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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第3章:夜明け
129/336

3-29:5S(清掃、清潔、整理、整頓、躾)

本話を持ちまして、第3章『夜明け』は完結となります。

続けて、第3.5章『宙は燃えているか』(20話構成)、その後、第4章『マーク・トゥウェイン要塞攻略戦(仮)』が開始されます。

 「さてと、これからの方針を整理しようか。一先ず、前線での武装解除は順調って事で良いかな、サウサン?」

 『あぁ。五月蠅い連中が先の戦闘で皆揃ってお宙へと還ったおかげが、粛々と事は進んでいるぞ』

 「それは何より。余計な戦闘でも起こるかと思ったけれど、順調にいくなら文句なしだ」


 現在、フォラフ自治国家宙域では共和国軍第6機動艦隊に対する武装解除が行われていた。先のヴァルドリッジ中将との会談通り、戦闘艦の乗組員達は非戦闘艦(補給艦や輸送艦等)へと移乗している。放棄された戦闘艦は後ほど、バカが資源化して要塞へと届けてくれる事になっている。


 一方で、その武装解除を監視しているのは、先の戦闘で活躍した『スレイプニル』率いる艦隊だ。戦闘で沈んだ艦を除いた全艦が、修復を終え引き続き駐留艦隊として監視に勤しんでいる。それに加え、サウサンの乗艦している潜航艦と、論功行賞のおりに提供された潜航艦10隻が彼女の指揮下の艦隊として現場に直接投入された。

 結局、提供された戦力の内で前線に投入したのは潜航艦だけだ。他の艦は要塞に配備となった。まぁ、前線に配備してしまうと、後で要塞に戻す時に膨大な推進剤を消費するって言う現実的な問題がね……。


 「今後、第215任務部隊もその宙域へと合流する。大した損害を被っていない部隊なだけに、何らかの行動に出る可能性も否めない。念のため、警戒だけはしてくれ。まぁ、万が一の場合はそこにいる艦隊で丁重に相手をする訳だが……」

 『恐らく問題ないと思うぞ? あの宙域でドンパチ始めれば、非戦闘艦が多数巻き添えになるのは必至。それが分からぬ敵将ではあるまい』

 「まぁ、そうだな。ちなみに、地上部隊の動きは?」


 昨夜の内に、地上の統治を担う管理局のトップであるトーラス・シュナイザー元外務大臣に対し、ヴァルドリッジ中将は機動艦隊の敗北を伝えていた。その中で、地上部隊の宙への撤退が進言されていた。


 『統治局内の強硬派トップが、例の策で一掃されたお陰で比較的スムーズに事態は進んでいる。無論、抵抗する者が皆無という訳では無い上に、機動艦隊の敗北を知ったフォラフ解放戦線側が勢い付いたのが逆効果になりかねんな』

 「その辺の事前協議を疎かにしてしまった事は、今後の課題だな」


 後から言っても仕方がない事だが、フォラフ解放戦線側と事前協議がしっかりと出来ていれば、もう少し楽に事態は進んだだろう。今後は、その辺に関してサウサンとシャンインの力を借りていかないと。


 「武装解除後、サウサンはヴァルドリッジ中将達を回収して要塞へと戻ってくれ。艦隊は共和国本国への警戒として、暫くそちらに張り付かせるから」

 『了解した。それと、共和国について面白い情報が入ったぞ?』

 「へぇ? 具体的には?」

 『共和国内の和平派に対する締め付けが、かなり厳しくなっている様でな。国外へと脱出することを考えている者達すらいる様だぞ?』


 以前、クロシバから共和国上層部は3勢力に分かれているって話しがあった事を思い出す。反帝国派、強硬派、和平派だったかな。その中で、クロシバは和平派の相談役を務める人物の息子だった。状況から考えて、そろそろ彼を通して和平派と接触を図るべきか?


