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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第4章:マーク・トゥウェイン要塞攻略戦
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4-1:絶望との戦い①

漸く、第4章スタートです。楽しんで頂ければ、幸いです。

 「サウサン。例の情報は無事に流れた?」

 「ん? あぁ、この要塞の正確な座標(・・)なら、無事に共和国側に渡ったぞ」

 「了解」


 今回は、要塞陣営としては初めての迎撃戦となる。今までは、此方側から仕掛けるのが基本だったからな。まぁ、最初のガルメデアコロニー攻防戦は待ち伏せからの戦闘だったから、迎撃戦と言えなくも無いが……。


 「これで、共和国は真っ直ぐ此処へ来るしか選択肢が無くなりましたね」

 「辺境の蛮族にビビッて後ろからコッソリなんて、とてもとても恥ずかしくて出来ないですわ?」

 「正義の鉄槌とまで大口叩いたんだ、真正面から叩き潰す以外、あのサルは満足しないさ」


 複数ルートから此方の座標を共和国に掴ませた。勿論、既に凡その座標は特定されている。でも、それでも誤差はあるもので。広大な宙では、そのズレが致命傷になり兼ねない。だから、正確な座標を伝えたのだ。罠だとは悟られない様に、複数のルートを経由してだ。まぁ、その背後には何れもサウサンがいる訳だが。


 「ドクター。ダミーバルーンの状況は?」

 「デブリに擬態させたダミーバルーンは、全て予定通りの位置に展開させましたぞ」

 「そちらも順調と……」


 ドクターには、改良したダミーバルーンⅠ型改で、共和国軍部隊の予想針路上に大量のデブリを用意してばら撒いて貰っていた。元々、宙を航行する艦隊は各艦ごとに一定の安全距離を確保している。車などと比較にならないほど高速で航行している以上、コンピューターによる補助は当然受けているが、それでも念を入れている。で、此方はその習性を偽デブリを悪用する事で、更に自然と艦ごとの距離が開く様に仕向けた訳だ。


 「ランドロッサ要塞は?」

 「両方(・・)とも準備完了ですぞ?」

 「なら、そろそろ、予定ポイントまで移動しようか」

 「そうですな。では、早速……」


 ダミーバルーンⅠ型改を多数結合してして作り上げた、もう1つのランドロッサ要塞。共和国側に教えた座標には、この偽のランドロッサ要塞が鎮座して彼らを待ち構えるのだ。勿論、それなりの戦力も置いていくがね。

 700隻を超える旧式艦に、先の第6機動艦隊戦でお披露目したダミーバルーンⅠ型、それに簡易的な武装を施した改良型のⅡ型だ。合計すれば1,100隻を上回る規模の防衛艦隊となっている。更に、射程が100万kmの試製500㎜対艦砲100門に、120万kmの試製750㎜対艦砲130門もスタンバイしている。そして、この大口径対艦砲が今回の戦いで大きな役割を果たす訳だ。


 「前回の試運転は順調でしたし、今回も距離は短いですもの。お散歩気分ですわね」

 「まぁ、気負わずに行こう。ドクター、頼むよ」

 「お任せを。では、ランドロッサ要塞、発進ですな!」


 要塞各所に設置された推進器Ⅰ型、合計20基により生みだされた膨大な推進力によってランドロッサ要塞がゆっくりと加速していく。共和国艦隊を迎え撃つハリボテのランドロッサ要塞と防衛艦隊を残し、予定ポイントへとノンビリとした散歩がスタ―トした。




 そして、今に至る訳だ。急ピッチで量産された試製対艦砲は、遺憾なくその大火力を発揮した。モーニングコールと称した100万km先からの開戦を告げる長距離砲撃は、正義の鉄槌を振りかざしに意気揚々と進軍していた共和国軍特別任務部隊『STF-05』を無慈悲に襲ったのだった。第1射の最優先ターゲットに選んだのは、STF-05の総旗艦を務める戦艦『スプリングフィールド』。偽デブリのお陰で、自然な形で艦隊総旗艦までの射線が確保出来ていた。


