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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第1章:歴史の始まり
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1-12:尋問①

どうしても話が進まない病気に掛かっている。根治不可能。


 結局、昨日は貨客船ディーシー号の乗員乗客を監房に移した所で業務終了とした。既に夜の9時を回っていたからな。尋問を開始しようとしていたソフィーにも休む様に命令して、私室へと引き上げさせた。遅めの夕食を簡単に済ませ、シャワーを浴びてベッドに横になったものの、中々寝付けず。結局、数時間の睡眠で今日を迎えたのだった。朝食を済ませ、午前9時少し前に司令室へと顔を出す。既にソフィーは何やら端末で作業をしていた。


 「おはよう、ソフィー」

 「おはようございます。香月司令官。昨夜は余りお休みにはなれなかったのですか?」

 「あぁ、何だか寝付けなくてさ。戦闘の興奮が残っていたのかもね」

 「もし、続くようでしたら薬を処方しますので、仰って下さい」

 「ありがとう。まぁ、薬に頼らずどうにかするよ」


 ソフィーは、今日も変わらず朝からハツラツとしている。昨日はしっかりと休めたのだろう。俺も、負けてはいられないな。


 「ディーシー号の人達には食事は?」

 「昨夜は軽めに摘まめる物を、今朝は簡素では有りますが、朝食を提供してあります」

 「そうか。ありがとう」

 「いえ」


 今朝、朝食を食べるまで彼らの分の食事が頭から完全に抜けていた俺とは違うな。危うく、収監した人達への虐待行為になる所だった。どういった人達かは不明ではあるが、食事をさせない様な非道な行いは避けなければならない。まぁ、極悪人とかだったら迷わず宇宙に放り出すけどな。飯も時間も場所も無駄だ。


 「さて、今日は取り合えずは彼らへの尋問かな?」

 「そうですね。中央管理AIの協力の元、彼らの情報の裏を取りながら真偽を確かめていきます。香月司令官には、この司令室から尋問の様子を観察して頂ければと思います。何か有れば、通信端末を通して連絡を頂ければ質問を代行しますので」

 「了解。でも、ソフィーは顔を晒して平気なのか? 相手の素性も分からない以上は危険じゃない?」

 「ご心配ありがとうございます。ですが、尋問中は別の顔を使いますので問題ありません」

 「別の顔?」

 「こんな感じです」

 「っ!?」


 一瞬の出来事だった。目の前にいたソフィーが全くの別人へと変貌していたのだ。確かに背格好は似ているが、顔が全く違う。今、目の前にいるソフィーは欧米系からアジア系の顔へと変化していた。髪も亜麻色から黒へと変わっているし、瞳の色とかも違う。何ていうか、狐か狸にでも騙されているのだろうか……。


 「驚かれましたか?」

 「えっと、ソフィーだよな?」

 「イエスでもあり、ノーでもあると言った所でしょうか。ソフィーとは、私の1つの顔であり、今の私ではありませんの。今の私の事はシャンインとお呼び下さいな、香月司令官様?」

 「声色も話し方も違うし、表情の作り方も違う。俺の事を様付けでも呼ばないしな。同じ肉体なのに、別の人格……?」

 「何となく、察しは付いているかとは思いますが、私は()ではありません。管理者によって、香月司令官様の補佐官を務める為に作製されましたので。金属の骨格に、電脳とナノマシーン、そして流体金属を組み合わせた金属生命体とでも言いましょうか」

 「うおぉぉぉぉ! めっちゃ、SFやん!!」

 「……香月司令官様の驚くポイントが、今いち分かりませんわね」


 何それ。金属生命体? 某惑星に暮らす動物とか恐竜を模したアノ? 金属の骨格に、電脳にナノマシーンに流体金属。仕組みとか良く分からないけれども、絶対男の子が好きなヤツやん! 良いよね、良く分からないカッコイイ系のハイテク! オッサン、大興奮だよ。大好物だよ。いや、ソフィーは食べないよ?


 「話を戻しても宜しいでしょうか?」

 「あっ、ハイ」


 ジト目のソフィー改めシャンインが怖かったので、黙る。オッサンは、察す事の出来る良いオッサンだ。


 「取り合えず、シャンインとして彼らの尋問に立ち合いますので、私の顔を覚えたとしてもソフィーと関連付ける事は不可能ですわ。その点は、ご安心下さいね」

 「OK。ソ……シャンインに任せるよ」

 「了解しました。では、私は監房に向かいますので。念のため、司令室の外には昨日の戦闘アンドロイドを待機させておりますが、万が一の際は彼らを使って下さい」

 「分かった。そうならない事を願うよ」

 「では、後ほど」

 「幸運を。シャンイン」

 「香月司令官様も」


 互いに敬礼して別れる。何気に初めて敬礼ってやったな。何となく見様見真似だったけど、様になっていただろうか。さて、そんな事は後にしてシャンインのお手並み拝見といこうじゃないか。




