██の斬獲者 妖怪との邂逅 その一
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『あ、信頼出来る人ならここに呼んでもいいけどLv100しか来れないからそこんとこよろしく〜。お茶のお代わり注いでくるからちょっと待っててね〜』
そう言ってヤマちゃんは退室した。
……アイツあの包帯まみれの状態でどうやってお茶飲んだんだ!?そもそも湯呑触ってたか!?
それはそれとして。
「…………Lv100だったんですね、アルカエスト」
「殆どズルして上げたようなものだけどね」
「ズルですか。BANされていないならセーフなのでは?」
「いや、錬金術師が私だけだったから出来たことっていうか、隙間産業っていうか。NPCの仕様がアレだったからというか……」
『ただいま〜。アレ?どうしたのアルカエストちゃん』
「いえ、Lv100まで上げきった経緯をどう話したものかと」
お盆にお茶と追加のお菓子を載せたヤマちゃんが足でドアを開けながら入ってきた。行儀悪いぞ元天帝兼龍皇。
『そこはこの私にまっかせなさーい!この世界の仕様については神の次に詳しいって自負があるよ!!』
「お願いします」
『えーっと、アルカエストちゃんのいた旅団はリンド旅団だったよね?』
「あ、はい」
『彼女のメインジョブの『錬金王』、その下位職にあたる『錬金術士』と『高位錬金術師』は就く人こそ多いが極められる事は滅多に無いね。ましてやいつも食い詰めてたリンド旅団は余裕が無いから尚更』
『サブに入れるなら便利だけど錬金術士単体では素材の変換以外じゃ他の職業の劣化品しか作れないから実用性が無いんだよね』
『派生職にしても爆弾制作に優れた『爆弾魔』や生命研究に優れた『改良者』なんかが存在するし、メインに置く旨みが少ないんだよ』
『しかしアルカエストちゃんは高位錬金術師についてからもずっとメインジョブに置き続けてきた。その結果、素材の変換や純化といった一部の工程に限ればサブに入れていた子達を上回り始めたんだよ』
『最終的にリンド旅団中から貴重な素材を回されて変換を続けて、レベルが上がる環境が整った訳だ』
『ここまで高位錬金術師単体での技能が上がったのにも幾つか要因がある』
『適正レベル帯って奴だ』
『長寿のモンスターのレベルがカンストしづらい原因でもあるね。ある程度レベルが上がると下位のモンスターの討伐や簡単な生産から得られる経験値も減っていき、最終的にゼロになる。じゃあ逆に、そのレベルでは難易度の高い事をこなすとどうなるか?』
『この時期にここにいるんだからファケリーちゃんも心当たりがあるんじゃあないかな?』
ヤマちゃんが(包帯で分からないが恐らく)こっちに視線を向ける。
低レベルからの蜥蜴狩りとLv80でのジェリンド討伐を想起する。
『自分より強いモンスターを倒す。要求レベルの足りていない状態で上位のアイテムを錬成する。そういう無茶に対してこの世界はしっかりボーナスを与えてくれるのさ』
『こっちの人は基本的に安牌しか取らないからヤバいモンスターが出たら逃げるし、奮発してまで身の丈に合わない素材なんて買わないから天寿を全うするギリギリまで働いてても高くてLv60ぐらいが限界なんだよね』
『まあそんな感じで最高でもLv60のサブに高位錬金術師を置いてる旅団にLv70の専門家、メインジョブに高位錬金術師を置いてる子が現れたらみんなそっちに1度素材回すよねってことよ』
『リンド旅団は戦闘バカばっかりだし生産職の供給も追いついてないだろうし、ユニークボスの素材も定期的に流れてきただろう?』
『ま、妖怪の里の住人がこんなこと言うのもアレだけど、上がっちゃったモンは仕方ないよ』
『はい!難しい話はおしまい。アルカエストちゃんはファケリーちゃんに里の案内をしてあげてね』
ぽんぽん。と手を叩いてヤマちゃんは無理やり話を終わらせた。
盆の上の菓子も消えている。だからいつどうやって食ったんだよ。
そういや茶や菓子は何処から仕入れているのだろうか、なんて考えながらヤマちゃんの屋敷を去った。
「アルカエスト、案内頼めますか?」
「説明下手でいいならいーけど。時間大丈夫?」
アルカエストは長い首を振りながらこちらのスケジュールを確認してきた。あるいはあっちも時間が無いけど断り辛いとかだろうか。
「今は……6時ですか。あと1時間したら落ちるからサクサク頼みますよ」
「了解。んじゃ手短に」
「ここが鍛冶屋。テッサイさん!例の殺人機械を連れてきましたよ!!」
お前の中の俺のイメージどうなってるの?
「御機嫌よう。当機は機人種零号機、ファケリー・ヴァイスです。以後お見知り置きを」
『そうかァ!俺ァテッサイ。第3段階まで入っちまってる業の深いバケモンでよけりゃァよろしくなァ!』
テッサイ氏はどう見てもリビングアーマーの類だった。武者とかがつけてる鎧兜。それにひょっとこの面。ナウいね、強くなれる理由も知れそうな感じだ。また、ヤマちゃんが包まれていた包帯と同じものでところどころ縛られている。ここの標準ファッションなのそれ?
『うむむむ…………』
じっとひょっとこの面をこちらの顔に近づけるテッサイ氏。ちょっと怖いんだが。
「当機の顔に何かついてますか?」
『…………いんやァ。嬢ちゃん、刀ァ持ってるか?』
「持ってますが」
『見せてくれんか』
「構いませんが」
インベントリから『屍骸斬獲』を取り出す。
『ふむ……』
テッサイは鞘から刀を抜き放つとじっくり舐め回すように刀を眺めた。陽の光の当たり方が変わるように傾けたり、二度三度振ってみたり。暫くしてから刀をこちらに返してきて言った。
『コイツを打ったのぁ、お前さんの知り合いか?』
「ええ。装備はいつも彼女に頼んでますね」
『なかなか良い刀だ。来れるもんなら今度連れて来て来れねぇか?』
「えー……」
後ろでアルカエストが凄い嫌そうな声を出していた。そんなに嫌か。というかエロ装備の会の話した時にクソ空気冷えたけどなんかあったのか?
「暫くはヤマトに滞在するつもりですし『絶望回廊』の攻略もあります。機会があれば連れて来ますよ」
『そうかァ。ありがてェ。欲しいモンがあったらァ大抵は打ってやれるから気軽に言ってくれやぁ』
「困ったら頼らさせて貰います。他の所も回らないと行けないので一旦失礼しますね」
『オォ。達者でなァ!』
よし次!
「ここが服屋。オリヒメさーん!いる〜?」
『そう大声出さんでも聞こえとるよ?』
ひょっこ、と扉から顔を出したのは黒髪狐耳の美女であった。大変ボリュームのある尻尾、一目で高級品とわかる着物、例に漏れず包帯まみれで片目が隠れているが、顔立ちは整っているのが分かる。
「お久しぶりです。今日は身代わ……着せ替え人……生に…………とにかく新しくここに通う人を連れてきました」
ちょっと待て嵌められてエロ装備の会にエクリプスに置き去りにされた時の感じだぞこれ。
「御機嫌よう。機人種零号機・ファケリー・ヴァイスです。以後お見知りおきを」
『あらこれはご丁寧にどうも。ウチはオリヒメ、服屋やってるさかい、気軽に立ち寄っとぉくれやす』
「アルカエスト、つg『こないな可愛らしい子来るのんは久しぶりどす。幾つか見繕うさかい着て行ってくれるでなあ?』
ア!?(スタッカート)
どうにも離して貰える雰囲気じゃない。
「アルカエスト、今度会ったとき覚えてなさい」
「うっ、素材の変換とかなら幾らでもやるから勘弁してぇ……」
おーぼーえーてーろー!!
アルカエストはよく素が出てくるネナベです。キーボードでチャットしているわけじゃないからポンポン切り換えられるファケリーの方が異常なんですよね。従来のMMOに比べるとボロが出やすいのでちょっとネカマネナベに厳しい世界かもしれません。




