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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第3章:夜明け
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3-25:戦争は終結後が忙しい①

バカ登場。


こんな時だからこそ、平常運転。

 「サウサンは、ヴァルドリッジ中将達を連れて要塞へ戻ってきてくれ。念のため、移乗の際には護衛を付けるから」

 『了解した』

 「シャンインは、ナターシャ嬢とアイザフ大佐に状況説明を頼む。地上部隊が撤退を開始すれば、彼女達を通して自治政府と交渉に入れるだろうからね」

 「了解ですの」

 「ソフィーは、要塞全体の管理をメインに頼むよ」

 「了解しました」

 「ドクターは、俺と一緒に共和国艦隊の監視をしつつ補給やら修理やら、損害報告やらを頼む」

 「お任せ下され」


 矢継ぎ早にソフィー達へと指示を出しつつ、自分自身も動く。何て言うか、戦争は終結してからが忙しいわな。今までよりも規模が大きいし、今後の事を考えるといい加減にも出来ない。何より、共和国本国が動く可能性もある以上、のんびり時間を掛けてとはいかないからな。


 「さて、最終的な完全損失は……75隻か。あれだけの艦隊相手に、これだけで済んだのは奇跡かもな」

 「そうですな。100隻を優に上回るかと思っておりましたからな。とは言え、撃沈までは行かなくとも大破レベルまで被害を被った艦も少なくはありませんぞ。実質それらの艦も戦線離脱となりますから、継戦出来る艦は更に少なくなりますな」

 「あれだけの規模の艦隊と正面からやりあったからな。被害は出たけれども、今後に活かせる良い経験を積めたって事で良いとしよう」


 継戦不可能の大破レベルが50隻程、継戦は出来るが長時間は厳しいであろう中破レベルが120隻程。小破レベルが残りって感じだな。小破以下の艦は、そのまま周囲の警戒任務に就かせるとして、大破レベルの艦から拠点艦で修理したいが、修理用の金属資源がどう考えても足りないな。弾薬と推進剤の補給ならどうにかなりそうなんだが……。


 「ドクター」

 「……」

 「ドクター?」

 「……」

 「っ!?」


 咄嗟に胸元から護身用の拳銃を取り出し構える。背後に意識を配りつつ、ゆっくりと壁際に向けて後退していく。銃口は正面に向けたまま左右に視線をはしらせるが、特に異変は見つけられない。でも、何かが起こったのは間違い無いだろう。ドクターも、ソフィーも、シャンインも、オッサン以外の全員がその場でピクリとも動かない(・・・・)状況など、異常としか言えないからな。


 「コングラチュレーっうわ!? いきなり撃つかな!?」

 「ちっ……」

 「しかも、舌打ちまで!?」


 それまで何も存在しなかった筈の場所に、突如出現した存在。酷くあやふやな存在だ。輪郭が見える様で、多重にぶれている様にも見える。人の形をしている様に見えて、そうでも無い様にも見える。定まっている様で、定まっていない様にも見える。とにかく、全てがおかしい存在。


 試しにと1発撃ってみたら、空中で弾丸が停止し最後は床へと落下した。思わず舌打ちが出たのは仕方が無い事だろう。次は別の角度から狙ってみるか……。


 「いやいやいや! 普通、初対面でいきなり発砲しないからね!?」

 「普通とは?」

 「えっ? そこからなの?」

 「お前の普通と、俺の普通が一緒だと何故分かる?」

 「えぇ……。まぁ、良いか。不審者じゃなくて、君も良く知っている存在だからね?」

 「そうか。なら……」


 再び発砲。今度は2発連続で撃ってみるが、結果は先ほどと同じだった。最低でも正面からは突破は難しい様だ。いや、そもそも此方側が正面かどうか不明だな。残弾は残り9発か。次は何処を狙うべきか。