 「クロシバを通して、何人か抱き込むのも手だな。とは言え、要塞には招きたくはないけどね」

 『同感だ。ただ、引き入れる人選は慎重にした方が良いだろう。先の帝国との一戦で大敗したことで、共和国内は荒れに荒れている。今回の和平派への締め付けもその一環だな』

 「理由はどうあれ、下手すると和平派から寝返る人間も出てくるか……。そんな人間と渡りを付けたらアウトだな」

 『和平派が大敗の原因だと主張する者達すらいるからな。自身を含めた身の安全の為に、派閥を鞍替えする者もいるだろう。表立って行動に移す者はまだ良い。問題は裏で動く者達だ』


 表向きは和平派として活動しつつ、実際は他の派閥に片足突っ込んでますとか厄介だわな。その辺をきっちり調査してからでないと、接触は危険と。まぁ、それに加えてもう1つ調査しておかないとな。


 「サウサン。クロシバと、その父親について改めて調査を頼む」

 『了解した。人員も増えるし、共和国本国へ何人か送り込むとしよう。後々、何れかと接触するにしても現地工作員は必要だからな』

 「頼むよ」


 敢えて、今日までクロシバは泳がせてきた。最低限の身辺調査は実施したが、深くまでは探らせていない。ガルメデアコロニー攻防戦のおり、ソフィー達が彼を意図的に生き残らせた疑惑がある以上、恐らくは白だと思うが、あの時から状況は変化しているからな。改めて、このタイミングで調べてみるのが良いと思う。


 「サウサンには引き続き、情報収集を頼むとしてだ……」

 「何か気掛かりな事でも?」

 「ん~。そろそろ足場を本格的に固めたいなと思ってね?」

 「足場ですの?」

 「そう。ランドロッサ要塞からフォラフ自治国家までのルート上を、後腐れないように綺麗に掃除しようかなと思ってさ?」


 ランドロッサ要塞からフォラフ自治国家までの最短経路である直線ルートは特に問題無いが、ガルメデアコロニー宙域・コンラッドコロニー宙域を経由するルートには少々障害たり得る者達がいる。


 「ガルメデアのスキンヘッド紳士とそのお仲間達。コンラッドコロニー宙域へ蔓延る宙賊。これらをこの際だから、掃除してスッキリしようと思ってね」

 「……なるほど。でしたら、提案しても宜しいでしょうか?」

 「勿論。皆の意見をぜひ聞きたいからね」


 トップダウンで決める事も時には重要だが、往々にしてそれらの形式で決定された事柄ってのは歪みや軋みを生むものだ。何でも部下に相談しろとは言わないが、少なくとも多様な意見を広く集める事の意義は大いにある。


 「一馬さんは、シャラナ・アートマンと言う女性を覚えていますか?」

 「……シャラナ・アートマン?」


 はて、何処かで会った気はするが。ガルメデアかコンラッド、或いは宙賊か教団か…。


 「一馬様。彼女は、ガルメデアコロニーの生産部門を統括している女性ですわ」

 「生産部門……。あぁ、あのオバちゃんか! あの時の話は無かった事にしてたから、完全に忘れてたわ。で、その女性がどうかした?」

 「彼女を、サントス氏の後釜にしては如何かと思いまして」

 「そう言えば、スキンヘッド紳士に黙って医薬品や医療機器を輸出して欲しいって言ってたな。どうせ、スキンヘッド紳士を派閥毎まとめて掃除するのならば、後釜は元々距離のあった人間の方が良いか」


 そういえば、あの時はコロニー内での子供の死亡率が高い事を気にしていたっけ。スキンヘッド紳士との関係上、無理だと一蹴したが今なら動けなくはないか。


 「彼女は、元共和国政府の人間です。権力闘争に巻き込まれた結果、あらぬ濡れ衣を着せられてあのコロニーへと送られました」

 「少なくとも、今の共和国政府に味方する事は無いと?」

 「ゼロとは言いませんが、限りなく低いかと。既に流刑に処されてから10年近くが経過しているとは言え、彼女の知己の多くは現在でも健在では無いかと推察されます」

 「……」


 元政府の人間ね。相応に顔は広かっただろう。まぁ、権力闘争で追い落とされて流刑に処された以上、巻き添えを喰うことを恐れ離れていった人間の方が多いだろうけどな。逆に言えば、それでも残っている連中はそれなりに使えるか?


 「彼女が話に乗るか?」

 「彼女の悩みの種を取り除ければ、高いと思います」


 悩みの種、ね。スキンヘッド紳士か……。やれやれ、次回はコロニー内での対人戦か?

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] あのおばちゃん、いい味のキャラでした。 再登場ならば大歓迎します。
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