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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第3.5章:宙は燃えているか
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3.5-11:カワル宙⑪

まだ、間章は続く予定(えっ

 眠り直した朝とは残念ながらいかず、バカからの呼び出しが終わった後もそのまま司令室へ残る事にした。ソフィー達には休むように言ったものの、彼女達も残るとの事だったので、各々が自身の席で飲み物と軽食片手にモニターを見つめる事に。


 「……」


 要塞には帰投せず、第6機動艦隊残存艦への追尾に当たっていた潜航艦からの映像。元TF215所属の母艦から艦載機隊が発艦し、己らを討たんと迫ってくる味方へと応戦に向かう。共和国軍同士の戦闘。ただ、それを戦闘と呼べるのかは疑問だが。


 「……」


 片や完全充足の3個機動艦隊。一方は、母艦を除けば非戦闘の支援艦のみの第6機動艦隊残存艦。16隻の母艦から出撃した艦載機隊が必死の抵抗を見せるが、数の違いは如何ともし難い。次々と撃墜され、物言わぬ棺桶とかす艦載機の残骸達。多少の抵抗は出来ても、そう時間は掛からないだろう。


 「……サウサン。映像は予定通り?」

 「あぁ、星系中に通信内容も含めてありのまま垂れ流しているぞ。流石に、共和国圏では何度も妨害が入ってきている様だが、物理的に切断しない限り此処のAIには勝てんがな」

 「上々だな。この手の代物には、余計な編集や語り口は不要だ。ありのままを見せるのが一番効果的だからな。後は見た人間が勝手に想いを語れば良い」


 共和国軍同士の戦闘。正確には、味方殺しの映像は現地の潜航艦から要塞の中央管理AIを経由し、フォルトリア星系中に生配信されている。映像だけだと共和国側が適当にでっち上げてくる可能性もあったので、最初の邂逅の部分から通信も全て流している。その中で、ハッキリと大統領令により殲滅すると宣言してくれた馬鹿正直な指揮官がいたのは、敵ながらファインプレーと褒めるべきか。


 「一馬さん。映像から此方の潜航艦の位置が特定されるのでは?」

 「一応、2隻の潜航艦を現地に潜ませているから、適宜切り替えて攪乱する予定だよ。サウサン、そろそろ切り替えを頼む」

 「なるほど」

 「了解した」


 サウサンと共に要塞に帰投したのは全部で8隻の潜航艦だ。残り3隻の内2隻は、第6機動艦隊の追跡に充て、最後の1隻はコンラッドコロニーとガルメデアコロニーを経由して帰投する様に指示を出してある。バカのお陰で、潜航艦を要塞から送り出す手間が省けたのを有効活用した結果と言うべきだな。


 「一馬様。艦載機隊による抵抗が終わった様ですわ?」

 「後は、掃討戦だな。サウサン、敵の動きに注意してくれ。余力が出て来れば、此方の潜航艦を狙いに本腰を入れてくるだろうからな」

 「無論だ。それで無くても、折角の新鋭艦を一時没収されている身だからな……。これ以上は勘弁して欲しい」


 次世代艦であるリサベアード級の第1陣となる11隻を建造した訳だが。サウサンがゼーバイン中将の事を報告しなかった罰として、彼女に貸与するのを一時見送っている。ゆるーい要塞ではありますが、信賞必罰ですよ? まぁ、今回の騒動で没収期間は大幅に短縮になるだろうけどな。余りサウサンに対する罰にならないが、致し方ない。


 「……一言だけ言わせて頂くのならば、この様な戦いは虚しいだけですな」

 「まぁ、虚しく無い戦いっていうものの方が少ないだろうけどさ。でも、それでもこの戦いは虚しいよ」

 「香月司令官。1つだけ聞いても、宜しいですかな?」

 「勿論」

 「なぜ、管理者の提案を蹴ったのですかな?」


 何故か……。まぁ、ドクター達からしたら理由が気になるか。


 「当たり前だけど、あの手の輩がタダで動くって事は絶対に無い。そもそも、あくまで傍観者であるはずのバカが、わざわざ言い出したこと自体がおかしいんだよ」

 「良心からでは無く、何らかの狙いがあったと?」

 「あくまで俺の勘だけどね? でも、割かしアッサリと引いたから、強ち間違いでも無いと思うよ」

 「なるほど。まぁ、確かにあの手の輩の行動には必ず動機がありますな」

 「それも、大抵は性質の悪い動機がね……」


 あのバカの提案に乗ったら、引き換えにどんな要求をされるか分かったものでは無い。恐らく、今後の戦いにおいて妥協出来るギリギリのラインを見極めつつ、色々と奪ってくるだろう。そうなった場合、今後の選択肢は確実に狭まる。共和国軍人達を見殺しにする事に思うことが無い訳では無いが、それ以上の事態を避ける為だ。


