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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第1章:歴史の始まり
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1-17:第一歩

カメの歩みも一歩から。

 アイザフ大佐との話し合いの後、彼は部下や護衛対象のナターシャ嬢達に状況の説明と、今後の行動方針を説明した。揉めるかとも思ったが、何だかんだ全員が腹を括った様だ。ちなみに、ナターシャ嬢からはアイザフ大佐を通して、先日の攻撃に対する謝罪を受けた。緊張の続く逃亡生活の中で、自分でも良く分からない焦燥感に駆られ行動してしまったとの事だ。誰かさんが、余計な一押しを彼女の背中にしたのだろうな。

 そんなこんなで、アイザフ大佐達は慌ただしく準備を始めた。第16コロニー側の協力者との協議及び協力要請、往路及び復路の航路の検討。修理が完了したディーシー号の出航準備も急ピッチで行われた。ちなみに食料や水等は要塞から提供した。後は、彼らが無事にやり遂げてくれる事を此方としては願うしかないだろう。


 そうして、いよいよアイザフ大佐達が第16コロニーへ向かう日にちとなった。フォルトリア星系歴524年5月22日早朝。ナターシャ嬢を乗せた貨客船ディーシー号は、ランドロッサ要塞を静かに出航して行った。要塞からコロニーまでは5光分の距離にある。大佐曰くディーシー号の速度は共和国の駆逐艦と同等との事なので、時速250万km程度と推定する。到着までに何らかの問題が発生しなければ、36時間といった所だろうか。復路はそれと同じかそれ以上の時間を追跡艦隊から逃げ延びて貰わなければならない。中々に無茶な要求をしたかもしれないな……。


 司令室でアイザフ大佐と端末越しに別れの挨拶と再会を誓った俺は、自身の仕事へと取り掛かる。まずは、この要塞の戦力の再確認だな。戦力の確認は、要塞項目からだったか。どれどれと……。


 艦艇

 ・改アスローン級駆逐艦 4隻

 ・カンターク級巡洋艦  1隻


 兵器

 ・思考爆雷       30個

 ・機動150㎜対艦砲    6門


 うん。まだこんな物だよな。ちなみに、現状の資源はどれ位かと言うと。


 金属 3,920t 非金属2,022t 推進剤2,675リットル 弾薬 635t


 カンターク級巡洋艦は無理だが、改アスローン級駆逐艦なら建造出来るだけの資源は残っている。だけど、俺としては追加の艦艇では無く、兵器の質と数を充実させたいと思っている。どうしても、艦艇は資源を消費するからな。無理せず、手数を増やして守りを固めよう。後は、どの位の時間が有るかだな……。20日の午前0時に出撃したのが確認出来ているから、現在までに54時間は経過している計算になるな。


 「ソフィー、共和国艦隊の位置は?」

 「現在の所、最も第16コロニーに近い艦隊で、凡そ15光分の距離に来ています。この艦隊はほぼ進路を変えていませんので、真っ直ぐにコロニーを目指している様ですね」

 「他の2艦隊は?」

 「他の2艦隊は、何れも先行する艦隊とは異なり複数の航路を調べつつ移動している様です。先行する艦隊とは、両艦隊とも既に1光分以上の距離が有りますね」

 「そうか……」


 1つの艦隊が真っ直ぐコロニーを目指し、残りの2艦隊は途中の別航路を捜索しつつ進んでいる。下手に時間差が出ると此方の策が失敗する可能性が上がるか? 状況次第では、アイザフ大佐達の到着前に情報を流して共和国艦隊を引き付けるのも手だな。


 「アイザフ大佐達が到着するまでに36時間、共和国の先行する艦隊がこのままのペースを維持したとして、到着する迄には108時間。70時間強あれば大佐達が準備をする時間は問題無さそうだな」

 「そうですね。現状では、追跡艦隊同士の距離が一番の問題でしょうか」

 「だよな。余りに距離が開く様ならば、意図的に情報をリークしてみようか?」

 「呼び寄せる訳ですね?」

 「コロニー周辺に、共和国の艦隊が集結してくれるのが一番やり易いだろうからね。出来るだけ多くの補給艦の脚を宇宙港に止めておきたい」

 「了解しました。追跡調査を続け、状況は適宜お知らせします」

 「宜しく」


 共和国の艦隊同士に距離があるならば、それぞれ各個撃破のチャンスとも言える。ただ、出来るだけ3個艦隊をまとめて撃破してしまいたい。そうすれば、共和国側にこの宙域には少なくともそれだけの事を成し得る戦力があるとアピール出来る。より多くの戦力が投入されてくるだけだって? 確かに、そのリスクは有るだろう。

 しかし、ソフィーと中央管理AIは様々な角度での分析から、この辺境にそれだけの戦力を投入する余力は既に共和国側には無いと判断している。今回派遣されてくる艦隊だって、本来は整備と補給、乗員の休憩の為に前線から下げられた艦隊だった。それを、切り上げ無理をして投入してきている。フォラフ自治国家への度重なる参戦要請からも分かる様に、既に共和国は追い詰められているのだ。それでも、格下であるはずの自治国家に噛み付かれた以上は、力を見せる必要があった。

 想定通りに行けば、今回の追跡艦隊を払いのけられれば、相応の時間が稼げると踏んでいる。その間に、要塞戦力の増強を図っていく。恐らく、今回の事でフォラフ自治国家はボルジア共和国の占領下に落ちるだろう。まだ未確定の話ではあるが、ナターシャ嬢を旗印に、フォラフ自治国家奪還を行うのも手だろう。要塞だけではどう考えても3大勢力と事を構えるには色々と足りな過ぎる。近隣の第16コロニーとも上手くやっていければと思っているし、そこにフォラフ自治国家も含められれば、資源等の問題も少しは良い方向に向くだろう。


 「どの道、今回の事が上手く行かないと絵に描いた餅で終わるな……」

 「必ず、成功させましょう。フォルトリア星系に平穏を齎す偉大な一歩になるはずです」


 そうだな。司令官である俺が弱気になっててはダメだな。気合だの精神論だので、戦況がひっくり返る事は有り得ないけれども、冷静に盤面を見れなくなったらどんなプロだって試合に負ける。今回は、ナターシャ嬢やアイザフ大佐達の命が掛かっている。負けられないからこそ、俺は冷静に状況を見つめなければならない。勝って、祝杯を上げようじゃないか。オッサン、何だかメラメラ燃えてきたぜ!

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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