは、偏に兵器の質が共和国を上回っている事と、彼らが此方に対し無防備に横っ腹を晒していたからですの。それに、一馬様が全幅の信頼を預けられているドクター達、技術陣の働きもありますわ。


 「コロニーレーザー、発射よーい」

 「カウントダウン、開始ぃー」


 敵が混乱から立ち直る前に、大打撃を。どれだけ数が多かろうと、アレの前では等しく平等に撃沈スコアになるだけですわ。それに、搭載されている隠蔽技術を見破る対抗策が生まれぬ限り、破壊どころか発見すら困難ですもの。結果として、敵対勢力は私達と対峙する際に、手持ち戦力を広くかつ浅く展開せざるを得なくなるのですわ。


 「これで、アレは存在するだけで、撃たなくとも明確な抑止力となりますわ。たった1撃だけで、半永久的に敵勢力はアレを恐れ続けるもの。もし、自軍へと撃たれたらというifだけで……」

 「びびりー」

 「オバケこわー」

 「ヒヤヒヤ」

 「ドキドキ」

 「ウキウキ?」

 「ワクワク?」

 「少し、黙りなさいですの!」

 『キャー♪』


 私から逃げる様に手を取り合い、全く反省する様子も無く艦橋内を逃げる双子。全く……。どうして、この娘達はこうなのか……。もう少し、緊張感というものを持って欲しいものですわ!

お読みいただきありがとうございました

次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] いつも更新楽しみにしております [気になる点] >「コロニー」  「レーサー」  「さい」  「つよ」 レーザー? >  「コロニーレーザー、初撃発射」  「カウントダウン、開始」…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