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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第4章:マーク・トゥウェイン要塞攻略戦
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4-6:絶望との戦い⑥

先ずは初戦、間も無く完了。

 「状況は?」

 「……現在、攻撃に当たった各艦隊の補給および整備が進行中。並びに、第7艦隊による掃討戦へ移行しております。彼方の状況については、サウサンから」

 「うむ。偽ランドロッサ要塞を囮とした策は、予定通りに事を運べたぞ。敵の戦闘艦は、此方の旧式艦共々鉄くず同然の有り様。閉じ込められた連中は、必死になって修理しようと藻掻いている頃だろう」

 「了解。『ラーズグリーズ』以下、6個艦隊の補給が終わり次第、当初の予定通りに敵戦闘艦の殲滅戦へ入る。それから、『ランドグリーズ』も向かわせてミディールの対艦データを取るとしよう。第7艦隊はそのまま掃討戦を継続、残りの4個艦隊はこのまま要塞の警護に充てる」

 「「了解」」


 此処までは上手い事が運んだ。司令官の席に深く腰掛け、思考制御装置を外し深呼吸。戦闘指揮ってのは、何度行っても緊張しっぱなしだ。手汗も結構かくしね。刻一刻と変化する情勢にその都度ごと対応を指示しなくてはならないから、一瞬も気が抜けないしな。まぁ、戦闘そのものはAI達に丸投げしているだけ楽なのだろうが。


 「相応の迎撃準備が出来たとは言え、前回の3倍以上の戦力相手にこれだけ戦えたら見事な物ですの!」

 「いや、シャンイン。まだ、戦いは終わってないからね? 気を緩めたらダメだよ」

 「勿論、それは分かってますの。ただの前喜びですわ!」

 「あはは……」


 前喜びって何やねん。たまに出るシャンインの謎語録って事なんだろうな。まぁ、一先ず敵の支援艦隊は叩けたから気持ちが分からなくも無い。残りは身動き取れない戦闘艦だけだからな。とは言え、油断していると痛い目に遭うのは古今東西のド定番な訳で。最後までキッチリと倒してから、祝杯と行こうじゃないの。


 補給に整備作業、そして残存勢力の掃討を終えたのは、最初のモーニングコールが行われてから半日後、日付が変わって翌日になってからだった。時間掛かり過ぎだって? 実際、補給と整備だけなら、そこまで時間は掛かっていないんだよね。問題となったのは、支援艦隊の掃討戦の方だ。死んだ振りをする艦がいないか、虱潰しに何度も執拗に攻撃を繰り返しさせたからな。結果、まともに船型を留めている艦が1隻も残っていない訳なのだが。自分でやらせておいてあれだが、少しばかりやり過ぎたかもしれない。


 大量のデブリが新しく生まれた宙域から、改めて再度の艦隊出撃が行われる。今回は、先の戦いで暴れた6個機動艦隊に加え、完全人型の機動兵器であるミディール(量産型)を集中配備する第601独立艦隊『ランドグリーズ』が敵戦闘艦の掃討戦へ参加する事となる。普通ならば、戦闘に参加していない艦隊に経験を積ませるのが筋なのだろうが、ウチの場合は制御する側の戦闘AIが全ての戦闘経験を総取りする形となるので、究極的にはどの艦隊で戦わせても同じ戦果が出せる。部隊毎に育てる必要が無いって、育成ゲームで考えたら物凄いチート技だよな。


 「さてと、残りの敵艦隊も叩きに行くか。サウサン、状況に変化は?」

 「現時点では、特に無いな。確認出来ている範囲で、機関が再起動出来た艦は1隻も無い。まぁ、あらゆる電子機器類がダメージを受けたのだ、修理する為には全ての電子パーツを交換する以外に手段など無い。そして、その修理用のパーツもまた同じダメージを受けている。正に、敵艦内ではないものねだりの状態だろう」

 「それでも、万が一があるからな。念には念を入れて監視を継続してくれ」

 「了解した」


 現場宙域まで此方の艦隊の脚で40分弱ほどだろう。到着次第、敵戦闘艦隊の殲滅に移る。今回は、事前に示した通り、全て撃ち滅ぼす戦いだ。何らかの手段で降伏を訴えてこようと、全て叩き潰す。




 「敵戦闘艦を確認。……依然、動きは無いようですね」

 「よし、先ずは艦砲射撃で艦載機母艦を叩く。その後でミディールを出して実戦データの収集だ。まぁ、的が物言わぬ棺桶だけど、この際だ贅沢は抜きにしよう」


 自分でそうしておいて言うのも何だがね。動かぬ的とは言え、本物の軍艦だ。彼の兵器で運用する武装が、どの程度まで有効なのか確かめるには丁度良いだろう。何事も経験を積まないと、次には繋がらないからな。


 「艦砲射撃、開始ですの!」


 戦艦、巡洋艦、駆逐艦。口径は違えど、正確無比な艦砲射撃が敵艦隊の艦載機母艦へと降り注ぐ。被弾し、次々と爆散してく敵母艦。何ら反撃の兆候が見られない事から、未だに復旧には至っていないのだろう。艦載機が緊急発艦してくる様子も無いしな。流石に、この状況で出し惜しみする程、相手の指揮官も馬鹿では無い筈だ。まぁ、指揮官と言っても、本来の正当な指揮官の代理の代理の、そのまた代理かもしれないが……。


 「同情はするが、手は緩めないさ……」


 艦載機母艦と、艦に搭載された艦載機や弾薬、ミサイル等が等しく木っ端微塵と化していく様。宇宙空間ゆえに音は無いが、これがSF映画やアニメだったら大音響が響き渡っている事だろうな。勿論、あの艦に乗っていた乗組員達やパイロット達も運命を共にしている。でも、仕方が無い。これも、形は違えど戦闘なのだ。同胞を撃った様な連中に、名誉ある戦死なんぞ与える訳が無かろうに。


 「戦いとは言えぬ、戦いで死ぬ。軍人として、これ以上に不名誉な事は無いだろ?」

 「同胞を撃つ様な者達には、相応しき最後ですな」

 「例え、それが命令だろうと。軍人として超えちゃ行けない一線ってのがある。それを、彼らは超えたんだ。その結果が、……これだ。まぁ、窒息するか同士討ちするまで放置しても良かったけどね。それはそれで、絶望しただろうさ」

 「これだけの艦があれば、ミディールの稼働データも十分に取れるかと?」

 「派生型の解放もそうだけど、専用兵装の開発をドクターに依頼するかもしれないから、可能な限りのデータ取得を頼むよ」

 「お任せ下され。的は腐る程にありますからな」


 ドクターの言う的。当然ながら、それは多くの乗組員達を内包したままの軍艦だ。でも、ドクターに取って、それは躊躇する理由にはならない。必要なのは、今後の研究開発に繋がるデータでしかないからな。良くも悪くも、彼は彼の興味のある事以外には酷く冷たい傾向がある。まぁ、自分も例外では無いので人の事は言えないが。


 「それと、共和国支援艦隊の残骸は工作艦を送って回収し始めてくれるかな。資源は幾らあっても無駄にはならないからさ?」

 「合わせて、お任せ下され」


 資源、幾らあっても構いません。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに!

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