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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第4章:マーク・トゥウェイン要塞攻略戦
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4-23:マーク・トゥウェイン要塞攻略戦①

漸く、章タイトル詐欺を脱す。此処からは一気に駆け抜けます!

 あれから更にひと月半程の月日が経ち、年が明けた。元いた世界と異なり、この星系では1年は15か月となっている。向こうの歴で言えば、既に4月か……。桜は既に散ってしまった頃だろうか? 少しばかり、向こうでの生活を懐かしく思う。まぁ、今の方が自分らしく過ごせているのは間違いでは無いだろう。


 フォルトリア星系歴525年1月13日、遂にマーク・トゥウェイン要塞攻略戦へと踏み出すオッサン達。とは言え、これまでの戦闘とは異なり今回の戦いには、ワルシャス帝国軍が加わる。正確には、彼らが行う要塞攻略の露払いを我々が任されたとでも言えば良いか。


 あのランチミーティング後、シャンインはコンラッドのアーベントロート商会を訪れ、共同での要塞攻略を持ち掛けた。結果として、我々ランドロッサ要塞陣営は先鋒として要塞守備戦力の誘引と撃滅を担い、その間に主力となる帝国軍機動艦隊が要塞攻略をなすという形での共同戦線と相成った。一応、共和国軍相手に実績を少しずつ積み上げた訳だが、帝国からすれば態々足並み揃えてとまでは至らなかった様だ。


 帝国との交渉役を務めたシャンインだが、現在は旗下の専用艦に乗艦し、帝国軍機動艦隊と行動を共にしている。表向きは彼我の調整役との事だが、体の良い人質と言ったところなのだろう。此方が彼らに不利な行動を取る様なら、相応の対応をすると言ったところか。まぁ、シャンイン艦隊の周囲には、護衛のミディール改が1個連隊(108機)ほど密かに展開している。万が一、帝国側が迂闊な行動に出れば即座に彼女の保護と帝国への報復に移れる。


 「さて、ソフィー。状況は?」

 『はい。現在、ファリアス艦隊(『ラーズグリーズ』含む5個機動艦隊)は予定の針路を惰性航行で侵攻中。依然、敵からの探知・妨害等はありません。フィンジアス艦隊(5個機動艦隊)は、帝国軍機動艦隊後方100万キロ地点を此方も惰性航行で侵攻中です。共和国・帝国双方には探知されておりません。ゴリアス艦隊(8個機動艦隊+コロニーレーザー)は要塞前方1光分の地点で展開済みです』

 「了解。ドクター、コロニーレーザーの準備状況は?

 『初撃分のエネルギーチャージは、既に完了しております。予定通り、初撃は出力50%、集束型で行いまずぞ?』

 「了解。それで頼むよ。さて……」


 ボルジア共和国軍の宙における防衛ラインの2本目。それを構成する重要な根拠地たる、マーク・トゥウェイン要塞攻略戦がいよいよ始まる。形はどうあれ、要塞以外の陣営との初の共同作戦となる。正直、彼方さんが全滅しようとも一向に此方としては構わない訳だが、ワルシャス帝国の皇帝からの心象が著しく悪くなるってのは頂けない。


 ボルジア共和国を降した後は、コールマフ連邦との戦いが待っている。まぁ、ワルシャス帝国がそれに乗るかは現時点では不明だけどね。それも、対共和国戦で此方の戦働きを見せられれば、良い方向に向かうと思いたい。逆に、危険視されるリスクも往々にあるが仕方が無い。


 「要塞守備隊の展開状況は問題ない?」

 『守備艦隊、そして機動砲及び艦載機隊・ミディール隊ともに展開を完了しています。要塞表面の各防御兵器も正常に稼働中。何れも問題ありません』

 「了解」


 現在、ランドロッサ要塞の守備を担うのは、バリーフェルター級を機動艦隊へ繰り上げ配備した事に伴い配置転換となった、クレアモリス級戦艦が480隻。更に正式量産化された、500㎜対艦砲と750㎜対艦砲がそれぞれ500基ずつ。防空戦力としてイースキーⅢが7,400機に、各種ミディール改が合計で6,000機弱。えっ? ミディール隊の艦隊配備はどうなっているって? 1個艦隊に付き、2個大隊+2個中隊の 合計96機が配備されているよ。


 要塞配備のミディール隊が要塞攻略に向かう機動艦隊に配備されている数よりも多いのは、あそこで要塞攻略戦の指揮を執るソフィーとドクターを護る為だ。勿論、要塞そのものを護るって意味もあるけどね。それでも、最優先は2人の方だ。


 シャンインは帝国軍に同行し、ソフィーとドクターはランドロッサ要塞で攻略戦の指揮を執る。では、オッサンとサウサンは何処に居るかという話になる訳だが。サウサンは、直属の部下を率い一足先にボルジア共和国の主星である『ステッサ』へと潜入する為に向かっている。それなりのリスクを背負い敵地へと彼女らが潜入する理由は、防衛システムの掌握だ。完全なる閉鎖型のネットワークの為、ランドロッサ要塞からでは埒が明かなかったのだ。


 で、サウサン一行並びに現地協力者達の支援の元で、主星『ステッサ』への強襲空挺作戦を実施する訳だ。そして『ランドグリーズ』艦隊を現地で直接指揮するのが、何を隠そうランドロッサ要塞司令官たる自分のお仕事なのである。まぁ、本来ならば要塞司令官が自ら敵本拠地近郊にある研究拠点に対し強襲掛けるとかアホの極みなのだろうが、その辺は笑って流せ。


 『そちらは、後……36時間程ですか?』

 「そうだね。恐らく、その頃にはマーク・トゥウェイン要塞は陥落しているっしょ。帝国がヘマしない限りね?」

 『これだけお膳立てをして、それでも墜とせないのだとしたら帝国の将は無能としか言えませんね?』

 「まぁ、お手並み拝見といこうじゃないの。戦況分析は逐次此方にも回してくれる? 暇潰しに見るから」

 『了解しました。……一馬さん』


 何時になく真面目な表情を浮かべ、モニター越しに此方を見つめるソフィー。やっぱ、美人さんだよね? って、こんな時に思う事でも無いか。


 「ん?」

 『ご武運を』

 「ソフィー達もね。ドクター、彼女のサポートを頼むよ?」

 『お任せを。香月司令官がお戻りになるまで、守備隊と共にキッチリ要塞を護り切りますぞ』

 「頼んだ」


 万が一の場合は、要塞を躊躇わず放棄しろ。その言葉が喉元まで出掛かったが、口に出すのを我慢する。それを言ってしまえば、留守を任せた2人を信用していないも同然だからな。ソフィーとドクターなら、大丈夫。まだ1年――此方の時間軸で――にも満たない付き合いだが、その付き合いは元いた世界の連中とのモノよりも、遥かに濃く太いモノだと確信している。


 ランドロッサ要塞との通信を切り、乗艦しているクロークヘイブン級空母の艦橋から暗く静まり返っている宙の様子を眺める。敵の支配領域を進む為、光学迷彩とアクティブステルスの併用は勿論の事、加速後は最低限の軌道修正以外は惰性による航行に努めている。


 何故、惰性による航行を選択しているかと言われれば熱探知への対策だ。ドクターによる改良で、機関やスラスターからの熱放出は最低レベルまで抑えられているが、未だ完全にゼロになった訳ではないからね。敵の支配領域を突っ切る以上、必要以上とも言える警戒は必須だ。


 それにしても、やっぱ新型の空母は良い。今回の作戦に際してアンロックし、一先ず『ランドグリーズ』の分だけ先行して建造を行ったクロークヘイブン級空母。初期艦であるフォックスフォード級に比べ、艦載機ないし機動兵器の搭載数が増えただけでなく、機関の改良によりネックだった艦速が上がっている。流石に最速の脚を持つ駆逐艦には及ばないが、ほぼ巡洋艦と同等の脚を得たのは大きい。


 無事に星女を奪還出来たとしても、共和国軍からの追撃は必至だからな。友軍との合流地点まで逃げ切るには、少しでも脚の速い艦が必要だった。そう言った意味でもクロークヘイブン級空母の脚には、作戦成功への期待が掛かる。


 「……少し、休むか」


 まだ開始時刻までは時間がある。主星『ステッサ』に近づけば近づく程に、些細な事から発見されるリスクも増えるだろう。ならば、今の内に身体を休めておくべきだ。まだ、先は長い。

お読みいただきありがとうございました

次回もお楽しみに!

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