 「お願いだから、話を聞いて下さい」

 「それが、人にものを頼む態度か?」

 「……」

 「……はぁ。分かったよ、これで良いかい?」

 「最初から、そうしておけ」

 「君、ソフィー達に比べて僕に対して随分と辛辣だよね!?」


 うるせえよ、管理者(バカ)。紛らわしい事をするからだろうが。しかし、考えたら面と向かってこのバカと会うのは初めてか? 男性とも女性とも取れる容姿。いや、そもそも性別的な区別など無いのかもな。特徴的であり、まるで特徴の無い人型のバカ。姿形は、直ぐに記憶から消去しよう。


 「そうだよ? だから、初めましてだコウヅキカズマ君。最近、君達からナチュラルにバカと呼ばれている管理者だ」

 「そうか。それで、そのバカが何か用か?」

 「本っ当に、ナチュラルにバカ呼びだよね?」

 「バカを他にどう呼べと?」

 「敬意と畏怖を込めて、管理者様と呼んで……。冗談だから、銃口を突き付けるの止めてくれるかな?」


 銃口を突き付けるだけならば、特に妨害は無い様だ。直接殴るしかないか? いや、このロクデナシを最初に殴るのは、鬱憤が溜まっているであろうソフィー達に譲るべきだな。それに、彼女達ならばこの不思議な障壁を無効化する手法に心当たりがあるかもしれん。


 「いや、殴る事を決定事項みたいに話を進めるのは、僕としては止めて欲しいかな?」

 「うるせぇ。さっさと、本題に入れ」

 「あっ、はい。……おかしいな、此処まで尊厳を得られないとか、不思議過ぎる」

 「……」


 聞こえていない心算なのか、敢えて聞かせているのかは知らんが、尊厳を得られる行動なぞ何1つとしてやっていないだろうが。尊厳ってのは、行動して初めて得られるものなんだよ。口先だけでそれらを得られるのは、巧妙な詐欺(ペテン)師位だろう。


 「さて、そろそろ真面目な話をしようか? そう何度も銃口を突き付けられても困るしね」

 「原因は全てお前だけどな?」

 「先ずは、見事な勝利を収めた君に心からの賛辞を贈るよ。コングラチュレーション!」

 「……」

 「あれ? 嬉しくないのかい?」

 「喜べる状況じゃ、無いんでね?」


 現状を考えると本当に頭が痛い。正直、このバカの能天気さが羨ましいとすら思う程にだ。だが、このバカがこのタイミングで現れた事、それに恐らく何らかの解決策があると思う。非情に不愉快だが、今回はこのバカのお陰で窮地を脱する事になるな。


 「いやはや、君の勘は末恐ろしいよ。僕も勘に関しては右に出る者は居ないとすら自負しているのだけれどもね? でも、君は僕すらお世辞抜きに超えそうだよ。いや、本当に末恐ろしいよ」

 「世辞は良い。出すもん出せ」

 「……君は本当にブレないね? 僕の機嫌を損ねたら、得られる物も得られなくなるとは思わないのかい?」


 そう言って、此方をニヤニヤと笑みを浮かべながら見つめてくるバカ。気持ち悪いから、死んでくれないか? そもそも、管理者に対して死と言う概念があるのかは知らんがな。でも、頼むから1度は死んでくれ。


 「その時は、その時だろ? 少なくとも、お前に媚を売るなどごめん被るさ」

 「良いね! 君は、実に良い! その軸が決してブレ無い所とか、凄く好きだよ。って、また脱線してしまったね。では、本題に入ろう。今回、僕が来たのは君の上げた戦功に対する論功行賞の為さ」

 「今までなら、落ち着いた頃にメールだった筈だが?」

 「そうだね。でもさ、正直な所。後じゃ、遅いだろ?」


 ……そうだな。残念ながら、後では遅い。今回の戦闘に必勝を賭け無理に無理を重ねた結果が、今この時になってモロに降り掛かっている。どうせ、このバカはそれを見越して姿を現したのだろう。

 

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに!

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