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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第4章:マーク・トゥウェイン要塞攻略戦
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4-9:地道な研究開発は大事①

何事も一歩ずつ。

 打ち合わせ後の昼食時にドクターから声を掛けられたので、食後にラボを訪れた。拡張工事は問題無く完了し、フル稼働中の研究開発ラボ。数多のアンドロイド達が昼夜交代制で日々研究開発に勤しんでいる。先の戦いでいぶし銀の活躍を見せたダミーバルーンも、彼らのお陰で早期実戦配備が出来たのだ。


 「お待たせ、ドクター。開発は順調?」

 「ようこそ、香月司令官。お陰様で、順調に進んでおります。本日は、そのご報告にてお呼びしました」

 「了解」


 以前よりも広くなった事もあり、休憩用のスペースも拡張されている。壁際にはコーヒーマシンや自動販売機などが整然と並び、オフィスのレストルームと言っても遜色無いスペースとなっている。テーブルやイスの数も増え、更に一部エリアにはソファ席まで設けられている。まぁ、快適な労働環境ってのは、職員の意欲に繋がるからね。


 「さて、色々と同時進行しておりますからな、先ずは量産体制が確立出来た物からご報告させて頂きますぞ」

 「悪いね、仕事増やしまくってて」

 「何を言われるか、これ位であれば何の問題もありませんぞ? ラボが拡張され、人員も大幅に増えましたからな、研究開発の効率が飛躍的に上昇しております。もう幾ばくかであれば、追加研究も可能ですぞ?」

 「そうなの? なら、後で頼むとするよ」

 「では、後ほどお伺い致します。楽しみですな」


 良い笑顔でそう言うドクター。本当に研究開発が楽しくて仕方が無い様だ。まぁ、此方としては彼のお陰で物凄く助かっている以上、出来る限りの助力は惜しまないつもりだ。それが、要塞の強化に直結するからね。システムポイントでは補えない部分を彼が補ってくれる。双方が無くては、とてもやっていけないよ。


 「先ず、大気圏内推進システムですが、サウサン嬢の協力のお陰で実証データの収集が完了し、最終的な調整を加えた物が量産可能になりましたぞ。既存艦については、適宜改良による搭載を。新造艦に関しましては、新造時に搭載する形で進めれば宜しいかと?」

 「おぉ、遂に完成か。丁度、この後で戦力強化を検討するつもりだったから、最高のタイミングだよ」

 「左様でしたか。ちなみに、システム一式に付き金属を15トン、非金属を10トン使用しております。艦種に関わらず、一組搭載すれば機能として十分ですぞ。なお、搭載は各艦艇の機関部となりますので」

 「了解」


 待望の大気圏内推進システムの完成した。これで、指揮官として取れる選択肢が増える。前回の第6機動艦隊戦の後処理の時の様に、敵地上部隊の撤退を信じて待つ必要が無くなるからな。でも、空中で拠点艦から補給や修理を受ける艦艇って、はたから見たら凄い絵面だよな……。


 「次に、電磁パルス兵器についてですが、既に配備されている砲弾型に加え、艦艇並びに兵器用の魚雷型・ミサイル型も実戦配備向けの量産体制に入りました。それから、先の戦いで試験的に作成した設置型についても、実戦配備型の開発を進めております」

 「そう言えば、砲弾型が先行して配備されてたんだったか。最早、無いのが考えられない位に、隠れた主役だよな」

 「そう言っていただけると、研究者冥利に尽きますな」


 電磁パルス兵器。先の偽ランドロッサ要塞を巡る戦いにおいては、敵共和国軍機動艦隊の戦闘艦を1隻残らずスクラップへと変えてしまう程の威力を誇った。まぁ、砲弾やミサイルサイズでは、流石にあそこまでの威力は出せないけどね。でも、敵からしたら脅威だろう。命中どころか至近弾ですら致命傷になるからな。


