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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第3章:夜明け
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3-24:対第6機動艦隊戦⑮

漸く、戦闘が集結。後は戦後処理だね。

それにしても、初期と性格が変わり過ぎた中将が1人。どうしてこうなった?

 「戦闘を継続していた艦は、今ので最後ですね」

 「了解。全隊、周辺警戒を厳に。戦闘AI、戦艦『フォートスティール』に通信を繋いでくれ」

 『指令受託。通信を繋ぎます』


 元々少なかった敵艦が、更に減った結果。大した時間も掛からず、継戦意思を示していた敵艦を全て片付けられた。最後は、正直言ってしまうと虐めかって位に酷いものだった。1隻の艦を1個戦隊なり1個水雷戦隊が滅多撃ちにするのだ。これが有人艦だったら多少の手加減はあったのかもしれないが、生憎とAI運用の艦にその辺の機微は無い。命令通りキッチリと止めをさして仕留めていた。


 『……終わった様だな』

 「えぇ。其方からしたら、決して気分の良いものではないでしょうがね?」

 『まぁ、手を叩いて喜べるもので無いのは確かだな。だが、あのまま続けていれば、救えた命も失われていただろう』

 「……そうですね。では、時間も有限ですので今後の話し合いといきましょうか?」

 『了解した。此方としては、北星条約に基づく扱いを貴官に求めたい。だが、何れの勢力にも属さない貴官がそれに従う義務は無いがな?』


 北星条約か。以前、クロシバも同じ事を言ってたのを思い出す。まぁ、今回は敵の規模が違い過ぎるんですけどね? ちなみに、北星条約とは3大勢力間で交わされた取り決めであり、戦闘に置ける敵国の負傷者や捕虜に対し人道的な観点からの取り扱いを定めたものだ。まぁ、怪我人や捕虜には優しくしようぜって感じだな。


 此方としては、縛られてはいないと言え条約に反する様な行為をする心算は無い。まぁ、流石に要塞に襲撃してきた連中は処刑したけどさ。あいつ等は、自ら権利を放棄した様なものだしな。あくまで立場を弁え、模範的に行動するからこそ相応の待遇を受けられるだけだ。


 「ご心配なく。ランドロッサ要塞司令官として、北星条約に基づく扱いを約束します」

 『感謝する』


 さて、問題はこの後なんだよな。彼ら全員を捕虜にするのは負担が大きいよな。ガルメデアコロニーに、労働力として押し付けるのは何だし。ヴァルドリッジ中将を含めた上級将校を数人捕虜にして、要塞で情報収集に利用するのが一番か。それに加えて戦闘艦は全部宙域に放棄させて、乗組員達は輸送艦に詰め込んで帰って貰う方向かな。

 その場合の問題は、此方の情報を大量に持ち帰られるって事だな。いや、逆に彼らが有る事無い事を共和国に戻って吹聴してくれる方が良いのか? 悩むが、現実的な所で行くしか無いだろうな。


 「さて、先ずは此方側の要求を伝えます」

 『了解した。聞かせて貰おう』

 「1つ目。直ちに、全戦闘艦を放棄し乗組員は輸送艦等の非戦闘艦へと移乗して下さい。但し、ヴァルドリッジ中将とボルドー少将の身柄は此方で預かります」

 『我々の身柄と引き換えに、部下達を解放すると?』

 「大量の捕虜を抱えた所で、苦しくなるのは此方ですからね。それに一番人数の多い下士官ほど、情報面での価値は低い。無論、お2人の扱いに対しては十分に配慮しますよ?」


 当然ながら、軍隊と言うのは階級の低い下士官が最も人数が多く、階級が上に上がる程に人数は減るものだ。そして、階級が上がる程に触れる事の出来る情報は増える。少ない負担でより多くの見返りを得るのならば、ヴァルドリッジ中将らの身柄を預かるのが一番だろう。


 『分かった。直ちに、移乗を開始させる』

 「続いて2つ目。フォラフ自治国家に現在展開中の地上部隊に停戦勧告を行って下さい。宙が落ちたと言えば、彼らとて先が途絶えた事は理解出来るでしょう。停戦成立後、地上の兵を全員、宙へと収容して下さい」

