表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第3章:夜明け
123/336

3-23:対第6機動艦隊戦⑭

ようやく終わりが見えた。イイオヤジMk.Ⅱ

 『さて、些か変な空気にもなってしまったな。では、仕切り直して……』

 「共和国の軍人は、ジョークも3流の様で?」

 『これは、手厳しいな。だが、君との心地良い会話の応酬は悪くない。では、改めて名乗ろうか。ボルジア共和国軍、第6機動艦隊司令代行を務めるアルフレッド・ヴァルドリッジ中将だ』

 「……ランドロッサ要塞司令官、香月一馬。香月が家名で、一馬が個人名です。そちらに合わせるのならば、一馬・香月ですかね?」

 『……ランドロッサ要塞? 民間防衛組織では無かったのかな、香月司令官?』

 「世を忍ぶ姿って奴ですよ」


 変な空気にした張本人のクセしてサラッと話を流しやがる。恥将ヴァルドリッジめ……。しかし、あれだな。確か、以前ガルメデアコロニー攻防戦後の戦後処理の際に、ランドロッサ要塞の司令官だと名乗っていた筈だけれども、彼の所まではその情報が流れなかったのか? まぁ、今は気にする事もでも無いか。


 『成る程。それで合点がいったよ。民間組織では到底有り得ない戦力だったからな。だが、軍事組織(・・・・)としてならば、理解も出来る』

 「あぁ、勘違いされているかもしれないので先に言っておきますが。我々は何れの勢力にも属していませんからね?」

 『ほぉ? てっきり、帝国か連邦かと思っていたが……』

 「生憎と、誰かの下ってのは嫌いでしてね?」

 『成る程。それで、君はこの辺境の地から何を目指すのかね?』


 此方の真意を探ろうという視線。今この瞬間も、多くの将兵が命を落としていると言うにも関わらず、ヴァルドリッジ中将は此方との会話を何処か楽しんでいる様な節すらある。或いはそう見せる事で油断でもさせる心算なのか……。


 「……交わした約束を果たすだけですよ」

 『約束?』

 「えぇ。祖国を共和国に奪われた少女には、国の奪還を。宗教に名と人生を奪われた少女には、平穏な日常を。一度した約束は、必ず果たします」

 『そうか……』


 オッサンが誰の事を言っているか、恐らくヴァルドリッジ中将は理解しているのではないだろうか。ナターシャ嬢は微妙かもしれんが、星女については彼の部隊が拘束に直接的に関わった訳だしな。


 「それで? 此方の行動目的を聞きたいが為に、戦闘中に態々通信を繋げて来たのですか?」

 『……このまま戦闘を継続しても、我が軍の敗北は確実だろう。如何せん、艦の性能に隔たりが大きい』

 「……」

 『結果として、更に多くの将兵が命を落とす事になるだろう』

 「まぁ、そうでしょうね」

 『そこでだ……。双方、この戦闘の落としどころとなる終着点を見出せないかと思ったのだ』

 「……」


 終着点と言われてもね?


 「直ちに全面降伏して頂ければ、貴方を含め将兵の命は保障しますよ? そもそも、此方の勝ちは限りなく確実な現状において、そちら側が何らかの条件を出す事は筋違いでしょうしね?」

 『確かに。本来ならば、此方がどうのこうのと言うのは筋違いと言うべきものなのは承知している』

 「……成る程。素直になれない余計な連中がいると?」

 『まぁ、何事もな?』


 含みのある言い方だが、凡その意図は掴めた。戦闘を継続しつつ此方と交渉しているのはその為か。ヴァルドリッジ中将の背後に見える背景から察するに、任務部隊指揮所の意思は彼の元で統一されていると見える。素直になれない連中が未だ好き勝手やっているのだろう。


 この恥将。こっちにその処理をさせる心算か? まぁ、流石に味方撃ちは色々とあって難しいだろうしな。そいつが上官ならば、背後から撃っても問題無いが……。いや、それ以前の問題があるだろ。


