いざ逝け冥土道、悪夢の追憶 其の九
喉が痛い。これが夏風邪……?(口開けて寝ただけ)(宿題が終わらない)(切り抜きを見る手も止まらない)
移動拠点内に集合した俺、エクリプス、お姉さん、ロストギア、レイカ。
「んー、何から作るかな。刀、双剣、大剣、ハルバードもありかも?」
「譲った素材に思いを馳せるのは構いませんが少しは真面目に頭を働かせてください。レイカ、遭遇した際の詳細を教えていただけますか?」
「『悪夢』の中でナイトメシアに遭遇したの!それで『我がナイトメシアだ』って言ってきてでも何もしてこなくて余計奇妙だったの!」
「『悪夢』の中で遭遇するモンスターってランダムと聞いてるけど、ファケリーちゃんはどう思う?」
「『悪夢』に潜ると一定確率で遭遇するでは?ですがそれでは不可解ですので何かしらの条件があると考えています」
「どこが不可解なんだい?」
「これがレイドという事です。悪夢に潜ると確率で遭遇では多人数で攻略は出来ませんから。システム面から見たメタ的な視点ですが」
「まあ正論だね。レイカちゃんに顔を見せたのが何かしらのイベントだって線もある」
「レイカさん、遭遇したナイトメシアの見た目はどのようなものでしょうか?」
「分かんないの!黒いモヤッとしたのがかかっててハッキリしなかったの!」
「シルエットすらも?」
「そうなの!お姉様!」
「………ええ、分かりました」
ガバガバだな。
「とりあえず装備を整えましょう。それとロストギアは何故黙ったままなのですか?」
「今回はネタバレになるから喋れぬのだ」
「知識は貸せても助言は出来ないのですね。分かりました」
「ファケリーちゃんは武器何が欲しい?」
「出来れば剣の類でお願いします」
「おっけー!じゃあ準備するから!」
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「クランマスター!どうなってるっスか!?」「レイドって!」「サブマス以外非戦闘職ですよ!?」
装備を渡す(ついでに希少種族を着せ替え人形にしようとしたが)つもりで来たクランメンバーは皆驚いていた。
「取り乱さないのみんな。これが最近起きてたクランランキング転落の理由だよ」
落ち着いて語るスペル・マスター。
「あとさぁ、カランちゃん、携行用の鍛冶セットって持ってる?」
そう言って赤髪の少女に語りかける。
「最高級の火の魔石も持ってるっス!」
「気合い入ってるねぇ。悪いけど借りていいかい?ちゃんと魔石の代金は払うからさ」
「いいっすけど……」
と言って背負ったリュックから道具を渡すカラン。
「あー、他のみんなも持ってる生産用の道具渡してくれない?ちゃんと返すしなんなら利子も付けるからさ」
「なにする気だ?」「なんか考えがあんだろ」
と道具を渡していくクランメンバー。
「ありがと。じゃあもう死んでいいよ」
「へ?」
「『愚劣を歌え』」
ザクり。と短剣で近くにいたカランを刺したスペル・マスター。
「ガっ!?」
カランの体を大量の状態異常が蝕む。『麻痺』『猛毒』『昏睡』『石化』………。
数秒後、カランは死亡し特殊マップから姿を消した。
短剣『愚人来惨モリアー』を持ったスペル・マスターは笑みを浮かべながら宣言した。
「皆殺しだよ」
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「ランキング保持の為とはいえ、直接殺す必要があったんですか?クランマスター?」
「いやいや、ごめん。新しいおもちゃを試したかったんだよ。下手に衆目に晒したくもなかったからね。ここは人の目が無いけどこれの効果がでなくてさ?寸止めを繰り返してるような気分だったんだよね」
「女性としてその例えは如何なものかと」
「ごめんごめん。ファケリーちゃんの前では大人しくしておきますよ」
「リアルで連絡の取れるメンバーに理由を説明する身にもなってくださいって」
「アハハハハ!」
「笑い事じゃねえって」
あとがき大百科
『鉄火隊』
総勢50人の元トップクラン。
強靭なドワーフで構成された命知らずな突撃部隊は、凄まじい突破力を誇る。
特に恐れられているのは『止まるんじゃねぇぞ』の合言葉と共に突撃する団長「ウォルグ・リッカ」の他人のダメージを肩代わりするスキルを受けた精鋭部隊である。敵陣を食い荒らした挙句後方部隊の援護射撃に被弾して死亡し逃げるので、やり返せずにヘイトを集めていた。
ナイトメシアの襲撃時には、フルメンバーで挑めたものの後方部隊が狩られてから瓦解し、無事全滅した模様。
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