 監獄エリア内の一番手前にある面談室に最初に連れて来られたのは、50代位の大柄の男だった。彫りの深いが顔付きが特徴的な男で、一般人と言うよりかは軍人って言われた方がしっくりと来る風貌の持ち主だった。


 『私はシャンイン、貴方達の聴取を担当するわ。早速だけど、名前と年齢を答えなさい』

 『俺は、バンロック・アイザフ。年齢は53だ』

 『職業は?』

 『貨客船ディーシー号の船長だ』

 『……行先は?』

 『第16コロニーだ』


 船長のバンロック・アイザフ。行先は第16番コロニー。行先については昨日の臨検時に得た情報と相違は無いか。でも、やはり犯罪者の墓場と言われる場所へ向かう理由が分からないな。まぁ、その辺は上手くシャンインが聞き出してくれるだろう。


 『第16コロニーは犯罪者による無法地帯のはずよね? 行く目的は?』

 『依頼人からの依頼だ。それ以上、俺達は知らされていない』

 『嘘ね』

 『……事実だ』

 『貴方。軍人でしょ? しかも、元では無く、現役の』

 『……』


 回り道せず、直球勝負がシャンインのやり方の様だ。一方、直球で切り込まれたアイザフ船長は沈黙を選んだ。あの沈黙は無言の肯定と取るべきか……。


 『他の乗員も軍人でしょう? そうなると、重要になってくるのは乗客の方……それも2人の女性のどちらかね?』

 『……俺は何も知らん』

 『どの道、乗客も尋問するわ。貴方が語ろうと、黙ろうとね。……彼女達、何処まで沈黙していられるかしら?』

 『人道的な対応を要請する……!』

 『さぁ、それは貴方の協力次第ね』

 『……』


 うわ、アイザフ船長が凄い形相でシャンインを睨んじゃってるよ。幾ら尋問における駆け引きとは言え、中々にえげつないな。まぁ、拷問とかしないって昨日、シャンインじゃなくてソフィーが言っていたから大丈夫だと思いたい。いや、大丈夫だよな?


 『先に言っておくけど、此方としては貴方達を何れかの勢力に引き渡すつもりは無いわ。まぁ、貴方達次第ではあるのだけれどもね?』

 『……それを信じろと?』

 『このまま、何も果たせずに此処で終わっても良いのなら、好きにしなさい』

 『……』


 シャンインは何か知っているのだろうか? AIで話の裏を取るとは言っていたけれども、何か新しい情報でも有ったのだろうか。或いは、情報を吐かせる為のただのブラフなのか……。


 『……この要塞は、何れの勢力にも加担していないのか?』

 『えぇ、此処は完全に独立した勢力の拠点よ。何れの勢力との繋がりもゼロ』

 『お前が指揮官なのか?』

 『そうだと言ったら?』

 『嘘だな。指揮官自身が態々尋問など行わん』

 『ご明察ね』


 少しだけ、アイザフ船長の雰囲気が変わった様に感じる。流石に、この短時間で信用なり信頼を得たって事では無いだろうけれども、少なくとも先ほどまでのピリピリとした感じは薄れたか。


 『現状では、お前の言い分を信じる事は出来ん』

 『なら、全員仲良く宇宙遊泳でもするのかしら?』

 『性格の悪い女だな。お前の上司に同情するよ』

 『無駄口を叩いている余裕が、何時まで有るかしらね?』

 『ふん、好きにほざけ』


 アイザフ船長とシャンインの言葉による応酬が激しくなっていく。でも、最初の様な殺伐とした感じでは無く、どちらかと言うと予定調和のやり取りの様にすら思えてくるから不思議だ。


 『……此処の司令官に合わせろ。話はそれからだ』

 『それを、信じろと?』

 『お前の勝手な判断で、情報を得る機会を潰しても良いのか?』

 『嫌な男ね。女に嫌われるわよ?』

 『お前みたいな女になら、嫌われても問題あるまい』

 『……あっそ』


 アイザフ船長の方が一枚上手と見るべきか。シャンインの不機嫌そうな表情が凄く新鮮だなとか無駄な事に思考を使うオッサン。さてさて、どうやら俺が出る事になる様だ。尋問の経験とか有りますか? 有りません。ただの会社員が尋問の経験なりテクニックを持っていたら逆に怖いわ。オッサン、ドン引きするよ。まぁ、冗談はさて置き、シャンインに連絡を取ろう。話はそれから。 

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 船長を尋問して、僅か5分で司令官登場。 ここまで世界観をグダグダ説明して来たくせに、その非常識な展開にゲンナリ。 [一言] うーん、一気に醒めた。設定が嫌いじゃないからここまで読んでき…
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