3-26:戦争は終結後が忙しい②
貴方ならどちらを選びますか?
「さて、早速だけど今回は特別ルールで行こうと思っているよ。その為に態々来たとも言える」
「……」
「これまでは、此方が決めた論功行賞を一方的に与えていただけだろ? そこで、今回は君に選んで貰おうと思ってね。まぁ、そうは言っても選択する候補内容を決めるのは僕だけどね」
「選択する権利を与えるって事か」
「そう。それならば、少しは納得出来るんじゃないかと思ってね?」
ただ、与えられるだけとは異なり、自身が選んだと言う事で少しは違うと言う事か。まぁ、それほどの差にはならないとも思うが、バカの配慮に感謝だけするとしよう。
「……本当に正直だよね。まぁ、良いや。君に候補を2つ提示するよ。好きな方を選んでね?」
「……」
「では、先ずは1つ目の方から。最初は定番の戦力強化だ。今回は何と100倍の戦力をプレゼントしよう。今回の一連の戦闘で失われた艦艇を除いた保有戦力605隻が基準となるから、実に61,105隻もの艦艇が君の指揮下に入る訳だ」
「6万か……」
「君が今戦っている共和国の機動艦隊は2,500隻から構成されているだろ? 艦種の違い等は無視するけど、24個機動艦隊に相当する戦力になるね。今回の敵くらいならば、文字通り鎧袖一触だろうさ」
確かに、1個機動艦隊に対し24倍の戦力で掛かれば一瞬だろう。そもそも艦毎の性能差があるからな。それだけの戦力が得られれば、今後の戦闘もかなり楽にはなるかもしれない。
「次は戦力の強化に加え、今回の戦闘で傷ついた艦艇を新造艦同様に直して上げるよ。しかも、資源の消費は無しだ。話は少し脱線するけど、君が一番気にしていたのは、修理用の資源が全く足りない事だろ?」
「まぁな……」
「凡その概算を君も出しているとは思うけど、今回の戦闘で損傷した艦を修理するのに必要な資源の量は膨大だ。金属は57万t弱、非金属は11万t弱。一方で、君が今保有している資源量では到底足りないだろう。悲しいかな、金属は6万5千t強で非金属は6万t弱しかない。自給出来るのは推進剤と弾薬だけだね」
「一々言われなくても、俺が一番理解しているがな」
そう、限界まで建造を進めた結果、修理に回せる資源がほぼ残っていない。まぁ、承知の上で注ぎ込んだから仕方が無いが。第6機動艦隊との戦闘を前に、余力を残して戦える自信は無かった。拠点艦に前もって積んであった資源を使って、前線で修理出来る艦艇数はごく僅か。残りは、要塞に戻ってきてもそのまま暫く放置するしかないだろう。だからこそ、資源の消費無しに修理が行える事のメリットは、とてもデカい。
「それから、最後に艦艇を係留する母港も必要数まで無償で拡張して上げるよ。大量の艦艇を獲得しても、留置しておく場所が無いと困るだろうからね? さて、この3個をセットにした物が1つ目の選択肢の内容だよ」
「そうか。で、もう1つは?」
「その前に、君には選んで貰うよ。1つ目の選択肢を選ぶか破棄するかだ」
「……放棄?」
「そう。2つの選択肢から選べるとは言ったけど、じっくり比較して選べるとは言って無いからね?」
「成る程」
コイツ、本当に良い性格してるわ。まぁ、それでも想定内ではあるか……。
「さて、どうする? 2つ目の選択肢が1つ目より必ずしも良いとは限らないよ? 1度、破棄した選択は後から選ぶことは当然ながら出来ないからね?」
「破棄する」
「……へぇ? 即決しちゃって良いのかい? じっくりと考えても良いんだよ?」
「破棄だ」
「分かったよ。じゃ、1つ目の選択は破棄された。では、2つ目の選択肢の内容を説明しよう」
このバカの性格は中々読みにくいが、恐らく1つ目の方が行賞としては上だった可能性が高いと思う。最初に示された条件をそのまま選ぶってのは中々にリスキーだ。特に今回の様に選択肢が2つあると言われては、1つ目で即決するのはかなり難しいだろう。
なら2つ目は何か? 可能性が高いのは、1つ目に比べてトータルと言う意味では減るが、バランス面で優れていると言った所だろうか。
