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堕ちし██、熱き██ 五の巻

年末までにサブタイトルの海苔が取れるかな……?


神域を去った後にするべきことが一つあった。


「手紙、渡して来ましたよ。あと伝言を貰っています。『汝が思うがまま為すが良い。汝は自由だ』。だそうです」


そう、フォルに報告だ。


「……………………はぁ、ご苦労。じゃあ剣聖就職の方法を伝授しよう」


フォルは伝言を聞くと瞑目し、暫くしてから目を開いて息を吐いた。


ついに就職条件解明か。どきどき、わくわく。


「1種類目は刀のスキルを『業』まで上げつつ流派の奥義を習得すること。君は我流だからこっちは無理」


人差し指を立てた。そして首と指を横に振る。


流派とか知らんもん……


「2種類目は刀のスキルを『理』まであげて奥義書を作成すること。要は流派を新しく立ち上げるんだよ」


フォルが中指も立ててチョキチョキと開閉する。なるほどな、奥義書なるアイテムが必要なのか。


「この情報に守秘義務は?」


「いやないよ。格がどうこう言ってるのは道場の主達だけだしそのうち広まるでしょ」


戦争で人が減ったのにそんな保守してても意味無いと思うんだけどねぇ、と苦笑いしながら続けた。


「分かりました。奥義書はどうやって作るんです?」


「メインが統合職の君なら分かると思うけどそれと同じぐらい面倒くさいよ」


……夏休みの半分ぐらい使って素材集めたんだが?ベータ版終わるまでに就職出来んのかこれ。


「……………」


「運のいい事にここに白紙の奥義書がある。いつも通りのチャンバラで私に一発でも攻撃を入れたら差し上げよう」


フォルは懐から巻物を取り出して言った。なるほど。NPCイベントの初回発見ボーナスみたいなもんか。







「「いざ尋常に……」」


今日まで何度かやってきた『チャンバラ』の戦績だが……全敗。


負けパターンは大体アクティブスキルの出力に押されて死ぬか、死に覚えしたそれを避けて体勢が崩れたところをずんばらり。


「「勝負!!」」


お互いに駆け出し刃を振るい合う。刃と刃がぶつかる。刀は大太刀が壊れたので予備の太刀を影でコピーした物を使用している。取り回しは良くなったし耐久値の心配は要らない。


素のSTRは負けている。押し負けるので体勢を崩される前に数歩下がる。


「『██流──雷鳴』!」


さっきまでの俺とは違うんだなこれが。


フォルが使ったのは刀を振るった後にジグザグに走る不可視の斬撃を生み出すスキル。飛ぶ斬撃は発生までにタイムラグこそあれ発生とほぼ同時(推定1フレーム?)で終点まで走り抜ける上にある程度任意で曲げられるようなので心眼で見てから回避はほぼ無理。加えて射程距離もそこそこあるので近づいて心眼で見える斬撃の軌道を避ける。ある程度曲げられるとはいえ限度があり90度は曲がらないと思われるので近づくのが吉。ちなみに1度振るわれる刀に刀をぶつけて阻止しようとしたら多段ヒットとその硬直で酷い目に遭った(一敗)。


踏み込む。


「それはもう見た!」


振るわれる刀を間一髪で避ける。


付随する斬撃はあらぬ方向へ逸れるので無視。


やはり誘導、本命の一撃の赤いラインが首を立つ太刀筋を描く。


「『██流──空崩(くうほう)』!」


「『一閃』!」


知らない型。赤いラインに沿ってアクティブスキルの斬撃を起動して弾く。


「甘いッ!」


弾かれた勢いのまま回し蹴り。恐らくこの後体で隠した刀の切り上げ。前見たからな(一敗)。


勢いを弱めるべく蹴りで応戦するとあっちの方が勢い強い上にステータスが高いから足が持ってかれる(一敗)。刀で防ぐのは有りだが耐久値実質無限の装備でやり慣れると再現武器以外で戦ってる時に絶対にボロが出るのでやらん。