 「量産体制が整った物に関しては以上ですな」

 「オーケー。そうなると、次は実証段階の物かな?」

 「そうですな。先ずは、アクティブステルス技術について。此方は、艦艇用と兵器用それぞれに向けた初期段階の実証用装置が完成しましたので、実証データを収集する為の艦艇並びに兵器類をお借りしたい」

 「了解。現時点で実戦運用している各種艦艇と艦載機に加えて、オグマとミディールも実証運用に回すよ。それで足りるかな?」

 「十分ですな。感謝します」


 アクティブステルス技術が物になれば、既に実戦投入が出来ている光学迷彩と合わせて強力な手札となる。艦艇は勿論だけど、艦載機やミディールが気付かれる事なく敵陣深くまで潜り込めるのはデカいな。


 「それから、病院船に関しては試験運用艦として2隻分の建造準備が完了しております。香月司令官の判断で何時でも建造に入れますぞ?」

 「スキンヘッド紳士相手の嫌がらせには間に合わなくなったけど、今後を考えて建造しておこう。何が起こるか分からないからね?」

 「では、その様に手配致しますので、建造ドックをお借りしますぞ?」

 「了解」


 本当ならば、病院船を用いてスキンヘッド紳士に嫌がらせするつもりだったけども、予定が変わってしまった。とは言え、建造自体が無駄になる訳ではない。当たり前だが、今後は艦隊戦以外にも戦闘は広がっていく。陸戦隊が戦地で戦えば、負傷したアンドロイド達の治療が必要だからな。


 「そして、上陸支援用の戦闘メカですが。クモ型並びにサソリ型の試験機が数機ずつ完成しました。次のガルメデアコロニーで実証の為の試験運用をお願いいたします」

 「了解。良いデータが取れそうじゃない?」

 「同感ですな」


 上陸支援用の戦闘メカ。多脚に拘った結果としてサソリ型とクモ型が試験配備となった。陸戦隊と上手く連携して戦いを優位に進めて欲しいものだね。勿論、今後を見据えた実証データの収集も大事だけどさ。


 「実証段階の物は以上ですな。次は……先に研究の中止を進言したい物からと参りますかな」

 「研究中止か……」

 「1つは、兵装共通モジュールについてですな。此方は、残念ながら運用コスト面の改善が見込めません。そして、それに見合う結果も厳しいかと。やはり、特化した派生型を運用する方が理に適いますな」

 「やっぱ、厳しいか。まぁ、ドクターがそう言うのならば、その分を他の研究リソースに回した方が良いな。中止してくれ」

 「かしこまりました。で、2つ目ですが。艦首に装着する衝角ですな」

 「っ!?」


 まぁ、モジュールに関しては、特化型となる派生型でも相応に対応出来るって分かったから、ぶっちゃけ不要になりつつはあったんだよな。だから、ドクターからの中止の進言は渡りに船と言って良いかもしれない。でも、衝角もダメなのか!? 基本設計までは出来ていたと思ったけれども、シミュレーション上で何か問題が出たかな?


 「先ず、対艦用としては全く使えません。あらゆる角度と速度でシミュレーションしてみましたが、只の1度も香月司令官の望まれる様に、陸戦隊を送り込める状況にはなりませんでした。まだ、敵艦に同速度で並走してから強攻接舷し乗り移らせた方が、成功する可能性がありますぞ?」

 「対艦は無理か。でも、要塞相手なら?」

 「最も防御の薄い隔壁部分に突撃するにせよ、一定の速度と最適な角度での突入が不可欠となります。僅かでもそれらが狂えば……」

 「只の自爆にしかならないか……」

 「残念ながら。現状では強襲揚陸艇に追加装甲を取り付ける方が、遥かに効果的かと」

 「無念……」


 あれを現実で再現するには、ドクターと言えど色々と無理があったか。まぁ、彼が言う様に追加装甲なりで強化するのが、今の所は最適解って事だな。後は突入支援用の支援兵器で、出来る限り敵からの射線を集めるしかないな。しかし、これで2つ開発中止か。まだ、あるのだろうか?

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] 彼が言う様に あれ?ドクターって男だっけ?
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