序盤の雑魚敵相手に負けるわけないだろ!
ポッドから転送とかますます世界観ぶち壊しだな。まあ他種族と関わるとしても相当後になるとは思うしあまり気にする必要も無いな。
恐らくは放棄された鉱脈なのだろう。燃え尽きた松明が引っ掛けてあるが、ところどころに生えているヒカリゴケらしきもののお陰で光源には困らない。
鉱山や鉱脈と言えば毒ガスが湧きだしそうなイメージがあるが、このゲームバステやデバフはどうなってるのだろうか?機械が毒で体力削られるとかシュールだが。
というかこの手の採掘にはツルハシとかの採掘ツールが必要になりそうなものだが。取り敢えずエネミーのドロップの確保と行きたい。
『Volololo!!』
第一エネミー発見。こういうフィールドってゴーレムやバット、あとはドラゴンとかそういうのを予想していたが、猪だとは思わなかった。鉄色の猪がコチラを向いて威嚇している。確か、装備の起動の文言は『起動』だ。
ぐりん。とレンズの付いた二つの球体が猪の方を向く。
視界に浮かび上がった長方形の中に敵を収めればオートエイムで攻撃してくれる。
『Vovooooo!?』
魔力を消費して攻撃する武器であり、レンズから放たれたビームが左右五本ずつ合計十本、全てがヒットし猪は呆気なく倒れ、体を光に変えていった。
ドロップは『鉄インゴット』。そのまんまだな。鉄の延べ棒をインベントリにしまい込み、探索を続ける。
『Voooooo!!』
二体目の鉄猪発見。さっさとドロップに変えてしまおう。『起動』。……あれ?
オートエイムの枠は視界に表示されているし、枠内に猪を収めているのに攻撃が行われない。
『Voooooo!』
突進してきた鉄猪を回避。基礎値が高めのステータスと序盤の敵故に低ステータスなのもあり回避自体は楽にできる。
片手でステータスを弄っていたら、原因が発覚した。
ファケリー ヴァイス
HP:200/200
MP:0/50
(以下省略)
MPが枯渇している。攻撃回数から逆算して1回あたりMP5の消費か。ボスだのに挑む前に発見出来て助かった。
初期装備はデスペナでも落とさないがさっき手に入れた鉄インゴットは落としてしまう。ここで落とすと装備を作るにしてもNPCを作るにしてもプラントとここを往復する回数が増えるだけである。撤退だ撤退。
ネカマ帰還中………
ただいま。
「おかえりなのじゃ」
MP回復したい……
「そのカプセルに入れば回復できるのじゃ」
オーケー。
「ドロップは妾が預かっておくのじゃ。」
MPってどうやって増やすんだ?
「レベルアップした時のステータスボーナスでも増やせるがあちらは効率が悪い。外付けの装備で増やせるのじゃ」
どっちにしろ周回を強要してくるタイプか。オーケー、行ってくる。
ネカマ往復中………
三度の休憩を挟み、三十回の戦闘を終え、たった一度のレアエネミーとのエンカもなく、ただの一度もレアドロ無し。ネカマプレイヤーここにひとり、この身体は、有限の聖銀で出来ていた………!!(訳:往復飽きた)
「鉄だけで装備作れるわけないのじゃ」
先に言えポンコツァッー!!!!