やるべきなのは……


「『██流──断界』!」


「『一閃』ッ!!」


「なにぃ!?」


下がって蹴りを避け、もう一度アクティブスキルを起動して剣閃を逸らす。


()()()()()()()()()()()()()()()()使()()を見てフォルの口からは驚愕の声が出た。


大振りの斬撃を潰されてフォルが体勢を崩す。


「『刺突』ッ!」


追撃の突きを放つ。


「くっ……!」


恐るべき速さで振り抜いた刀をこちらの刀とフォルの体の間に挟み込み、刺突を逸らそうとする。


影で形作られた刀の切っ先がフォルの白い頬を掠めたと思った────その瞬間にはフォルは俺から距離を取っていた。


縮地か、やっぱり便利だな〜。


「……『我流刀理』、到達してたんだ」


「ちょうどさっきですね」


そう、さっきの百足戦後に確認したところ、スキルレベルがカンストして『我流刀業』が『我流刀理』に変化していたのだ。


「まぁ、まだまだみたいですが」


フォルの頬には傷一つない。当たったと思ったのは気のせいだった様だ。


「…………いや、当たってたよ。血は出なかったけど減ってるし」


「!……それでは!」


「うん、教えてたわけではないけど免許皆伝。はい奥義書」


フォルは再び懐から巻物を取り出してこちらに手渡した。


「そういえばどうして未使用の奥義書を持っていたんですか?」


「昔は私も流派は立ち上げようとして巻物の材料を集めてたんだよね」


お前流派の開祖だったのかよ……


「1番重要な部分だけがなかなか手に入らなくて集めているうちにその素材以外は2個分作れるぐらい材料が溜まったんだよね」


「まさか……」


「うん、手に入れてルンルンの帰り道に2個目も手に入っちゃった」


「あー……」


なかなか出ないレアドロが必要分手に入った瞬間にポロポロ落ちるアレか……NPCにまでMMOあるあるを強要しなくていいから……


「市場に流せる物でもなかったしこうやって手元に置いてたんだけどね、まさかこんな形で渡すことになるとは思わなかった」


「有難く頂いておきます。これの使い方は?」


「スキルがちゃんと育ちきってるなら開けばわかるよ」


紐を解く。







気づくと不自然に真っ白な、しかし見覚えのある空間に俺は立っていた。


『スキル編纂領域へようこそ。スキル編纂の解説をするNavi 009です』


眼前には夏に何度か(キャラクリしてて)会った事のある幼女の顔がある。


俺のチュートリアルの担当だったAIか、お久しぶり。


『はい、お久しぶりです。早速説明していきますね』


『この領域ではスキルの制作と調整を行います』


『型によるステータス補正、アクティブスキルの威力、発生速度、追加効果などを調整できます』


『制作に使用するリソースポイントが熟練度に応じて加算され、性能を盛るとその分だけ消費されます』


『今は『我流刀理』のカンスト分だけですが、貴女の流派が完成した場合はまた『○○流刀術Lv0』からスタートなので新たにリソースポイントが獲得できるようになります』


『奥義書が現存していればスキルの改良は何度でも行えますが作成したものを消す事は今の所は出来ないので制作は慎重にしましょう』


『奥義以外の型は、どれもリソースポイントの使用上限が存在するので割り振りには注意してください』


『一部の追加効果は特定のスキルに紐付けされていたり、特殊な条件を達成しなければ解放されません』


『スキルの使用回数などに応じてその型に消費するリソースポイントを軽減出来ます』


『貴女の場合は『一閃』の使用頻度が高いので斬撃系への消費軽減が適応されていますね』


『続いて奥義について説明します』


『奥義にはリソースポイントの使用制限が存在しません』


『奥義には通常のスキルとは別にクールタイムが存在します。クールタイムは奥義に使用されたリソースポイントに応じて長くなりますが、クールタイムの項目にリソースポイントを割り振れば軽減可能です。』


『奥義の設定にもリソースポイントを消費するので気をつけてください』


『最後に、貴女の使用した『剣聖の奥義書』の完成条件は『奥義』一つ以上の作成です』


『また、現在の奥義書で作成できる奥義は7つまでです』


『以上で説明を終了します。もう一度聞きたい、分からないことなどがある場合は遠慮なく尋ねてください』


なるほど、突き詰めるとみんな同じような性能のスキル作り始めそうだなコレ。


設定画面を開く。


パッシブスキルの欄は上昇ステータスの設定(こちらにリソースポイントは割り振れない)。『○○の心得』の中から一つを選ぶようだ。


アクティブスキルの欄は軌道、威力、発生速度、追加効果。刀は実際に振った軌跡から修正できる。


型もしくは構えの欄にはそれを構えている間のステータス補正、追加効果。パッシブの『心得』系に似た補正だがこっちは既存の物ではなく細かい調整もできるっぽい。


これ、適当に作っても取り返しがつかないんだよな。


……………………明日は早いしログアウトするか。




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