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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第3.5章:宙は燃えているか
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3.5-9:カワル宙⑨

いよいよ、問題児(!?)達が到着。さぁ、どうなることやら?

 通常の軍艦と異なり、潜航艦の艦橋はかなり狭い。私と護衛2名に加え、ヴァルドリッジ中将、ゼーバイン中将、ガバナー少将ら合計6名が入るだけで手狭となるほどの広さだ。

 要塞預かりとなった彼らを此処へと連れて来たのは、我らが寄る辺を見せるためというシンプルなもの。まぁ、通常空間へと戻る際に、ちょっとしたサプライズ(一馬談)が用意されているらしいが……。


 「そろそろ、通常空間へと出る。何かへ掴まっておけ」

 「ふむ。潜る際も思ったが、初めての経験と言うのは何かと心躍るものだな、ガバナー少将?」

 「同感です。まぁ、この様な状況下で無ければと付きますが……」

 「ようやく、このしみったれた空間ともおさらばか! いやぁ、何も無い空間ってのがこんなにも退屈とは思わなったぜ」


 潜航艦が、通常空間と空間の狭間を行き来する際に、多少の振動が発生する。感覚としては、プールで水中に飛び込む時の様なものだろうか。まぁ、慣れてしまえば何てことも無いのだがな。彼らの様に潜航艦に初めて乗艦する者達からすると、結構驚くらしい。それにしても、ゼーバイン中将だったか? 何とも面白い男だ。


 『大将達が貴軍にて不当な扱いを受けないか、俺が監視する!』


 そう言って、予定外の珍客として乗り込んできた、TF215の指揮官であるリチャード・ゼーバイン中将。短い時間で観察した限り、良くも悪くも裏表の無い将の様だ。その性格ゆえに部下には慕われるが、上からは扱い辛いと疎まれることもあるタイプだろうな。

 それでも、中将まで昇進してきている以上、それなりの結果を出してはいるのだろう。

 一馬には、予定人数が増える事に付いて説明していない。なに、サプライズと言うヤツだ。部屋が足りないかもしれんが、暫くは軍事ブロックにある監獄エリアに放り込んでおけば良い。その間に、一馬に頼んで生活エリアの拡張をして貰えば良いさ。……まさか、ポイント使い切ってないだろうな?


 「……まぁ、その時はその時か」

 「何か言われたかな?」

 「いや、独り言だヴァルドリッジ中将。……そら、出るぞ」

 「おっと!?」


 空間の狭間と通常空間とを隔てる薄い空間の膜にぶつかり、それを突き抜けるまでの僅かな間、艦橋を含めた船体全体が前後は勿論、上下左右へと小刻みに揺れる。私達からすれば、もはや慣れた感覚と言って良いが、彼らからすれば1度や2度では慣れぬ事だろう。とは言え、慣れろとしか言いようがないがな。


 「なぁっ!?」

 「ほぉ……これは、また」

 「……本国での観閲式を思い出しますな?」

 「ヤベぇ数だな。大将の話聞いて戻って良かったぜ」


 要塞の前面に展開した大艦隊。恐らく、追加された戦力の大半を展開させているのでは無いだろうか? ちょっとした出迎えと言うから、精々が自治国家宙域に展開している艦隊程度だと予想していたのだが。

 ……一馬ぁ! 私だけを驚かせてどうする!? 私だけ、1人馬鹿みたいに反応してしまっただろうに……。要塞に帰ったら、絞めてやる。いや、追加の潜航艦でも良いな。


 「……全く。此処までやる必要ないだろうに」

 「彼には、中々人を楽しませるセンスがある様だな」

 「センスと言うか、ただ単に加減を間違えているだけだろうさ」

 「……彼は君にとっての上官なのだろう? 良いのかね、その様な事を言っても?」

 「一馬なら、笑い飛ばして終わるさ。……あの男は、その辺の常識で測れる器じゃない」


 そう返すと、黙り込んで何やら考え込むヴァルドリッジ中将。まぁ、共和国はトップがゴミ屑だからな。何か、私と一馬の関係に思う事があるのかもしれん。ただ、敢えてアドバイスするならば、一馬と私達との関係は普通の上官と部下という形からはかけ離れたものだ。真似しようとして上手くいく様な代物では無い。そもそも、一馬は私達を部下と言う形での扱いすらしていないしな。