ネカマ遠征中………
探索の結果、俺が三十五回の往復の間に調べた範囲には鉄猪しかいない(なんで戦闘回数より往復回数が多いのかって?クソ猪に後ろから轢かれたんだよ(半ギレ))。やはり別のエリアに移動しなくてはならないようだ。
この鉱脈、破棄されてるとはいえ上に進んでドワーフとカチ会わないとは限らない。故に難易度高そうな下に進まざるを得ない。
あと、往復中にわかった事がある。このオートエイム、相手が倒れていても、体力が尽きるまで攻撃を続ける。つまり、5発撃てば倒せるのに着弾までの時間差があるせいで無駄弾を撃っている。下手に連射速度が高いのも考えものだな。
ん?ステータス欄から装備をタップしたら『オート』の表示が出てきた。もう一度タップすると『マニュアル』になった。この装備、自分の意思で動かせるみたいだ。
ネカマ移動中………
鉄猪を避けつつ、探索してる時に見つけた下へ進む階段まで辿り着いた。
階段の先、明らかに雰囲気が違う。推奨レベルとか表示されればいいのに。
っおお……
階段を降りた先は、ヒカリゴケが消え、水晶や光る鉱石が光源になっていた。昔のゲームのボーナスエリアみたいだ。
採掘ツールが無いのが悔やまれる。ロストギアに鉄で作って貰うべきだった。
取り敢えずエネミーを探すか。
ネカマ探索中…………
『Shraaaaaaaaa!!』
って不意打ちィ!?
顔のすぐ近くまで迫って来ていた牙を転がって回避する。危ない、スカートならパンチラする所だった。
パンチラ未遂の下手人たるエネミー、体のところどころから水晶が生えた蜥蜴がこちらに牙を剥く。
マニュアル操作の力を見せてやる………『起動』!
ふよふよと周りを漂っていた初期装備が起動。あ、装備の意味も念じれば動かせるのかこれ。
念じた場所を左右一発ずつ閃光が撃ち抜く。この武器やはりある程度ぶれる。確認してないけどDEX関係だろうな。対抗馬がINT、大穴がLUCか。まあ後でロストギアに聞こう。今振るのはリスキーだしな。
『Shiuuuuu……!!』
ノーダメかよ。急所の定番は眼球か。射撃精度を踏まえると残弾八発は無駄に出来ない。これは肉弾戦も考慮しないとダメか?
距離を取ろうと後退し、周囲を確認した瞬間『Shururaraaaa!!』二体目!?
咄嗟に右腕で防御、しかし蜥蜴に抵抗もなく噛みちぎられる。
仲間を呼ぶのは想定外だ。見渡してなかったらバックアタック直撃して死んでた。
状況整理。右腕欠損、残弾八発、敵二体増援の可能性アリ。急所以外はロクにダメージは通らなさそう。当てるならゼロ距離射撃か。
二体同時に噛みつかれないように一体目が壁になるように移動。でも相手の方がAGIが高い。って上から三体目ッ!?
結果から言えば飛び掛る一体目と上から奇襲してきた三体目が頭突きしたお陰で助かった。
というかお前ら体から出てるの水晶だったり金属質だったり何?別種?ランダム要素なら泣くぞ。
蜥蜴二体の衝突事故により距離を稼いだ。HP:117/200か。腕を犠牲にもう一度接近すれば眼球に攻撃できるか。脚は帰りの為にも失う訳には行かないからな。
『Gyuryaaaaaaaaaaa!!!!』
マジか、四体目の増援。というかデカい。レアエネミーか。このアバターが154cmだから3メートルは超えてる。そして目につくのは体から複数種類の水晶や鉱石が生えている。あと口腔に光を溜めている。そっかー、爬虫類だもんなー、ドラゴンとかの親戚だしブレス撃ててもおかしくないもんなー。
右と見せかけて左に回避、レーザーが体のスレスレというか右腕があった場所を通り過ぎる。壁から生えた鉱石を足場にクライミング。リアルに比べるとステータスが高いこともあり右腕欠損でも登りきれる。
そんな極太レーザーを上に向けて撃ったら洞窟が崩れることを理解しているのだろう。
まあしかし、小型三匹は壁伝いにこちらに来れる。飛び降りて着地失敗、残り体力99、転がりながらどうするかを考える。
腕を犠牲にゼロ距離射撃は、乱数次第でこちらが死にかねない。
っておい二体目、体から生えてる水晶光ってるぞ、まさかそこからレーザー出たりしないよな?
