4-8:次への動き
日常編みたいな本編。最早、意味不明。
※いつも、誤字報告ありがとうございます。助かります。
11月22日に始まった共和国軍特別任務部隊『STF-05』との戦闘は、最終的に翌23日午後に全艦隊が要塞へと帰投した事で終結となった。これまでで最も長い戦闘時間となった今回だが、何れの戦いも一方的なものであり此方の被害は極めて低いものだった。ぶっちゃけ、全体の1割が小破にすらならない、軽微な損傷を負うだけですんだ。で、その日は敵艦隊が全滅している事もあったし、特に面倒な後作業も無いので、早めに切り上げて丸1日以上ぶりの休みとなった訳だ。
「では、毎回恒例とも言える戦後報告会といこうか。ソフィーから頼む」
「はい。最終的な、総撃沈数は7,560隻となりました。戦艦750隻、巡洋艦900隻、駆逐艦3,600隻、艦載機母艦300隻、補給艦900隻、工作艦600隻、輸送艦300隻、揚陸艦150隻。これらに加え推進剤運搬艦60隻を撃沈しております
「敵軍の総戦死者数は、揚陸艦の陸戦要員を含め180万人強となりますわ。先の第6機動艦隊戦も含めれば、それなりの数の人的損失を共和国に与える事に成功してますの」
「まぁ、それでも敵軍の人的総数から考えたら微妙な所ではあるな。それに、別に全ての敵兵を倒す必要もないし」
当たり前の話だが、共和国との戦争に勝つ条件として、敵軍を文字通り全滅させる必要は無い。要は、共和国側の継戦意思を圧し折れば良いだけだ。なので、虱潰しに敵艦隊を潰すよりかは軍事的な要所を叩いて、帝国・連邦方面から共和国への圧力を強める方が良いだろう。敵の敵は味方とは言わずとも、利用は可能だからな。
「ドクター、資源の回収状況は?」
「粗方、大型の破片に関しては宙域への回収を完了しております。それから、友軍艦に関しては、艦隊帰投時に曳航し、既に回収を完了しております。此方は、一時的に軍港にて保管しておりますので、順次解体へ回しますぞ」
「了解。暫くは、解体場がフル稼働だな。悪いけど、引き続き管理をお願いするよ」
「お任せ下され」
敵の戦闘艦隊もろとも、偽ランドロッサ要塞の自爆によって物言わぬ金属の塊と化した旧式艦達。それらを合計すると、8,000隻を超える艦艇の大部分が要塞の資源となる訳だ。まぁ、細かい破片なんかは、そのまま宙域で新たなるデブリとして残る訳だが。デブリはデブリで、色々と役に立つからな。
「サウサン。共和国側の反応はどうだ?」
「艦隊からの定時連絡が途絶えて、ほぼ丸2日経過したからな。少しずつ騒ぎ始めているといった所だ。もう少しすれば、否応なしに理解するさ、現実をな?」
「今回の戦いに関しては、敢えて何も情報は流さなくて良いからな? 艦隊丸ごと行方不明の方が、共和国に与える衝撃は大きいだろうから」
「了解した。どう奴らが誤魔化すか、じっくり見聞させて貰おう」
先の1個機動艦隊は戦闘によって敗北した事を大々的に宣伝する事で、民意を煽り立てた。そして、正義の鉄槌を下すと3個機動艦隊が派遣された訳だ。同じ言い訳は通用しない。敗北の連続など、あの男が受け入れる事など有り得ないだろうからな。
「サウサン。敵の出方次第ではあるが、世論を煽る様に誘導して貰うかもしれない。仕込みだけは先に進めて欲しい。理想としては、あの国を政治的に割りたい」
「反大統領派が出来れば良いのか? ならば、既に幾つも下地はあるから、そう難しくは無いぞ?」
「そうか。なら、資金・武器・情報。それらを適宜流し込みつつ、先ずは地盤固めに邁進させるか……」
「任せておけ。目先に囚われたお山の大将に、足元の大切さを再認識させてやるさ」
すっかりと、お山の大将呼ばわりが定着してしまった、共和国大統領のウィリアム・ローズベルト。猿山の大将だったかな? まぁ、どちらでも良いか。討つべき敵の蔑称など、どうでも良い事だ。
「さて、今回の結果が方々に伝われば、帝国や連邦も動きを相応の動きを見せるだろう。或いは、シャンインが暇つぶしで接触したって言う、マスコミとかもね? そっち方面の折衝は頼むよ、シャンイン?」
「了解ですわ」
「……そうだ。シャンインが脅かした、ガルメデアにいる例のハゲ。名前は忘れたが、どうやら共和国に接触を図っている様だぞ?」
「へぇ? どうやら、彼とお仲間連中は、無残な最期をお望みの様だね? 今更、沈み行く泥船に縋ろうとは……。せめて、帝国や連邦なら僅かながらの希望くらいなら抱けたかもしれないと言うのにさ」
「まぁ、共和国側の反応は極めて鈍いがな。元々、あそこは流刑地だ。我々との繋がりがあるとは言え、今更、進んで影響下ないし勢力下に置こうとなど何れの勢力も思わんさ。掛かる労力と得られる物が到底釣り合わないからな」
次に会う時までに態度決めておけよと、シャンインを通して伝えておいた訳だが。どうやら、自分の未来すら己らでは決められない様子。ならば、その結果を彼にプレゼントする良い機会では無かろうか?
「シャンイン、例の女性とは?」
「大筋で合意出来ましたわ? 他に、もう1人ほど此方へ靡く様子を見せてますの。どうするかは、一馬様にお任せしますわ?」
「命惜しさに宿主を変えようって魂胆ならば、スキンヘッド紳士と共に容赦無く切り捨てるだけだ。何かを変えたいって願っていて、その為の力を望むって言うならば、使ってやっても良い。その1人ってのは、何方かな?」
「その二択なら、後者ですわ。あの男は、瞳の奥に何かどす黒い物を抱え込んでいますの。今回の事も、その為の好機と思った様ですわ? 勿論、一馬様に害をなすのであれば、此方で始末しますの」
「そうか。まぁ、此方に害となるならば、シャンインの方で好きに使い潰して構わないよ」
自分ながら、酷い言い様だとは思うが。結局のところ、何処までいっても重要なのは、この要塞とそのメンバーだ。それ以外の数多の人々の人生は、何が何でも守るべきモノとしてはカウントされない。無論、時には守るだろう。でも、結局は要塞の利益を考えての行動だ。要塞の司令官として、それで良い、それで良いのだ。
「よし、『ラーズグリーズ』ガルメデアコロニーに対する制圧戦を行う。『ランドグリーズ』も同行させて、ミディールにコロニー内での戦闘を経験させよう。サウサンが教えてくれた建造時の工事用シャフトが使えそうだからね。ドクター、今回もデータ収集は任せるよ?」
「お任せ下さい。密閉型コロニー内での戦闘となりますので、電磁投射砲の使用は避けた方が良いでしょう。コロニーの外壁に穴でも開くと、修復が手間ですからな」
「その辺の制限下での戦闘も良いデータになりそうだね。今の内に試せる事は試しておいてくれ」
「了解しました」
唐突と言えば、唐突な話ではあるが、ガルメデアコロニーを支配する連中の首を挿げ替えるのは、元々予定していた事だ。そのタイミングを計っていた訳だが、向こうから提供してくれると言うならば、それに乗るのも一興だろう。何か、致命的に間違っている様な気がしないでもないが、キニシナイ。
お読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに!