堕ちし██、熱き██ 四の巻
因子周回が終わらない……
浮遊感を感じるが首が取れた訳では無い。
なんでまだ首くっついてるんだっけ?と振り抜かれた紅い短刀を見ながら考える。
ああ、扇のオート回避……お前神託演算で見切れない速度でも避けられるんだ……結構すげえじゃん……
「そこまでにしてください」
背後で、扉が開く音と同時にそんな声がした。
出来ればスキル打たれる前に言って欲しかった……
受け身も取れずに背中から床に落ちる。
あの手の結界は侵入は容易なんだっけ?
「解除」
『神託演算#3』を解除、倒れたまま扇から手を離して両手を床につける。抵抗しませんよー
首だけ動かして声のした方を見ると、紫色の髪に2本の角の鬼人の女性、いつぞの占い師だった。
「巫女長!!」
「我らの神がお呼びです」
巫女長、確か天帝不在のこの国では神に次ぐ地位のはず。そんな重要NPCがなんで占い師なんてやってたんだ……
「ですが……」
「その方は街ではずっと我が神の監視下にありました。この国に仇なすつもりはないでしょう」
「だからといって、神域に余所者を入れるなど……!」
どうやら術士の少女は俺を神に会わせたくないらしい。俺も同じ立場だったら多分そうする。
「お言葉ですが、そのものが使った扇から発せられた風、覚えがあります。私と天忍の二人がかりでも逃げられた風の怪鳥のものです。アレの伸び代も考えると今討伐出来たのは僥倖、謁見の権利を与えられても可笑しくないかと」
仮面の少女がそう言った
「それに、貴女が私に意見する権利はまだ無いはずですよ、次期天帝陛下。絡繰りの御方、此方へ」
「巫女長……!」
「ここが、神域ですか」
部屋に入った筈なのに外に出た。日本庭園っぽいな。
既に6時を回っているという時間を加味しても暗い。
「……お面、まだ持ってますよね?」
「ええ……、これなんだったんですか?」
「監視用アイテムです」
「えっ」
「シームレスに侵入してた異国の人間なんて監視するに決まっているでしょう」
そりゃそうだが……
「言動を監視する限り国の害にはならないので、回収致します」
「どうぞ」
「どうも、これはお詫びの護符です。消耗品ですが」
「ありがたく受け取っておきます」
「あと、何体かの害獣駆除、ありがとうございます。特にあの鳥は逃げ回るので対処に苦労しました」
「気にしないでください」
「……神が人払いを要求しました。私が同行できるのはここまでです」
巫女長はぺこり、とお辞儀して去っていった。
シャラン、シャランと辺り構わず張り巡らされた縄についた鈴が鳴る。鈴が鳴る度、何処かで狐火が灯る。
大木からは季節外れの桜がヒラヒラと落ち続ける。花は散り続けているはずなのに、常に桜は満開だ。
湖の水面を歩く。
金色の巨大な尾と獣の耳を持つ女性が『狐神』。
漆黒の双角の巨女が『鬼神』。
狐神は大きな杯を、鬼神は瓢箪から酒と思われる何かを煽っている、
「我が名は『セッショウマル』」
「俺様の名こそ『センゴクオウカ』だ!」
「ご機嫌よう」
「手紙か」
「こちらへ」
「どうぞ」
「ふむ……」「これは……!?」
動揺している様子。
「成程、合点がいった」
「見届けるのも一興か」
「終わりでいいですか?」
「ああ、ご苦労であった!」
「では失礼。何か伝言は?」
「では手紙を書いた者にひとつ。『汝が思うがまま為すが良い。汝は自由だ』」
「…………言いたいこと大体言われちまったな。じゃあロストギアによろしく伝えてくれ」
「恋愛成就、祈っとく」
神が祈るなっての。
うーしクエスト完了。下手に彷徨いて他のNPCに突っかかられても困るしずらかるか〜。
例のお面はフレーバーテキストまで偽造した監視アイテムです。
あと『セッショウ』サマは摂政ではなく殺生でした。セッショウマルの固有能力として鬼火を介して色々出来ます。演算能力も設備増強した時のロストギアに次いで高いです。




