イザジンジョウニ
『Are you ready?』
出来てるよ……!!
『Fight!!!』
「『カチコミニードル』」
手元の黒い鍵。それを手の中でくるりと一回転。すると、形状は刺々しい片刃の斧に変わっていた。
「胸借りるよ姉様ァ───!!」
最初に飛び込んできたのは、ホムラ。
機械で出来た大剣を振りかぶりながら突貫してくる。
マトモに受けるのは嫌だな。
「『神託演算』」
世界が遅くなる。
周囲の情報が全て直に脳内に叩き込まれる感覚。
「ッァ……!」
例えば、ホムラの大剣の軌道。
例えば、そそそさんの移動先。
例えば、エクリプスのスキル発動前の隙。
例えば、自身の斧の射程。
ホムラの大剣の側面を蹴り飛ばし、後ろに回り込んできたそそそさんの首に斧を叩き込む。身代わりの発動したそそそさんの首を掴んでスキルで血の弾丸を飛ばしてきたエクリプスとの間に差し込み盾にする。まず1人。
「───『ゼッ────キョ────ウ』───」
掴んでいた斧の柄は弓に変わる。苦痛に歪む人の顔の彫られた弓をホムラに向け放つ。放たれた矢は分裂しながら標的を穿つ。半分程当たった所で身代わりが削れ、全て当たり切った時にはホムラは居なくなっていた。
「───『ツキ───喰ミ』────」
あとはエクリプス一人。手の中の弓は既にデスサイズに姿を変えた。悲壮感を漂わせる表情でエクリプスが血の鎧を纏った。然し、見えている。攻撃範囲、死角、弱点。デスサイズを只振るう。スキルは不要。五歩で接近しきる。一振で左腕を奪い、二振りで両足を奪う。三振りは身代わりに阻まれ、四振り目で首を断った。
『You Win!!』
3対1の決闘は俺の勝ちで終わりを告げ、死んでいた3人も蘇る。それと同時に、発動していた『神託演算』も解除される。
解除された瞬間、ぶっ倒れる。
「これ、ヤバ、、い、、、」
一気に情報を叩き込まれる感覚。脳が爆発しそうで立っていることも難しい。
震える手でログアウトを選択した。
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震える手でMAXコーヒーを飲み干す。
さすがにヤバすぎてログアウトしてから鼻血出てないか確認したわ。
お姉さんから装備を受け取ったあと、エロ装備の会本部の闘技場で装備の試し斬りを行う事になっていたのだが。
新しく統合した『神託演算』、ありゃ封印確定だな。普通に魔弾射手で脳死魔弾連打の方が脳みそに優しい。
統合したもうひとつのスキルはぶっつけ本番だし、銃もスペックと機能確認だけでログアウトしてしまった。
「兄貴〜!!日環さんから電話ー!!」
妹の呼ぶ声。さすがに何も言わずにログアウトはまずかったか。
「悪いな明」
妹から電話を受け取る。そんな目で見るな、奴から何を聞いたかわからんが実の兄に対して向ける目では無いぞ。
『 大丈夫ですか?』
「すまん蝕天。新しいスキル使ったら頭痛がやばくてな」
『一応明日からヤマトに行くんでしょう。クランの連中には言っておきますから今日はログインしなくて結構です』
「悪い」
『悪いと思っているのなら少しは手加減してください』
「やだ」
『もう切りますよ?』
「じゃあな」
「ええ、また月曜日に」
電話を切る。
「兄貴、どうしたの?」
「ちょっと頭痛くてログアウトしたんだよ」
「なんで?」
「ゲーム内のスキル使ったら思ったよりキツかった」
「アホでしょ?」
「アホで何が悪い」
その目は兄ではなく凶悪犯罪者に向ける目だぞ妹よ。
「とりあえず今日はログインしない」
「じゃあ遊ぼ」
最近は食事以外は家族との時間があまり取れていなかったな。
よしわかった。
文化祭の時の仕返しをしてやる。




