表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第3章:夜明け
110/336

3-10:対第6機動艦隊戦①

まだ終わらんよ!

 フォルトリア星系歴524年10月25日の早朝。起床後、手短に朝のルーティンを終わらせ、司令室へと足を踏み入れた。室内には既にソフィーとシャンイン、そしてドクターに加えモニター越しのサウサンの姿があった。どうやら、一番最後だったらしい。


 「おはよう、皆」

 「「おはようございます、一馬さん(様)」」

 『香月、良い朝だな』

 「おはようございます、香月司令官。ゆっくりとお休みにはなれましたかな?」


 朝の挨拶1つ取っても、皆の個性が出るから面白い。ソフィーとシャンインは何時もシンクロしているし、ドクターは必ず此方の体調を気遣ってくれる。サウサンは、サウサンだな。愉快な仲間達は今日も元気です!


 「お陰様で、バッチリだよ。皆も体調は万全かな?」

 「バッチリですわ!」

 『当然だな』

 「それは、何より」


 いよいよ、共和国軍第6機動艦隊と雌雄を決する日が来た。現時刻は、朝の5時半。後1時間も掛からずに先ずはダミーバルーン艦隊改め囮艦隊が共和国軍第215任務部隊と交戦状態になると予想されている。そして、その直後にいよいよ主力艦隊は敵機動艦隊本隊との交戦する事となる。


 「第215任務部隊の針路は変わらず?」

 「はい。予定通り、現在もコンラッドコロニー宙域へと真っ直ぐ進んでおります。後小一時間で囮艦隊と交戦になるかと」

 「機動艦隊本隊に今の所、変化はありませんわ。共和国本国からも今の所は、追加の補給部隊派遣以外は目立った戦力の移動は確認出来てませんの」

 『艦隊司令代行に就いたヴァルドリッジは、精力的に艦隊内の掌握に努めてはいる。だが、例の嫌がらせの効果もあってか、今一つ纏まりには欠けている様だな』

 「了解。想定外の事態が突発的に始まらない限り、攻撃開始は囮艦隊が交戦を開始してから、仕掛けるぞ」

 「「「『了解』」」」


 さて、戦争だ。いや、戦闘と言うべきか? ボルジア共和国へ正式な宣戦布告とかしてないから、向こうからしたらテロ攻撃になるのかもしれんが、今さらのお話。前回は、完敗だったが今回は勝たせて貰う。借りは返す主義です。


 「後少しか……」

 「飲み物と軽食を用意しておきますね」

 「宜しく頼むよ。今回は勝つぞ!」




 「囮艦隊。間も無く第215任務部隊との交戦状態に突入します」

 「了解。ソフィー、囮艦隊の指揮を預ける。コロニーやデブリを利用して最大限、敵を翻弄してやれ。敵艦の撃沈では無く、時間を稼げれば良い」

 「了解です」

 「一馬様。主力艦隊、間も無く第6機動艦隊本隊の索敵圏に入りますわ」

 「了解。敵が囮に掛かり次第、最大出力で妨害を始めるぞ! 奴らが慌てふためく程に盛大な宣戦布告と行こうじゃないか!」

 「「「『了解!』」」」


 いよいよ、戦闘が始まる。既に囮艦隊は敵艦隊に捕捉されており、間も無く戦闘が始まる。まぁ、実際には戦闘と言うか、時間稼ぎの撤退戦と言うべきか。囮艦隊の役割は、第215任務部隊をコンラッドコロニー宙域へと引き付けて置く事。その間に、主力艦隊で敵本隊を叩く。


 「一馬さん。敵艦隊から囮艦隊に対しての長距離砲撃、開始されました」

 「よし! こっちも始めるぞ! 主力艦隊各戦隊の電子戦艦による作戦行動を開始する! 戦闘AI! 派手に行け!」

 『指令、受託。主力艦隊。戦闘行動を開始します』


 今回、電子戦専門の艦隊以外に各戦隊にもカンターク級を配備し電子戦を仕掛けられる様にした。本来は、前回の反省を活かして纏めての運用に限定すべきだったが、戦闘域が広範囲に及ぶ事もあり、各戦隊にも電子戦艦を振り分けている。上手く、火力の低下を他の艦でカバー出来れば良いが……。