 『指揮権が違うが、管理局のシュナイザー元外務大臣ならば此方の話を無碍にはしないだろう。とは言え、直ぐに止まるかは不明だが……』

 「構いませんよ。移乗にも相応の時間は掛かるでしょうからね。大事なのは、少しでも流れる血を減らす事です」

 『分かった。急ぎ掛かろう。ボルドー少将、頼めるか?』

 『了解しました』


 先ずは、戦闘艦の放棄。これは戦力の放棄に等しい。残りの補給艦なり輸送艦では、自衛以外の戦闘能力は皆無だからな。本国まで多少危険かもしれないが、それ位は我慢して貰おう。ついでに、ヴァルドリッジ中将らの身柄を預かる事で情報を得る。まぁ、素直に吐くかは微妙だけど……。

 続いて、地上での戦闘終結だな。フォラフ自治国家を解放するには、宙と地上の両方を抑える必要がある。宙は第6機動艦隊の降伏で終結となるが、地上にはまだ多くの共和国軍が展開し戦闘行動を継続しているからな。彼らが停戦し宙へ引き上げて初めて、自治国家は解放される。


 「では、3つ目。本国に、私からのメッセージを伝えて下さい」

 『メッセージ? 内容は?』

 「……近い内に、彼女を連れ戻しに伺うと。それだけ伝えて下さい」

 『……承知した』


 些か苦い表情を浮かべるヴァルドリッジ中将。加担したの、アンタだもんな? まぁ、彼は軍人として命令に従っただけではあるが……。メッセンジャーとして、メッセージをちゃんと伝えてくれれば良い。


 「1つ目に追加ですが、コンラッドコロニー宙域から我々の根拠地に向かって来ている第215任務部隊へも連絡をお願いします。もう通信は回復していますので」

 『了解した。他に何か要求があるかね?』

 「……他には特にありませんね。自治国家に対する賠償なりは、共和国本国に請求するしかないですし。武装解除に、地上での戦闘終結、情報源の確保、メッセージ。何事も、程々が一番ですよ?」

 『……そうだな。改めて、其方の要求は全て受け入れる。まぁ、負けた身で拒否出来る立場では無いがな?』

 「スムーズに交渉が進んだ事、感謝します、ヴァルドリッジ中将」

 『礼か……。貴官は実に不思議な男だ。これまで会って来たどの様な軍人、政治家達とも違う。掴みどころが無い様で、それでいて確固たる信念を持っている様にも思える』


 そうか? 何事も適当をモットーにやっているだけだと思うけどね。ソフィー達が居なければ、到底此処まで来れなかった様だ人間ですよ? まさに、只のオッサンです。


 「買い被りでは? 私など、何処にでもいる唯の男ですよ。まぁ、多少は何かを変えられかもしれませんけどね?」

 『……多少か』


 何、その達観した表情を浮かべちゃってるの、この人は? そりゃ、何処ぞの管理者(バカ)に星系を平定しろとか言われてますよ? でもね、それはソフィー達の手助けあっての事ですからね? オッサン1人では何も出来ません!


 「何か、物凄い誤解をされている感じがしますが?」

 『ハハハッ、大した事では無い。ただ、人生と言うのは面白い物だと思っただけだ』

 「と、言いますと?」

 『貴官の登場で、時代が大きく動くのやもしれんと思ってな?』

 「あはははっ……」


 読みが鋭いですね。管理者(バカ)の勘が正しければ、星系が平穏になりますよ。どの様な形かは知らないけれどね! 3大勢力による戦争が終結すれば、それは正に時代が動いたと言えるだろう。ヴァルドリッジ中将も、上手く行けばその目撃者になれるかもな。まぁ、それはオッサンが上手くソフィー達の支えで達成出来ればの話ですけど……。先は長いよ!


 『さて、一先ず此方で出来るだけ進めるとして。其方への移動はどうすれば良いだろうか?』

 「迎えを送ります。乗艦している『フォートスティール』で待機していて下さい」

 『了解した。では、実際に会える時を楽しみにするとしよう』

 「その時は、お手柔らかにお願いしますよ?」

 『それは、此方のセリフだな。では、また会おう!』


 そう言って、モニターから消えるヴァルドリッジ中将。通信が終了し、不思議な空気が司令室に流れる。つい先ほどまで、フォラフ自治国家宙域で殺し合いをしていた指揮官同士だった。だが、今は何処か違う気がした。

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