堕ちし██、熱き██ 幕間
リアルパートはサクッと進行します
京都へ向かう新幹線の中で、姫園さんと霞、蝕天と4人組なのだが…………霞と姫園さんは座って暫くしてから寝てしまった。隣の姫園さんの頭が肩に載ってる……スマホ見るのも集中できねぇ……
「んで、剣聖は取れたんですか?」
蝕天が話しかけてきた。
「いやまだ、だけどいつでも取れる状態だし色々練ってるとこよ」
「縮地は?」
「無理臭い。まあ今更転職するのも勿体ないしβ終わるまではこのビルドかな」
「改めて考えるとシナジーの欠片もありませんよね貴方のビルド」
「『機動戦姫』が単体でジョブとして完結しすぎててシナジーが見込めねぇんだわ」
「種族専用職二つを統合するとそうなるんですね……」
「そういうお前はどうなんだよ対人特化、統合職取れそう?」
「アイテムの収集効率が悪すぎてなんとも……」
あー対人ビルドなのに吸血種だからNPCと関わりづらいのもあって転職するのが難しいのか。
「β終了までには終わるか?」
「統合の方は何とか。カンストは相性の良い格上ユニークか旨み多いイベント拾わないと無理ですね。イベントの場合は私レベルは大分増えているらしいですしカンスト自体に価値が無くなってしまいますが」
「れなに聞いとくか……というかイベントって?」
「ああ地底人でしたね……運営が一部フィールドを改造してキャンペーンやってましたよ。直近だとハロウィンですね、そこそこ有用な限定アイテムとか落ちましたよ」
「しらそん」
「私は深夜帯なら吸血種なのがバレないので野良狩りはしやすいので知ってたぐらいですが……妖精鄉組もハロウィンイベントは拾えてたようですね」
「マジかー……情弱直した方がいいんかねこれ」
「直したところでイベント参加できる見た目じゃないでしょう貴方」
「それもそうだな、まぁ掲示板で適当に情報漁るぐらいはしてもいいかもしれん」
「掲示板は入り浸るとレベリング忘れるので注意した方がいいですよ」
「もしかして経験が?」
「黙秘で」
京都で新幹線を降りたあとに乗り換えて奈良公園まで来た。この後は大仏見に行く予定だ。
「鹿だ……」「鹿だな」「鹿ですね」「鹿……」
「実はあんまり星籠から出ないから京都来るの初めてなんだわ」
旅行行く時は大体個人所有の無人島か海外だしな。
「親の実家が京都でして寄り道で何度か」
「俺は親の都合で小3で星籠に越してきたけど実は大阪出身でな、俺も何度か来たことはある」
「は、初めてです……大きい……」
「ん、あれって」
指さした先には『鹿せんべい』と書いてある看板。
「鹿せんべいら買いますか?」「俺らも食えるの?」「売店行ってお菓子買ってくる方が有意義だぞ」「さてはお前ガキの頃やったな?」
一日目の見学が終わって宿に来た。姫園さんと蝕天の女子組と別れて俺と霞と他クラスメイト2名と部屋に到着。夕食も食べて風呂も入ったので寝るだけだが,……
「枕投げしようぜ、新幹線で寝たせいでちょとっ寝れねえや」
「しねーよバカ、明日もあるんだし寝るぞ」
ベスっ、と顔に枕が飛んできた。
「やってやろうじゃねえかよこの野郎!!」
2日目。今日は自由行動の日だ。
「それじゃあ解散!集合時間には遅れないようにな!」
先生の号令と共にみんなが解散した。電車やバスに乗る班、歩く班、早速売店に寄る班など様々だ。
確か景観保護の為にコンビニとかも看板の色合い変えてるんだっけ?いい感じに溶け込んでいる。
「おー……京都って感じだな」
「語彙力カスかよ」
昨日お前らとバカやってたせいでまだ眠いんだよ、コーヒーでも買っときゃ良かった。
「じゃあお前はなんて表現するだよ」
「…………京都って感じだ」
「語彙力スカスカやんけ」
「人多いな……姫園さん、はぐれないようにな」
「はっ、ひゃい!!」
「おっ和服の着付け体験、あそこじゃね?」
「待ち時間聞いてきます」
「ぶっはははははは!!」
「似合ってますよ……くっwww」
「てめぇらァ……!あっバカ野郎、写真はやめろ!」
結論から言うと和服を着る体験の店は空いていた。いやまぁ蝕天が事前にある程度空いている時間を調べたんだが。
それはいい。いいんだが……
「いやなんで女物の着物!?」
メイド長やってた頃と違って髪は短くしたぞ!?間違える要素あったか!?
「いや、男物と女物で別れる時にお前ぽけーっとして姫園さんに着いて行ったじゃん」
まだ眠くてボケーッとしてたのは事実だが……!
「似合ってますよ。あと意外と多いんですよ?女物の着物を着たい男性も」
店員さんの指さした張り紙には『男性でも女物を着れます!』と書かれて女物の着物を着た……骨格的には男性の写真が移されたポスター。ウィッグとかメイクでパッと見女性にしか見えない。素晴らしいねジェンダーレス!
「メイクもされます?」
「……どうしよ?」
3人を見る。店員さんは完全に善意で勧めてきている。
「折角ですしやっていきましょう」
「ネタ抜きにもいいんじゃね?先生方に報告する時インパクトある奴が1個あると楽だし」
もう貴様らに意見は求めん……姫園さんは……?
「み、見たいですっ!」
「メイクもお願いします」
「「ちょっろ」」
うるせぇ、姫園さんが見たいって言ってるからやるんだよ。
「こ、これが俺……!?なんつってな」
だんだん楽しくなってきた、癖になったらやべぇかもな……
「似合ってますよ。というか相変わらず歩き方からなんか女っぽいんですよね貴方」
「誰が女々しいだって?」
「言ってねぇよ二次性徴失踪おチビ」
「蝕天お前今ライン超えたからな」
「落ち着けよ女装癖……よし写真とるから笑え」
いえーいピースピース。あとお前覚えとけよ。
「…………」
というかさっきから姫園さんが無言だ……
……もしかして俺、学園祭のアレといい女装癖だと思われてる?
「土産物は買えましたか?そろそろバスに乗らないと集合時間には間に合わなくなりますよ」
3年前に姉貴が買ってきた時と被らないように品物は選んだ。
「まぁ上々と言ったところか。霞は?」
「こっちもいい感じだ。お前ドラゴンのキーホルダー買った?またの名をクソガキから小遣いを巻き上げる邪悪なアレ」
「買わねーよ……というかどこの土産物屋にもあるよなアレ」
「未だに絶滅してないってことは今日もどこかのクソガキが小遣いを吸われてるってことか……」
「見ず知らずのクソガキに思いを馳せるな、行くぞ」
3日目、4日目はまぁ伏見稲荷とか清水寺とかの無難な観光名所巡って5日目に色々話を聞いて解散。恐らくどこの修学旅行もそんなもんだ。
姫園さんの荷物を運ぶのを手伝いつつ帰宅。
「じゃあ姫園さん、また来週学校で」
「はっ、ひゃい!」
彼女はバタン!と扉を閉めてしまった。
やっぱり女装癖の変態と認識されてる……?
「ただいまー……」
「お土産ー」
妹よ、兄の久々の帰宅の第一声がお帰りではなくお土産なのはやべーって……




