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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第3章:夜明け
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3-9:先を考えよう

今日の一言。嫌がらせラブ。

 「さて、大口径砲は量産に入るとしてだ。肝心のダミーバルーン艦隊改め囮艦隊と主力艦隊の位置は?」

 「囮艦隊ですが、予定では明日の朝7時にはコンラッドコロニー宙域へと到達します。現状では、此処で共和国軍艦隊を待つのが宜しいかと。主力艦隊に関しましては、フォラフ自治国家宙域まで残り48時間弱と言った所ですね」

 「向こうが一両日に動くとするならば、タイミング的には悪くないな。囮に喰らい付いた頃に、本隊へと攻撃仕掛けられるか」

 『香月。本隊に仕掛ける際、此方はどうする?』

 「サウサン達か……」


 基本的に、サウサンには戦況分析に専念して貰う心算でいた。複数隻ならまだしも、単艦の潜航艦だと前線での戦闘行為は危険すぎるしな。後は、敵艦のシステムに入り込んで悪戯して貰う位だろうか?


 「敵艦のシステムに、自由に悪戯して貰う位かな?」

 『なるほど。嫌がらせと言う訳か』

 「突然、火器管制システムがエラーを起こしたり、メインスラスターが制御不能になったり、照準が味方に向いたり、艦内の空気が抜けたりとやり様は色々とあるだろ?」

 『無論だ。撃沈と言う目に見えた戦果は出ずとも、我々には我々なりの戦いがあるからな。任せておけ。それに、沈めてしまっても構わんのだろう?』

 「良いけど、あくまで出来る範囲で頼むよ。間違っても、無理はしないでくれよな?」

 『ふっ、こんな所で死ぬつもりは無いさ。香月が行き付く先を見てみたいからな』


 サウサンには、徹底的に嫌がらせに徹して貰うとしよう。目の前の戦闘に集中出来なくなるであろう敵に多少の同情をするが、容赦はしない。こっちは艦艇数で負けている訳だしな。卑怯と言われようが、やれる事は何でもやる精神は大事だと思う。とは言え、サウサンに万が一があってはならないから程々にお願いするがね。


 「なら良しと。後は戦後の話だけどさ……」

 「もう戦後の話をされるのですか? 戦争が終わったら的な話は昔から縁起が悪いと聞きますが?」

 「それを吹き飛ばしてこそだよ。迷信に囚われている様じゃ、フォルトリア星系に平穏を齎すなんぞ、出来やしないぜ?」


 ソフィーの懸念も間違っている訳では無い。これから大戦となる場面で、呑気に戦後の事を考える等、愚行と言われても仕方が無い事である。でも、だからこそオッサンとしてはちゃんと考えておくべきだと思うのよね。その目標に向かう為に気合入れましょって事ですよ。


 「それで、戦後のお話とはどの様なものですの?」

 「仮定の話だけどさ、フォラフ自治国家宙域で通信妨害をし続けたとしても、第6機動艦隊を俺達が打ち破った事を、何れは共和国本国に察知されるよな?」

 「通信途絶とも成れば、何らかのリアクションは起こりますわね」

 「だから、勝ってからその後の方針を決めてると、致命的な時間のロスを生むと思うんだよ」

 「確かに、そうですわね」


 実際問題、要塞~自治国家間より共和国~自治国家間の方が距離的に短い。共和国側が事態を把握すれば、大した時を置かずに偵察艦隊なりの戦力が差し向けられる可能性がある。1個機動艦隊を打ち破ったともなれば、共和国側の警戒レベルは相応に上がるだろうしな。第6機動艦隊の残存勢力の確認と武装解除にも時間が掛かる。それにフォラフ自治国家の再安定化にも時間が掛かるだろうし、地上の残存戦力の無力化にもまた時間が掛かるのは必定。まぁ、地上の事はフォラフ自治国家の人間に丸投げする事になるが……。何れにせよ、とにかく時間が掛かる事だらけだ。


 「第6機動艦隊を打ち破った後、迅速に俺達は自治国家宙域を掌握する必要がある。下手をすれば、そう時間を置かずに再度の戦闘に突入するかもしれないからね」

 「とは言え、艦隊の修理や補給の必要があります。フォラフ自治国家側も、奪われた地の奪還で手一杯でしょうし。実質、全てを我々だけで行う必要がありますね」

 「艦隊が疲弊した状況で、迅速に次の為の行動をしないとならない。だから、今の内にある程度の方向性や割り振りをしておこうと思うんだよ」

 「分かりました」


 考えれば考える程、無茶苦茶なスケジュールだよな。共和国軍第6機動艦隊を打ち破り、残存戦力の武装解除と同時に自治国家宙域を掌握。一方で、ナターシャ嬢とアイザフ大佐を通して地上の自治国家側の人間と接触して、状況説明と共に自治国家宙域に置ける軍事行動に対する事後的な承認を貰わなければならない。面倒だけど大義名分を得るには、欠かす事が出来ないからな。それでもって、艦隊の修理と補給を行いつつ、来るであろう共和国戦力との交戦も視野に入れなくてはならない。あっ、囮に引っ掛かった艦隊を忘れてた。そっちの対応も並行して必要になるな。


 「何て言うか、忙し過ぎじゃね?」

 「仕方がありません。事態が事態です。一先ず、艦隊の修理や補給、周辺警戒、敵残存戦力の無力化及び宙域掌握は一馬さんとドクターに一任しても宜しいでしょうか?」

 「勿論。任せてよ」

 「承知しましたぞ」


 どうやら、ソフィーの頭脳がフル回転を始めた様だ。限られた人的資源を、どう振り分けるか。その辺りの采配は彼女が一番優れているんだよな。えっ、オッサン? 彼女に一任してますが何か? トップだからって、全部をオッサンが決める必要は無いのです。適材適所ってヤツですよ。


 「シャンインは、ナターシャさんと共にフォラフ自治国家側との接触及び交渉をお願いね」

 「お任せですの」

 「サウサンは、共和国本国の動きに目を光らせて。何かあれば妨害でも好きにやって良いわ」

 『任せろ』

 「私は、要塞全般の管理と各所のフォローに回ります。一馬さん、この様な形で宜しいでしょうか?」

 「良いと思うよ。あっ、そうだ。拠点艦を2隻追加で短縮建造するから。暫くこっちに艦隊を戻す余裕は無さそうだしね。向こうに送って整備に活用したい」

 「了解しました。建造ドックは……現状空いてますね。直ぐに開始されますか?」

 「勿論。向こうに着くまで時間掛かるからね」


 第6機動艦隊の別動隊の動き次第だけど、最低限の護衛で自治国家宙域まで送り出す事になるかもしれない。戦況次第では、向こうから迎えを出すか? いや、そんな余裕は無いだろうな。手加減して勝てる相手では無い。こっちの護りも増やしたいし、資源がヤバいな……。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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