幕間:創造主のつぶやき
「ヌゥ?サーバーから申請?致命的なバグでも見つかったか?」
暗い部屋、無数のモニターの中で、その女性は呟いた。
彼女の名は田中 智子。世界初のフルダイブ技術の開発者にして、Phantasm War Online、略してPWOの最高責任者でもある。
「えーと、ナイトメアアリスが討伐された、MVPはクランに所属していない?」
管理サーバーの1つから送られてきた文面を読み取り眉を顰めた。
「とりあえず戦闘ログ出してっと」
簡易的に纏められた映像が画面の1つに浮かび上がり、驚異的な速度で再生される。
機人種の少女と悪夢の精霊の戦いの一部始終が映された画面を閉じる。
「OK。理解した」
女性は何度か人差し指で頭をコツコツと叩いて思案する。
「個人用、それも戦闘特化でアジャストして付与っと」
返答。特典の付与を許可して女性はキーボードを叩く。
「とはいえ、ちょっと気になるかな」
瞑目してまた人差し指で頭を叩く。
「プレイヤー名は、『ファケリー ヴァイス』?ん?あれ?ジェリンド倒されてるじゃん」
彼女はリリース以降はPWOに関与していない。βテストの終了後の情報集計までは余程の案件出ない限りはシカトを決め込んでいた程だ。
故に、設定していたエンドコンテンツが既に幾つか攻略されている事もプレイヤーログを見るまでは気づいていなかった。
「ロストフェイスとネームレス、ジェリンド、モリアー。もう3つも攻略してるんだ……」
討伐者の戦闘ログを流し見る。例えば圧倒的な暴力。あるいは異常なまでの執念。他にはメタの理不尽。凡そ、まともな人間の所業とは思えない。
「無限湧きバグの人とは別の子達だしなぁ」
トトトトッ。と人差し指が頭を叩く速度が上がる。
「ファケリーねぇ………ファケリー、ファケル?…………………篝火?」
何かを思い出したように画面を見つめる。
「たしかあの時の年齢的にまだ学生だし………βテストプレイヤーの当選結果出して」
『テストプレイヤーの個人情報の利用は「別に害になる訳でも無いしいいでしょ」
画面の表示を黙殺して当選結果を出す。
「珍しい苗字だしすぐ見つかるはず………あった」
高速で当選者リストをスクロールして行き、一瞬で目当ての情報を見つける。
『篝火 閃』
「やっぱりかぁ……」
歯に引っかかった食べカスが取れた。それぐらいの声音で表示された名前を見つめる。
「閲覧ログを削除っと。まあ、誰がどうしたって関係無いか。」
直接本編に関わるような事はは無いので深読みしなくて大丈夫です。




