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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第3章:夜明け
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3-21:対第6機動艦隊戦⑫

そ、そろそろ……。

 戦況は終始此方の優位に進んでいる。敵対する共和国軍第6機動艦隊を構成する3個任務部隊の内、TF198は壊滅し僅かばかりの残存艦が這う這うの体で後方に待機していた支援艦隊に合流した。そこまで辿り着く事の出来なかった艦は、追撃に当たっていた右翼の水雷戦隊によって、奮戦虚しく撃沈されていた。

 一方、TF204は旗艦撃沈後も大きく士気が低下する事は無かったものの、既に趨勢は決まっており残存艦はTF211に合流する形となり、艦隊としては消滅したのであった。


 そして、最後に残ったのがTF211である。コンラッドコロニー宙域で相まみえたアルフレッド・ヴァルドリッジ中将率いる艦隊。どうせならば、お互い万全の状態で再戦と行きたかったが仕方が無い。


 「一馬様! 全水雷戦隊、補給完了ですわ!」

 「良し、第6戦隊から順次補給作業に移れ! 全水雷戦隊は、攻勢に出るぞ!」

 「第2から第7水雷戦隊、突撃準備」

 「統制射撃準備! 突撃ルート上の敵を一掃する」

 「統制射撃、準備よし。何時でも行けます!」

 「……一斉射! ってぇ!!」


 水雷戦隊の突撃針路を確保する為、補給作業で離脱を開始した第6戦隊を除く5個戦隊に所属する戦艦・巡洋艦からありったけの砲弾が投射される。幾ばくかの間を置いて、幾つもの閃光が宙へと奔るのがモニター越しにも確認出来た。突撃ルートを確保する為の言わば牽制目的の射撃とは言え、射線上に存在する敵艦からすれば何ら慰めにもならないけどな。


 「水雷戦隊、突撃用意!」

 「突撃準備よし!」

 「突撃に合わせ、再度統制射撃! 左右に微調整を加えてくれ!」

 「統制射撃、準備よし!」

 「水雷戦隊、突撃!」


 補給を終え、推進剤も砲弾も満載した水雷戦隊は獲物目掛けて突撃していく。そして、彼らの針路を掃除する為に再びの統制射撃が行われる。既に敵側とて、その意図は察しているだろう。だから、ほんの僅かに外側へと広がる射線を今度は取った。一撃目を意識して、左右へと艦隊を退避させていた前衛艦隊は、もろにその砲撃を浴びる事となった。


 牽制射撃で掃討される敵前衛艦隊ってジョークでしかないよな? いや、まぁ突撃する水雷戦隊の負担が減るから此方としては感謝すべきなんだろうけどさ……。何て言うか、いたたまれないよね?


 「各水雷戦隊、前衛艦隊と交戦を開始しました」

 「了解。各戦隊は、水雷戦隊への支援を兼ねた敵前衛艦隊への砲撃を続行しつつ、その後方にいる敵本隊へも長距離砲撃を続行」

 「了解しました。ちなみに、補給を終えた遊撃艦隊はどうされますか?」

 「敵の支援艦隊と合流したTF198の戦闘艦を沈めよう。それから他の支援艦を叩く」

 「では、その様に。遊撃艦隊、敵後方部隊へ向け出撃」


 最初に帰投して補給を受けていた遊撃艦隊が、再び前線を迂回する様に敵の後方支援艦隊を目指して秘密裏に侵攻していく。最初は空母、次は後方の支援艦隊、そして再び残存する戦闘艦と支援艦隊を襲う遊撃艦隊。見えない敵の恐怖。再び味わって貰おうじゃないか。


 「しかし、良く分かりませんね」

 「ん? どうかした、ソフィー?」

 「既に両翼が落ちた以上、質的にも数的にも不利となった彼らが退く事をせず尚も向かってくる理由です。そもそも、最初からしておかしいのでは? 数を活かすべく、3個任務部隊で一気呵成に攻めるべきでした」

 「……まぁ、そうされていたら、もっと苦戦していただろうね」


 最初の段階で、此方の戦闘艦は540隻程。一方の共和国軍側は各任務部隊毎に370隻の戦闘艦を有しており、3個艦隊で1100隻余りとなる。先の『トロイの木馬』で多少の損失は出していたものの、此方の倍近い戦闘艦を有していたのだ。にも拘らず、最初に応対したのは2個任務部隊のみ。結果540隻対740隻と言う、艦の性能差を同一にしたとしても、戦術次第では幾らでも数的不利を覆す事が出来る程度の差でしかなくなってしまった。


 『答えは政治だ、ソフィー。実に下らない理由だ……』

 「政治で、前線で戦うべき艦隊の動きが乱れたと?」

 『そうだ。残念ながら、私達の様に、一馬からのトップダウンで実働部隊たる艦隊が動く例はフォルトリア星系中を見渡しても他に存在しない。何処の勢力も、間に余計なモノが幾つも挟まるものだ』

 「……」

 『更に言えば、我らがランドロッサにはそもそも政治が存在しないだろ? だから、己の首の行く末を気にしながら戦う必要も無い。常に目の前の敵に全力で当たる事が出来る訳だ』


 まぁ、失敗したら全部オッサンの責任になる訳ですけどね! ソフィー達に擦り付ける様なクズではありませんよ!? 自由に好き勝手やらせて貰う、だからこそ結果に対する責任は全て自分が負う訳だ。何処の世界であろうと、極めて当たり前の話なんだよな。行動と結果には責任が伴う。それを果たせないと言うならば、自由なんて求めてはならない。まぁ、求めなくても責任だけは取らされる事は多々あるけどね!?


 「まぁ、恐らく共和国本国からの政治的な横槍が、ヴァルドリッジ中将率いるTF211の動きを縛ったんだろうね。で、戦況がヤバいってなって慌てて出て来たって所だと思う。時すでに遅しってタイミングだけどさ」

 「愚かですね、何処までも……」

 「それが人間ってものだよ。俺だって、政治に縛られた状態だったら、此処まで自由気ままには出来ないさ」

 「一馬様なら、それでも屁理屈こねて好き勝手やりそうですの!」

 『「確かに」』

 「おいっ!?」


 サウサンにシャンインだけでなく、ソフィーまでそれは酷く無いですかね? そもそも、今は戦闘中だって事を忘れていやしませんか? オッサンもですけどね……。


 「取り合えず、戦闘指揮に集中しよう! サウサン、敵の動きに変化は!?」

 『特に奇抜な動きは見られん。正攻法と言えば聞こえは良いが、要は打つ手が他に無いから正面での砲撃戦に終始しているのだろう。既に失われた両翼に自艦隊の半数に当たる隻数の艦を渡してしまっていた分、もう数的不利をどうにも出来ない状況になっているからな』

 「何て言うか、もっと違う形で戦いたかったな……」

 『仕方があるまい。戦場は常に流動的だ。双方が万全な状態で開戦出来るとは限らんさ』


 サウサンの言う事は最もなんだが、何て言うかね? 前回負けたからこそ、完璧な状態で再戦して勝ちたかったんだよ。とは言え、手加減して良い訳でも無いし、容赦無く叩き潰すしかない。決して、敵右翼の旗艦を落とせなかった腹いせじゃないからね? ないからね! ないんだから……。自分で言って気持ち悪いな。サーセン、

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに!

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