 「そもそも、その話を信じろと?」

 『まぁ、会ったばかりの人間から言われて信用されるとは思わんな』

 「……」

 『故に、判断は其方に委ねる。この会談終了後、停戦の意思がある艦は徐々に下がらせる』

 「残りは継戦の意思があると?」

 『そうだ』

 「……」


 さて、どう判断すべきか。ヴァルドリッジ中将が本当の事を言っているのだとしたら、邪魔な連中だけ排除すれば戦闘は終結になる。殲滅戦よりは此方の被害も少なくなるだろうな。逆に嘘だった場合はどうだ? 戦闘がそのまま継続して、向こうが心折れるまで叩くだけだよな。どっちにしろ、状況が此方に取ってこれ以上に悪くなる事はないか……。無論、釘は刺すけどね?


 「では、終戦に向けてその案に乗りましょう。但し、嘘だった場合は後方の支援艦隊も含め殲滅します。降伏も逃亡も許さず、この宙域で1人残らず散って貰いましょう」

 『感謝する。では、また会おう』

 「次は、最初から真面目にお願いしますよ?」

 『……ふむ。善処しよう』

 「その間が怖い……」


 ハハハッと高笑いしながらフェードアウトするヴァルドリッジ中将。恥将ヴァルドリッジ、最初から最後まで此方のペースを掻き乱して去って行った。疲れたよ、パト〇ッシュ。


 「色々な意味で凄い人でしたわね?」

 「精神的に疲れた……」

 「お疲れ様でした。それで、どうされるのですか?」

 「ん? あぁ、戦闘は継続するよ。本当に敵さんに動きがあるならばそれに乗るし、嘘ならば殲滅するだけだ」

 「了解しました」


 これで戦闘が終了するならば、儲けもの。ダメでもそのまま勢いを駆って平らげるとしよう。いい加減、戦闘時間も長くなっているし此方の損失も多くなって来ている。早く戦闘が終わるに越した事はないのである。


 「第5戦隊、補給完了ですわ。続いて第3戦隊を下げますの」

 「了解。状況的に、残りは停戦後の補給になるか」

 「そうですね。一応、砲弾や推進剤の残りが心許無い艦は少し下げますか?」

 「そうだな。敵の残存艦の数からみても、多少は下げても良いか。まぁ、敵の動き次第では再度上げる心算で」

 「了解です」


 絶えず、動きながら砲撃戦を続けている為、補給をまだ受けていない艦はかなりギリギリのラインにまで、継戦能力が低下してきている。途中の陣形再編中にはそこまで時間が無かったのが、今さらながら悔やまれるところだ。今後は戦隊にせよ水雷戦隊にせよ、補給の際に代替を担う予備戦力が必要不可欠になるか。次の戦力強化期間で用意出来れば良いのだけれども……。管理者、今後こそ頼むぞ?


 『香月司令官。敵艦隊に動きがあります』

 「動いたか……。詳細は?」

 『一部の艦が突出し戦闘を継続、その他の艦は戦闘を継続していますが徐々に此方と距離を取りつつあります』

 「一応、約束通りの動きにはなっているか……」

 「少し、様子を見ますか?」

 「いや、敢えて誘いに乗る。戦闘AI。突出した艦に攻撃を集中」

 『指令受託。優先順位を変更します』


 ヴァルドリッジ中将が言った通りの動きを見せているとは言え、油断は出来ない。ただ、既に残っている敵艦の数からして一度下がった艦が再度上がって来たとしても、それほど脅威にはなり得ないか。


 「さて、戦闘を終わらせるとしよう」

 「「了解です(の)」」


 対第6機動艦隊戦は、いよいよ決着となりそうだ。後は、その後の戦後処理だわな。これがまた面倒なのよ。全部、放り投げて良いですか?


 「「ダメです(わ)!」」


 はい。頑張ります。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] おっさんからしたら 相手は老獪な策士っぽいけれどどうなるのかな?
[一言] そっか、この戦では敵艦隊の通信を傍受出来ていなかったのですねえ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