 「目の前に気を取られ、未来を取りこぼしたら笑い話にはならないからね。今は、心を鬼にして非情な選択を選ぶさ」

 「あのバカの事ですの。どうせ、色々と吹っ掛けて来たに決まってますわ!」

 「否定出来ない所が、日頃の行いかしらね?」

 「そもそも、一馬が気にする必要は無いだろう。殲滅すべしとの命令を出したのは、共和国のトップだからな」

 「ほっほっほ。散々な言われ様ですな。とは言え、庇う気にはなれないのも事実。して、これからどうされますかな?」


 これからか……。まぁ、今回の事を上手く利用して対共和国戦を優位に進めるってところだろうね。それが、死んで逝った兵達への手向けになるだろう。まぁ、敵将からの手向けなんぞ嬉しくは無いだろうがさ。


 「……お痛の責任は取らせるさ。とは言え、いきなり共和国本国を責めるのは要塞の保有戦力からして不可能だ」

 「でしたら、先ずは周りからでしょうか?」

 「だね。先ずは、外堀から削るとしよう。サウサンの集めた情報から、共和国の本土防衛ラインは全部で6本ある。内訳としては、帝国方面が3本と連邦方面が3本だな」

 「駐留戦力から見て、どちらの方面も前線ラインと最終防衛ラインに戦力が集まっている。しかし、中間の防衛ラインは先の2本に比べれば駐留させている戦力は少ない。今回の3個機動艦隊もそこから抽出しているからな」


 中間の防衛ラインを軽視していると言うよりか、前線にそれだけ兵力を送っていると見るべきだろう。一方で最終防衛ラインの戦力が減るのは、国民向けに受けが悪い。本国周辺の拠点から兵力が前線へと抽出され続ければ、自国の旗色が悪いって宣伝する様なものだからな。本国防衛の重要度もあるが、パフォーマンス的に動かせないってのもあるか。それに、そもそもの理由もあるか。


 「後は、最悪でも最終防衛ラインから兵力を送り込めるってのもあるだろうな」

 「そうだな。それに、本国から離れた拠点に大規模な兵力を集めておくのは、補給の観点からも効率は悪くなる。前線ならまだしも、中間ラインともなると経由地として確保しておく程度と考えても、特に不思議ではない」

 「そうなると、狙いは中間防衛ラインか……」


 連邦方面か、帝国方面か。位置的には連邦方面の方が要塞からは近い。ただ、駐留戦力の面から見ると、今回の一件で3個機動艦隊が抜けた帝国方面の方が叩きやすいか? 後は、心理面での効果もそちらの方が高くなるだろうか。まぁ、何れにせよ此方に来るであろう3個機動艦隊を叩いてからにはなる。


 「先ずは、3個機動艦隊を迎撃する。ドクター、悪いけど要塞の移動を急いで欲しい」

 「お任せを。必要な計算は全て完了しましたゆえ、直ちに推進器の製造と取り付けに移りましょう」

 「頼む。サウサンは引き続き情報収集と星系世論への工作を頼む。徹底的に共和国を悪役(ヒール)にしてやってくれ」

 「任せろ。寝物語に語られるレベルにしてやるさ」


 やる事が決まれば、後は行動に移すのみ。ドクターには、要塞移動の為の推進器取り付けを早急に行わせる。奴らの出鼻を挫くには移動してしまうのが一番だからな。一方、サウサンには引き続き情報面での役割を継続して貰う。今回の映像で、星系世論は大きくうねりを見せるだろう。それを如何に此方側が有利になる様に持っていくかは彼女の手腕に掛かっている。共和国に対する負の反応が高まれば高まるほど、選択肢は増えるからな。


 「ソフィーは引き続き、要塞全般の管理を頼む。特に、新たな客人達からは目を離さないでくれ」

 「お任せ下さい」

 「シャンイン。ガルメデアかコンラッドを経由して、帝国および連邦にコンタクトが取れないか試してくれないか? 特に帝国を優先して頼む」

 「了解ですわ。接触する狙いは、対共和国を睨んだ一時的な共闘態勢の構築で宜しいですの?」

 「そうだ。敵の敵は都合良く利用しろって言うだろ? 帝国、連邦双方に取って悪い話では無いからな。特に、この前の会戦であの両国は裏取引をした位だ。相当の駆け引きは必要だろうけど、不可能では無いと思う」

 「ふふふっ……。実に楽しそうですの! この私にお任せですわ! 共和国に絶望を味合わせてやりますの」


 良い笑顔でそう言い切るシャンイン。まぁ、共和国相手に存分に辛辣な手腕を振るってくれ。彼らが泣く分には一向に構わないから。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに!

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