 「さて、盛大な歓迎を受けつつ、我らが拠点に到着だ。……ようこそ、新たなる時代が始まる地へ」

 「……新たなる時代とは?」

 「言葉の通りだ、ガバナー少将。此処から世界は変わるのさ」

 「世界が変わるねぇ? 俺にはバカでかい岩の塊にしか見えんが……」

 「だが、その岩の塊に翻弄されている勢力が何処かにあるだろ?」

 「グッ……! 随分とハッキリと言うじゃねえか」


 事実だからな。無論、あくまで此処まで上手くいっているだけでしかないがな。此処から先がどうなるかなど、誰にも分からない。まぁ、あのバカが勘とは言え一馬を選んだ以上、それなりの結果は出るのだろうがな。

 

 「間も無く入港するが、此処から先は機密保持の観点から外の様子はお預けだ」

 「ふむ、それは残念だな。我が軍の要塞と見比べたかったのだが、仕方があるまい」

 「そもそも、此処まで行動が制限されていないのが異常ですからな」

 「おいおい、まだ分からねぇだろ? 要塞に放り込まれたら状況変わるかもしれないぜ?」


 まぁ、その心配は杞憂に終わるだろうさ。先ほども言ったが、アイツを自分達の常識で測らない方が良い。元の世界で一体なにをやっていたのかは知らんが、実に興味深い男だ。まぁ、絞めるのには変わらんがな!




 「お帰り、サウサン。それから、ようこそ……アレ? ひー、ふー、みー?」

 「あぁ、ゼーバイン中将に是非にと言われてしまってな? 連れて来た」

 「…はぁ。そう言った事は先に報告してくれないかな? こっちには受け入れ準備があるんだよ?」

 「ハハハッ! 一馬、笑って許せ!」

 「……新型艦。当面はお預けな?」

 「ガハッ!? ……それは、あんまりだ!」


 派手な出迎えで少しは驚かせたかなと思い、サウサン達の感想を楽しみに軍港まで来たオッサン達。そこで、衝撃の現場に出くわした訳だ。ヴァルドリッジ中将とガバナー少将の2人は良い。だが、そこに予定外の人物の姿があった。TF215のゼーバイン中将だ。

 どうやら、サウサンが自己判断で連れて来たらしい。まぁ、その判断自体を責めるつもりは無い。そもそも、そう言った独自の判断を臨機応変にその場で出来るのが彼女達の強みだからね。1から10までオッサンに確認を取る必要など、そもそも最初から無いのですよ。良いと思えばガンガン進んで貰って全然OKです。逆に、危ないと思ったら此方の指示がGOだとしても、止まるなり戻るなりして貰っても問題なし。


 大事なのは、その後の報告です。良く、新社会人に報連相は大事って言うだろ? 早く正確な情報が上がれば、受けた方は対応策として打てる手が増えるんだよね。後1日あるのと、後1時間しか無いのでは全然違うだろ? サウサンも先に報告してくれていれば、彼らが滞在する場所の準備も出来たんだよ。まぁ、取り合えずは軍事ブロックの監房エリアで時間を稼ごうか。サウサンは、そこで反省してなさい。


 「では、改め。ランドロッサ要塞司令官、香月一馬です。皆さんの来訪を歓迎します」




 フォルトリア星系歴524年11月7日。ランドロッサ要塞に、3人の共和国軍人が足を踏み入れた。果たして、彼らは彼の地で何を見、何を思い、何を感じるのか。彼らが導き出す答えとは……。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに!

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