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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第3章:夜明け
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3-27:戦争は終結後が忙しい③

論功行賞は終わり。

 「では、どちらを選んでも貰えた共通項賞の発表です! パフー! パフー!」

 「……」

 「君さ、呼吸するかの如く銃口を額に押し付けるの止めようよ!? 何時の間に、そんな技術を身に着けたのかな!?」

 「……さてな?」

 「こわっ! 君、本当に何者?」


 何者って言われてもな。34歳のオッサンです。いや、偶にはお兄さんって強気に主張してみるのもありかな? でも、30超えたら色々と大変なのよ。目・首・肩・腰・その他諸々とね。なので、今日もオッサンで逝きます。


 「まぁ、良いか。で、共通項賞だけど資源とポイントだよ」

 「定番と言えば、定番か」

 「金属200万tに非金属70万t、推進剤500万ℓに弾薬50万tを提供しよう。ぶっちゃけ、推進剤500万ℓって多い様に思えるかもしれないけど、6,000隻の艦艇が動いたら一瞬で溶ける量だから、気を付けてね?」

 「だろうな……」

 「それと、鹵獲する共和国艦は資源化した上で君にプレゼントしようか?」

 「そうだな。それで頼む」

 「りょうかーい」


 最も積載推進剤が少ない艦種は駆逐艦であり、その量は800ℓ。仮定として駆逐艦が6,000隻あったとしたら、補給の度に480万ℓが必要になる計算だ。これが巡洋艦や戦艦になると、必要量は桁が上がる。バカが言う様に、500万ℓは一瞬で溶ける量でしかない。推進剤生産プラントも強化必須か……。貰えるポイントに期待するしかないな……。

 それから、今後は『トロイの木馬』の様な策は取れなくなる。鹵獲した共和国艦はバカの手で資源に生まれ変わるのが一番良いだろう。それが、ウチの戦力に繋がるからな。


 「最後のシステムポイントだけど……、今後の君に期待して大台となる100ポイントをプレゼントしよう。君がこれをどう使うか楽しみにしているよ?」

 「……もう一声欲しいな」

 「へぇ? 上乗せしろと?」

 「言うのは自由だろ?」

 「聞かないのも自由だよ?」

 「当然」


 ダメで元々、要求が通ったらめっけもんだ。ならば、言わないと言う選択肢は無いだろう。少なくとも今後この様な形で会う事があるかも分らんしな? それに……。


 「要求を呑むなら、お前の後ろで青筋浮かべてるソフィー達を説得してやるぞ?」

 「えっ?」

 「「……覚悟は良いですか(の)?」」

 「あ、アハハハッ……」


 ソフィーとシャンインがメッチャ良い笑顔でキレてる。何処で身体の自由を取り戻したか迄は不明だが、顔面に数発は覚悟した方が良いかもな、バカ? ドクターはさっさと部屋の隅に避難した様だ。オッサンとしても直ぐに避難したい所です。さて、最後の行賞を交渉するとしよう。


 「200でどうだ?」

 「吹っ掛けるね!? 120!」

 「190だな」

 「……150」

 「あぁ、何だか俺も殴りたくなって来たな?」


 ジリジリと距離を詰めるソフィー達をニヤニヤと眺めながら、バカを煽る。さて、どうする? もう一声いるんじゃないか? そもそも、ポイントを追加した所でお前の懐が痛む訳じゃないだろうが。


 「175だ! これ以上は無理だ!」

 「切り上げで180な?」

 「鬼か君は!?」

 「返答は?」


 此処が勝負の決め手だ。さぁ、良い声で鳴け! じゃないと、ソフィー達が暴れるぞ?