 戦術モニターの中で、一瞬で閃光となり果て轟沈する戦艦『スプリングフィールド』。第6機動艦隊の残存艦掃討戦にも、加わっていなかった彼の艦は、結局のところ1発の砲弾すら放つ事なく、舞台から退場していった。わざわざ遠路はるばる沈みに来てくれて、ご苦労さん。サウサンの言う、撃沈スコアとして永遠に残るから安心してくれ。


 当然の事ながら、最も効果が期待出来る1射目だけに、他にも重要なターゲットを選別して狙い撃っている。STF-05を構成している、3個機動艦隊それぞれの旗艦。機動艦隊隷下の5個任務部隊の各旗艦も1射目で全て仕留めた。これらの艦に加え、


 「艦隊最後方の推進剤運搬艦も、予定通り全艦撃沈ですわ」


 今回、STF-05は超大型の推進剤運搬艦を、通常の2倍にあたる60隻も同行させていた。無論、これら以外にも根拠地と艦隊とを往復している推進剤運搬艦も存在するので、どれだけ今回の戦いに共和国がのめり込んでいるか良く分かるというものだ。まぁ、此方からするとデカい艦ってのは、ただ単に狙い易いだけなんだがね……。だから、ご期待に応えて、最初に全て沈めて差し上げた。嬉しいだろ?


 「よし、此処までは予定通りだな。指揮する頭と腹を満たすエサの両方を同時に叩けた訳だ」

 「続いて、モーニングコール第2射、着弾まで3秒……、2秒……、1秒……、弾着!」


 再び戦術モニター上で、赤い光点が幾つも消えていく。試製対艦砲は、1分辺り3発の砲弾しか発射出来ない。艦艇に搭載されている砲と比べてしまうと、連射性は極めて低いと言わざるを得ない。しかし、大型砲弾ゆえに、装甲の薄い艦ならば掠めただけでも大ダメージを与える事が出来る利点がある。特に、要塞の冶金技術で製造された砲弾だから、その威力は極めて高い。


 「第2射……。命中は230発中168発、命中率は約73%。事前の予定数値よりは若干低いでしょうか?」

 「そうみたいだね。僅か20秒とは言え、もう少し敵艦隊が右往左往する迄には時間が掛かると予想してたからな。事態が正確に呑み込めなくても、経験から最適行動に移ったか」

 「……こうなると、次は更にグッと下がりますわ」

 「予定より早いが、仕方が無いよ。此処からは、嫌がらせ程度の効果にしかならないだろうさ」


 モーニングコール第2射目のメインターゲットにしたのは、艦隊後方の艦載機母艦。此方も相応に空母と共に艦載機を増やし、防空特化型巡洋艦の導入による防空能力の向上もさせたが、それでも純粋な数ではまだ負けている。だから、長距離砲撃を利用して少しでも削ることを狙った。結果だけで言えば上々といったところだろうか? 搭載したままの艦載機もろとも爆散する、母艦の数々。1隻減るごとに、此方の負担が減るのだから嬉しい限りじゃないか。


 「モーニングコール第3射、着弾まで3秒……、2秒……、1秒……、弾着!」


 また、赤い光点が減った。たーまーやー!(違っ


 「要塞まで、後100万kmにござーい!」

 「共和国御一行様、ご案内ですわー!」

 「かん」

 「げー」


 艦砲の射程に要塞を捉えるまで、彼らは一方的な砲火に晒されながら進軍するしか道は無い。一方的に叩かれている状態で逃げ帰ろうものならば、彼らに待っているのは自分達で手を下した第6機動艦隊残存艦が辿った末路と同じものになる。進むも地獄ならば、退くも地獄。さぁ、ランドロッサ流はまだまだ続くぜ?

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに!

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