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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第3章:夜明け
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3-16:対第6機動艦隊戦⑦

何だかんだ、今までで一番長い戦闘になってる系。


※誤字報告、ありがとうございます。

 「……精度が上がって来てるな。流石は本丸ってか?」


 先ほどまで相手をしていた艦隊とは異なり、流石は任務部隊の旗艦を含む艦隊と言った所だろうか。此処に来るまでは全くもって迎撃に当たる気がしなかったのだが、流石に冷や汗をかく場面が増えて来た。まぁ、当たって機体が木っ端微塵になっても、失われるのは機体だけだ、だから、もう少し無茶も出来るのだが……。


 『香月司令官。推進剤の残量が10%程です。今の機動を続ければ、もって5分程度ですぞ?』

 「……了解。外部パッケージを全パージ」

 『外部パッケージ、全パージを確認』

 「サブスラスターへの推進剤の供給停止」

 『サブスラスターへの推進剤の供給停止を確認』


 既に、ほぼ使い尽くしたミサイルパック兼用スラスター(増槽内蔵)はデッドウェイトとも言える状態だったので、他の後付け装甲と共に機体からパージして機体を軽くする。更に、細かい制御に使用していたサブスラスターへの推進剤供給を停止する事でメインスラスターの稼働時間を僅かにだが延長させる。


 「……ドクター。敵旗艦の位置分かる?」

 『香月司令官から見て2時方向。サウサンからの情報によると、仕掛けたタイミングでは5隻いる戦艦の内、最後方の1隻だった様です。ただ、警戒して頻繁に位置を入れ替えている様ですので、場合によってはサウサンからの特定情報が間に合わない可能性もありますな』

 「了解。時間も無いし、その時は勘で落とすわ」

 『畏まりました。最後は予定通りで?』

 「頼むよ。アレは美学だからね」


 軽くなった機体の機首を敵旗艦が居ると思しき戦艦群へと向ける。元々、この艦隊と交戦を開始してから、今まで以上に苛烈な対空砲火を受けていたが、どうやら彼方には行って欲しくないのか更に密度が上がって来ている。まぁ、それでも避けますがね……。

 さて、敵の旗艦はドイツだ! ……なんつって。


 「……」


 不思議なもので、弾幕が厚くなれば厚くなるほど、感覚が研ぎ澄まされていく実感がある。迫って来る砲弾が更に遅くなり、先読みの如く機体が勝手に回避していく。此方の操縦に、タイムラグ無しで敏感に反応してくれるシステムを作り上げてくれたドクター達には感謝しかない。自分で言うのも何だけど、恐らく普通のパイロットだったらとっくの昔に堕とされていただろう。それ位、視界一杯に砲弾が迫って来るのだ。でも、当たらない。


 「確率は5分の1で、残弾は……3発と。1発目で表面装甲を抜いて、2発目で司令部までの道を掘削、3発目で艦隊指揮所を叩くと……」


 本来、戦艦の装甲と言うものは簡単に撃ち抜けるものでは無い。それをドクターが試行錯誤して専用機の為だけに、特殊弾頭を少数用意してくれていた。まぁ、それでもあくまで至近距離から表面装甲を抜けるだけだ。

 なので、戦艦の中央最深部に位置し装甲に護られた艦隊指揮所を叩くには、寸分の狂いも無く表層に初弾で開けた穴に対し、2発以上は撃ち込む必要がある。苛烈な対空砲火を避けつつ、動いている標的に精密射撃を叩き込むとか、何て無理ゲーでしょうか。


 「……まぁ、それ位やらないと。頑張ってくれてるドクターや、ソフィー達に示しが付かないけどな」


 敵さんが此方の旗艦を狙う様に、此方もまた敵の旗艦を狙う。どちらが先に敵の旗艦を落とすかの勝負。既に、敵の艦隊が左翼に猛攻を仕掛けていた。敵右翼壊滅に火力を集中していた為、左翼側は押され気味に事態は推移している。まぁ、『スレイプニル』は特大の囮でもあるから、適当に引き付ける役を果たせれば十分ではある。無論、旗艦がアッサリと沈めらるってのは良くは無いけどね。


 「ソフィー。此方側の状況は?」

 『右翼前線の敵前衛艦隊は壊滅。後詰の敵右翼及び左翼を砲撃戦で叩きつつ、攻勢を受けている左翼側に戦力を徐々に移動しております。左翼前線は緩やかに後退しつつ、突出した敵艦を集中的に叩いています』

 「了解。折角だから、敵の攻勢圧力を利用しよう。第1戦隊を軸に左翼は逆らわずに後退を継続し砲撃戦に終始、右翼は再度前進に転換し敵左翼艦隊に攻勢を掛ける。形としては反時計回りに敵艦隊を叩くイメージだな。TF198、TF204の順で潰す」

 『了解しました。其方は如何ですか?』

 「一か八か、勘で敵の指揮所を叩くよ。上手くすれば、敵右翼の残存艦隊が直情的に行動してくれるかもね?」

 『そうですか。では、ご武運を』


 さて、ソフィーに発破(?)を掛けられた訳だし、お仕事しましょうかね? 何だかんだお喋りしている内に、目の前には5隻の戦艦が居る訳でして。周囲から物凄い対空砲火の嵐ですよ。更に、目の前の戦艦からも、誤射など怖く無いとばかりにバカスカ砲弾が飛んできては、至近距離で炸裂する事態。

 流石に、此処まで来ると被弾ゼロとはいかない。チョイチョイと砲弾が機体の表面を撫でていく。それだけで機体が大きく揺さぶらせる訳ですよ。まぁ、シミュレーター内だから全周囲モニターに映し出される光景が揺れているのみだけどね。


 「さて……」


 5隻の内、どれが本命だろうか。パッと見た限り、外見的な特徴は見当たらないか。動きにも特に差異は見られないしな。特定の艦を護るって動きも見られない。ただ、ドクターの言う通り、盛んに互いの位置を入れ替えているのは確かな様だ。


 「サウサン。敵旗艦の最新の位置は分かるか?」

 『特定出来ん!』

 「マジで!?」

 『仕込んだビーコンが機能しなくなったからな。恐らく、此方の探知を掻い潜る為に、幾つかの主要システムを手動で無理矢理に切ったのだろう。敵は随分と大胆な手をこのタイミングで打ってきた様だ』

 「敵もさる者ってか?」

 『ふんっ。……次は同じ手は喰わん!』


 あっ、ちょっとサウサンが落ち込んでる。何時もより、気持ちテンション低いわ。ドヤ顔サウサンが懐かしい今日この頃ですよ? まぁ、若干ウザい時もあるけどね。若干か……?


 「まぁ、後は任せてくれ。キッチリ仕留めるさ……」


 漢らしく、一発で旗艦と言う名の当たりクジを引こうじゃないか! 3発中てる苦行が待ってるけどね?

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに!

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