 「囮艦隊全艦、時間を稼ぎます。回避行動を優先しなさい。敵艦載機はデブリ帯で回避」

 「主力艦隊、全艦。挨拶代わりの長距離砲撃戦準備! 敵艦載機隊にも気を付けろ! 対空警戒を厳に!」


 敵からの砲撃戦で始まった対第215任務部隊戦。此方からの電子戦から火蓋を切った対第6機動艦隊戦。どちらもスタートは比較的地味と言えるかもしれないが、艦艇数が多い分、飛び交う砲弾の数は相応の量となる。後方の安全と言える要塞内にいるからこそ、こうしてノンビリと戦況を語れるが、あの渦中にいる共和国軍の乗組員達からしたら生きた心地しないんだろうな。


 「遊撃艦隊、敵艦隊後方にいる空母を端から喰らい付くせ! 他の艦隊は砲撃戦を続行し、敵の注意を引き付ける! 敵艦載機隊の動きはどうだ!?」

 「両翼より此方を挟撃する形で侵攻中ですわ! 友軍の艦載機隊は迎撃戦を開始ですの!」

 「数的不利なんだ、艦載機隊には無理をさせるなよ! 奴らのホームを片付けたら、士気は落ちる。その後で確実に調理してやれ!」

 「了解ですの!」

 「香月司令官。敵、高速艦隊左翼より来ますぞ? 数は巡洋艦を先頭に駆逐艦100余り!」

 「了解! 第2、第3水雷戦隊で迎撃!」


 ソフィーの指揮する囮艦隊を気にしている余裕すら直ぐに無くなった。4倍近い戦力差を誇る、共和国軍第6機動艦隊本隊の相手で手一杯だからな。個艦の性能は上でも数的不利は如何ともし難く、状況は楽観視出来るものでは到底無い。


 主力艦隊、第6機動艦隊。双方が互いを視界に捉え、熾烈な砲撃戦を行っている。電子戦で相手のレーダーと通信を潰している分だけ、此方が有利に戦えているとは言え、向こうはそれを高い実戦経験でカバーしてきているな。もう少し距離が縮まって命中弾が増えて来れば、ドクターの開発した電磁パルス砲弾が猛威を振るう様になる筈だ。後は……。


 「サウサン! 少しは悪戯出来ているのか!?」

 『そう、焦るな。着実に奴らの足は引っ張っている!』

 「了解! そのまま頼むぞ!」

 『任せておけ!』


 サウサンの悪戯が功を奏する事を願おう。今は、とにかく敵艦の注意を此方に引き付け続けるだけだ。遊撃艦隊が、派手に暴れ回るにはまだ幾ばくかの時間が必要だからな。


 「第4戦隊! 1時方向の戦線を押し上げろ! 第5水雷戦隊! 第4戦隊が押し上げた部分のカバーに回れ!」

 『指令、受託。戦線の押し上げを開始します』

 「敵艦載機の動きはどうか!?」

 「依然、両翼よりの挟撃態勢ですわ!」

 「了解! 引き続き、盛大に迎撃を!」

 「了解ですの!」


 両翼で続く激しい航空戦。機銃とミサイル、対空砲火が飛び交い、敵味方数多の艦載機が入り乱れ複雑な航空戦を催している。此方には数的不利があるものの、有人機では到底不可能な機動を誇る友軍機は縦横無尽に宙を駆け、敵を翻弄し続ける。そこへ正確無比な味方の対空射撃が入る事で、数的不利を忘れさせる程の善戦が見られる。とは言え、ジリ貧なのは間違い無いが……。遊撃艦隊が暴れてくれるその時を、耐え忍ぶしか無かった。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] さあ武装テロリストが正規雇いになるための闘いが始まる
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