 「……ぐっ。わ、分かった180で手を打つ。だから、頼む!」

 「ソフィー、シャンイン。もう良いぞ?」

 「了解です(の)」

 「えっ?」

 「悪いな?」


 いやはや、良い顔するじゃないか。知っているか、バカ。アイコンタクトってのが、この世には有るんだぜ? 何だかんだ、ソフィー達との付き合いもそれなりになるからな。この程度の腹芸を熟せる位には互いの事を理解しているさ。ハイタッチを交わすオッサン達を後目に、茫然自失といった様相を見えるバカ。全部、演技でしたってね? 中々の策士じゃね?


 「ハハハッ……。まさか、僕が嵌められるとはね? 彼女達と良い関係を築けている様で、何よりだ」

 「お褒め頂き、光栄の極み。だが、キッチリと180ポイントは頼むぜ?」

 「勿論、形はどうあれ一度口にした以上は撤回などしないさ」


 よし、言質は取ったな。これで、貴重なポイントが手に入った。戦力の強化に始まり、修理、母港強化、新生産プラント、プラント強化、ドック強化、資源、ポイント。どれも、今後の活動を支える貴重なものばかり。


 「さて、随分と長い時間を貰ってしまったね。そろそろお暇するとしよう」

 「次は、普通に来い。殴られずに済むから」

 「えっ? アレは、そういう演技でしょ?」

 「はて? 俺がいつ演技だと言った?」

 「……えっ?」


 確かに、ソフィー達とアイコンタクトをしてバカを嵌めたのは事実。でも、彼女達が怒っていない訳では無いし、何より許したなど一言も口にしていない。それはそれ、これはこれってヤツだな。まぁ、これに懲りたら、次は普通に来い。室内に響くバカの悲鳴をバックミュージックに、オッサンはドクターと部屋の隅で遅めの昼食兼早めの夕食と相成った。南無、管理者(バカ)




 『第6機動艦隊の武装解除は順調に進んでいる。終わり次第、要塞まで真っ直ぐ戻るから、待っていろ一馬』

 「お疲れさん。宙域の様子は?」

 『特に変わった事は無いぞ。抵抗する素振りも見えないしな』

 「そうか。まぁ、サウサンなら平気だとは思うが油断はするなよ?」

 『ふんっ。言われるまでも無い事だ。キッチリと最後まで見届けるさ。荷物もしっかり回収して届けてやるからな』

 「了解だ。定時報告は絶やさずに頼むぞ。後は何かあれば直ぐにくれ」

 『了解した』


 第6機動艦隊の戦闘艦に配属されていた乗組員達の移乗も順調に進んでいる様だ。コンラッドコロニー宙域から要塞方面へと向かっていた第215任務部隊も、フォラフ自治国家宙域へと帰投を始めた事が確認出来ている。これらの情報はTF215の追撃に当たっていたダミーバルーン艦隊、正確には生き残っていた改アスローン級から得られた。流石にダミーバルーン艦は全滅した様だ。まぁ、妥当な結果だろう。

 しかし、せっかく準備した試製500㎜・750㎜対艦砲の活躍を見る事が出来なかったのは惜しいな。まぁ、機会はこの先もあるだろうから、今は余計な戦闘を回避出来た事を素直に喜ぶとしようか。


 「さてと、今日は朝からずっと働き詰めだ。あのバカのお陰で色々と解決したから、ゆっくりと休むとしようか?」

 「そうですね。残りの残務は明日でも良いかと」

 「ですわ。ゆっくりと過ごすべきですの!」

 「賛成ですな。此処しばらくは多忙でしたから、少しは骨休めといきたいものですな」

 「だな。サウサンには悪いが、今日はもう終わりだ! 戦闘AI。済まないが、共和国の撤退の監視を引き続き頼む」

 『指令受託。香月司令官、戦勝おめでとうございます』


 戦闘AIのその言葉に、思わず二の句が継げず言葉に詰まる。AIから、その様な言葉が返ってくるとは思ってもいなかったってのもあるが、漸く戦勝した事を実感出来たからだろうな。

 

 「勝ったんだな。俺達は……」

 「勝ちました」

 「勝利ですわ」

 「紛れもなく、勝利ですな」

 『勝利です』


 勝利か……。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに!

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