他の二体が飛び退いた時点で体を伏せる。やっぱりレーザー発射。しかし背中にかすって残りHP53。しかし希望が見えた。
レーザーを避けたのだからあれでダメージが入る。何とか二体目にレアエネミーの極太レーザーを当ててドロップを回収、それをレンズに収束射撃なら流石にダメージが入るはずだ。
まあドロップが都合よくレンズになるのか、そもそも蜥蜴のレーザーと初期装備の攻撃が同質なのかと、ギャンブルだらけだがな。
地面から四体目の小型、上から二体の新手、ブレスまでさっきの感覚からすると一秒、伏せればバレないが小型を巻き込めない。クライミングはどこから新手が出るか分からない以上悪手。薙ぎ払いの速度はおれの足より速いがそこまで差は無い。なら今こそステータスを弄る時………!!
Name:ファケリー ヴァイス
Lv6
種族:機人種
メインジョブ:機動砲兵
サブジョブ:無し
所持金:5000zark
SP:30
ステータス
HP:53/200
MP:0/50
STR:15
AGI:30
VIT:15
DEX:20
INT:30
LUC:20
スキル
『機動砲術Lv4』
•『スプレッド』
•『スパイラル』
今気になるものが見えたが時間切れ、身を伏せてレーザー回避。デカい顎のせいで実は接近すると死角になる。今の内にステータスのボーナスをAGIに叩き込む。
そして震える手で機動砲術の下のスキルを確認。
『スプレッド』
基本射撃三発分のMPを使用し拡散する射撃を行う。
『スパイラル』
基本射撃二発分のMPを使用し収束する射撃を行う。
取り敢えず小型はブレスで纏めて倒そう。ドロップを回収し次第スパイラルで大型に攻撃。効果がなさそうならその時点で撤退、効果ありなら急所狙いで動く。
ブレスが終わり次ブレスまでの間隔は多分二分以内。上がったステータスを信じて持ち堪える………!!
回避、回避、回避、回避!小型共までブレス吐く個体が出てきやがった!
まだ蜥蜴の方が速いが四方八方からブレスが飛ぶせいで近づかれることはない。
3秒後に大型のブレスの溜めが終わる。壁際に寄って小型のブレスを回避。
残り2秒、噛み付こうとした小型の口に初期装備を突っ込む。耐久無限なんて悪用しろって言ってるようなもんだろ?
残り1秒、接近開始。
現在、大型の後ろに小型はいない。ブレスは通路の右端にいる俺を狙っている。ブレス回避のために俺と大型を結ぶ直線上に小型はいない。
さて問題です。隙丸出しのブレスを放つ大型の横っ面に面攻撃を叩き込んだらどうなるでしょう?
なんとなく指を銃の形にしてからこう言った。
「『スプレッド』」と。
答えは簡単だ。薙ぎ払われる。
パーティプレイ中なら確実に『フレに呼ばれたんで部屋抜けますね^^』されてブラックリストに叩き込まれる。
しかし、敵側にもFFの概念があるなら話は別だ。
小型共が攻撃を避けたことからも同士討ちが存在するのは明らか。
ドゴンッッ!!と大型蜥蜴が首を振り、正面にいた同族をブレスで焼き払った。当然消し炭。
俺が食らったら即死だったな。避けて良かった。
いいとこに入ったのか怯みモーションに入った大型蜥蜴。
もう一度、指を銃の形にして呟いた。
「『スパイラル』」
直後、閃光が大型蜥蜴を貫いた。
『Gryururu………』
……………
……………
…………終わったぁああああ!!
やばい、なんというか脳汁がガガガ。ろくに確認せずドロップをインベントリに叩き込む。なんというか、RTAを完走した時に似た感覚だ。つまりこのあとはしばらく脳が使い物にならん。新手に会わないうちに撤収だ。
ネカマ帰還中…………
ただいま。欠損ってどうやって治すの?
『回復用のポッドなのじゃ、というか何があったらそんなに憔悴するのじゃ!?』
辛かったんだよ。ドロップ置いとくから。
ロストギアが騒ぎ立てるのも気にせずポッドの中に入ってログアウトした。