「さっきも言ったけどさ、君の勘が怖いんだけどね?」
「当たってるのかよ……」
「いやさ、もう少し自重してくれると僕としては嬉しいよ。まぁ、良いや。さっさと説明しちゃうよ」
「諦めるの早いな?」
「では、気を切り替えてと。先ずは先ほどと同様に戦力の強化だけど、10倍の戦力を提供しよう。合計で6,655隻の艦艇を君は指揮下にする訳だ。さて、先ほどと比べて大幅に獲得出来る戦力が減った訳だが……。此処で君にチャンスを上げよう。今ならば、1つ目の選択肢に戻れる機会を上げる。どうする?」
「いらん」
今の情報を聞いただけで1つ目に戻るならば、最初から2つ目に進まねえよ。進んだ以上、キッチリと最後まで聞かないとな。如何にも戻りそうになる情報を最初に持ってくる時点で、本当にこのバカは性格が悪い。
「では、続いて先ほどと同様に、艦の修理と母港の拡張を無償で行ってあげる。どうする、1つ目に戻るかい? これが最後のチャンスだよ?」
「さっさと、先を話せ」
「君さ、様式美ってのを無視するのが大好きでしょ? まぁ、時間も有限だからさっさと進めるか」
「……」
「此処からは1つ目との大きな違いだね。戦力差を埋める分とでも言おうか。先ず1つ目は、金属及び非金属の生産プラントを要塞に設置出来る様になる。これまでは僕からの月2回の支給か解体でしか得られなかった金属類を、要塞で生産出来る様になるのは大きいと思うよ」
「正直、漸くって感じだな」
推進剤に弾薬と、生産プラントが増えた以上、金属と非金属も何時かは来ると思っていたが予定より早かとみるべきか。今後の事を考えるならば、自給出来るメリットはデカい。ポイント貯めて、ガンガン強化していきたい所だが……。
「続いて、今回の事で分かったと思うけど、今のプラントによる生産量じゃ今後の艦隊を維持するのは不可能だろ? だから、1日辺りの生産量を現行の10倍に増やして上げるよ。えっと、推進剤が日産4万ℓから40万ℓへ、弾薬が日産5千tから5万tへ増えるね。それから、金属と非金属の生産プラントにも適用されるから有効活用してくれると嬉しいね」
「正直、助かる。どう考えても現状のままでは無理だからな」
「だろ? さて、ドンドン行こう。続いて建造ドックに修理ドックの拡張だね。現状は16隻ずつ可能となっているけど、これを倍の32隻まで建造可能にしてあげる。それに加えて、建造に掛かる時間をこれまでの半分にしてあげようじゃないか。建造ドックの拡張に加えて、建造時間が半減する事で中々の効果になると思うよ?」
確かに、効果はかなり大きい。実質、建造ドックが更に倍になった様なものだ。今後の戦いを見据えると、同時建造数の強化は必須。それと修理ドックの拡張は、自力でも進めないとな。流石に今回の状況から考えると、32隻同時でも最早足りていないからな。
「あっ、戦力強化で言い忘れてた。1つ目と違って此方の場合は配備される艦艇を最初だけ君の望む場所に展開させてあげるから。要塞でも良いし、フォラフ自治国家宙域でも良い。勿論、それ以外の場所でも良いよ? ただし、あくまで君が艦隊を派遣した事のある場所に限定するけどね」
「それは、全部か或いは一部なのか?」
「それも君の好きにして良いよ? 大盤振る舞いだろう?」
「はっ! 好きに、ほざいてろ」
とは言うものの、かなり魅力的な提案だな。共和国本国がどの様に動くかは見通せないが、ある程度の戦力をフォラフ自治国家宙域に張り付けて置きたかったから、正に渡りに船と言うべきだろう。
「さて、2つ目は此処までだよ。1つ目に比べてどうだろうか? 見送っただけの価値があったかい?」
「どうだろうな?」
「まぁ、結局のところ行賞を活かすも殺すも君次第だからね。今後の活躍に期待しているよ?」
「程々にやるさ」
「それで良いよ。さて、次回は共通項賞の発表だよ!」
いきなりメタ発言するな!
お読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに!