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34歳のオッサンによるフォルトリア星系戦記  作者: 八鶴ペンギン
第3章:夜明け
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3-7:変わる意識

そろそろ、リアルが忙しくなってくるので更新ペースが落ちます。

恐らく、週1~2話位かと。

今後とも、本作をよろしくお願いいたします。

 『ターゲットα、シグナルロスト。マンターゲット1から4、事前移動は確認されず』

 『ターゲットβ群、ターゲット全艦のシグナルロストを確認』

 『ターゲットγ群、最終的に12隻のシグナルロストを確認。推定損失敵艦載機数は400機以上』


 薄暗い室内。中央に展開された大型の空中投影型のモニターに映し出された敵艦を示す無数の光点の内の幾つかへと、撃沈(シグナルロスト)を意味する『×』が上書きされている。全体の光点から見れば、その数が圧倒的に少ないのは間違い無い。しかし、それらの光点は何れも敵艦隊の中で大きな役割を与えられている艦ばかりであった。


 「上々だな……」


 その様子を、満足気に眺めながら今後の戦況がどの様に動くか思案するサウサン。頭を失った敵機動艦隊が、どの様に行動するか。手元の端末で生き残っているであろう上級将校達の情報を参考にしつつ、考えを纏めていく。


 「早急な司令官代行の選出に機動艦隊全体の正確な掌握。被害状況の確認に、艦隊の再編成。本国や地上統治局との不毛なやり取り。著しく下がったであろう、艦隊要員の士気向上を目的とする演説。仕事は山積みだな……」


 その仕事量に敵とは言え、幾らかの同情をしつつ自身はどう動くべきかサウサンは思案する。彼女が香月から受けた命令は、『トロイの木馬』艦隊を用いての奇襲攻撃までだ。それ以降は、基本的にそれまで行っていた情報収集に戻る様に言われてはいた。しかし、それでは退屈だと彼女は考える。では、どうするか? 次に香月がどの様な無茶ぶりをしてくるか予想して、開戦までの暇を潰そうと彼女は決めた。それで良いのか、サウサン。




 戦艦『フォートスティール』の艦内中央に位置する指令室にて、ヴァルドリッジ中将は正面に設置された3枚の大型モニターに映る人物達と、今後の機動艦隊の取るべき方針を打ち合わせていた。


 『最終的な被害状況が上がって来たが、相手の数からして手酷くやられたと言うべきだろう』

 『味方の振りをした敵艦とは……。アレで全部だと良いが』

 『俺ん所は、怪しい艦は居なかったぜ? 念入りにキッチリと確認させたからな』

 「私の所も同様だ。お陰で要らぬ時間を浪費する羽目になったが」


 モニターに映る3人とヴァルドリッジは、機動艦隊内で同格の立場にある指揮官達だ。第204任務部隊を率いる、マイケル・ベイ・サミュエル中将。第198任務部隊を率いる、ダグラス・ラングレー中将。第215任務部隊を率いる、リチャード・ゼーバイン中将。何れも、幾多の戦場を潜り抜けて来た経験豊富な指揮官であるが、今回の事態は誰もが経験の無い事であった。


 『艦隊司令要員は全滅か……』

 『そもそも、報告では回避行動すら取れずに沈められたからな。退艦する暇も無かったのだろう』

 『仕方ねえだろ。敵ながら見事としか言い様がねぇ奇襲じゃな』

 「敵の分析も大事だが、今は艦隊の立て直しが先だ。既に下士官まで動揺が広がっている」


 ヴァルドリッジの声に、3人とも思案顔を止め視線を彼へと集中させる。今、彼らが考えねばならぬ事は攻撃を仕掛けて来た敵の分析では無く、浮足立っている機動艦隊全体の立て直しだ。もし、この状況で更なる攻撃を受けた場合、被害は先程までの比では無くなるのは誰もが嫌でも理解していた。


 『先ずは、艦隊司令官代行を決めるべきだろう。私としては、ヴァルドリッジ中将が適任だと考える』

 『同感だ。ヴァルドリッジ中将は我々の中で第6最古参の部隊指揮官だしな。順当だろう』

 『俺も構わん。 むしろ、此処でグダグダ誰がやるか決めてたら、敵に付け入る隙を与えるだけだしな』

 「とても光栄だが、席次ではラングレー中将の方が……」


 部隊指揮官として第6機動艦隊に着任したのは、ヴァルドリッジが最古参となる。しかし、士官学校の卒業席次ではラングレー中将がヴァルドリッジの2つ上となっていた。共和国軍の慣例に従うならば、艦隊司令官代行にはラングレー中将が着任するのが通例だ。だからこそ、ヴァルドリッジは自身が付くべきだでは無いと暗に意思表示する。


 『確かに、平時ならそれが順当だろう』

 「ならば……」

 『貴官も予想が付いているだろうが、恐らく今回の攻撃は例の組織の仕業だろう』

 『民間防衛組織とは良く言ったもんだ。どう考えても、明確な軍事組織だぜ』

 『短期間で急速に力を付けている。貴官が危惧していた事が現実となって来た』

 「……」


 ヴァルドリッジとは異なり、3人の指揮官達は彼が唱えるランドロッサ要塞の危険性に何処か懐疑的な考えを持っていた。無論、実力の一端は見せられていたので無警戒だった訳ではない。しかし、この様な辺境の地でその様な組織が自分達を脅かすほどに急速に力を付けているとは、やはり安易には信じられなかったのだ。そして、それが間違いだった事を自身の目の前でむざむざと見せ付けられた。大将首をいの一番に落とされるなど、軍人として恥ずべき事でしかない。


 『正しい選択を貴官は示し続けていたのにも関わらず、私もサミュエルもゼーバインも選択を誤った。だからこそ、此処は貴官に任せたい』

 『ラングレー中将の言う通りだ。我々は貴官の信頼を取り戻さねばならん。それには、貴官の下で結果を出すのが一番早いと思うがな?』

 「ラングレー中将、サミュエル中将……」

 『俺達さ、本来ならアンタに合わせる顔がねえんだよ。でも、今はそんな事を言っている暇はねえだろ? だから、恥を忍んで頼む。名誉挽回する機会を貰えねえかな?』

 「ゼーバイン中将……」


 皆が皆、過去の己の判断を恥じていた。もし、もっと早くに行動に移っていれば、この様な屈辱を受ける事も無かったのだ。だが、今さらそれを言っても事態は何も変わらない。ならば、今度こそ同じ失敗を繰り返してはならないのだ。言い方は悪いが、今回の攻撃によって色々な意味での障害が減った事もある。何れ、本国から何らかの辞令が下りるだろうが、それまでならば時間はある。


 『正式な辞令が出る迄で構わない。機動艦隊司令官代理として貴官に指揮を執って貰いたい』

 『これは、皆の総意だ。貴官の指揮の元、借りを返さねばな?』

 『頼むぜ、ヴァルドリッジの大将!』

 「……承知した。ならば、今よりは私が艦隊の指揮を執る!」

 『『『はっ!』』』


 アルフレッド・ヴァルドリッジ。階級は中将。今、この時をもって第6機動艦隊の司令官代行に着任す。ランドロッサ要塞と共和国軍第6機動艦隊との決戦はもう直ぐ其処にまで迫っていた。

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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