魂に刻まれたモノ
「ただいま戻りました」
帰宅してログインした。
「ああ、戻ったか」
ログアウト前に渡したジェリンドのドロップアイテム、『宝晶輝龍の全身完全遺骸』は、加工するすべが無いのかそこに放置されている。
「お姉たますごいの!コイツ、硬すぎて加工する出来ないの!」
「………ありがとうございます、ロストギアと話があるので少し席を外してください」
「分かったの!」
トテトテと走り去っていくのを見送ってから、ロストギアを見る。
「幾つか確認したいことが」
「なんじゃ」
「当機は何故生きている?」
ジェリンドのブレスで、一度ファケリーは死んだはずだ。
「なんの事かの?」
「ログを参照出来るなら知っているでしょう」
「ハァ、前提として、NPCとプレイヤーには大きな隔たりが存在する」
「当然だがNPCは復活しない、だがプレイヤーは復活する。故に、貴様のように死にながらレベリングを行うことでNPCとプレイヤーには大きなレベル差が生じる」
「だが、あくまでこの世界を治めているのはNPCだ。プレイヤーは客人に過ぎん」
「故に、NPCには1つ大きなアドバンテージが存在している」
「ステータスには表示されぬモノ、まあ有り体に言えば称号だな」
「在り方は様々だ、忌み子、英雄、叛逆者、竜殺し、殺人鬼、そして、『王』」
「隠しステータス『称号』その中で最も条理を捻じ曲げるのが『王』だ」
「取得条件は簡単だ、『各種族固有の職業で最も合計ステータスの高い最上級職であること』」
「職業『指揮官』系列はステータスが高い代わりに直接戦闘が苦手だ」
「そうだ、ステータスは高いのだ」
「そして、本来の機人種の指揮官系列最上級職『機械王』、現在ホムラが取得しようとしておるモノは全ステータスが最高値の補正を持っておる」
「称号『機械の王』は機人種の中で最も合計ステータスの高い『最上級職』に渡される」
「……あとは分かるな?」
「………当機が最上級職『機動戦姫』に就いたため、『暫定一位の最上級』になった当機に称号が付与されたと」
「落とし穴であったな。ホムラは今上級職『機械将軍』だ。そのうち『機械の王』はホムラが持つことになる。プレイヤーは貴様一人なのだ、この程度は目を瞑ろう」
「『機械の王』の効果は……?」
「もうわかっておるだろう、『一日一度の復活』だ。因みに『王』にはその種族で足りないモノが付与される」
「回復の出来ない機械に最上級の回復である蘇生というわけですか」
「そうだ。………他言無用じゃぞ?」
「ええ、ですが称号はNPCだけに付与されるように調整するべきかと」
「製品版に期待しておれ」
いや今デバックしろよ。
「………外に出たいです」
「良いぞ」
「え?」
「だから良いと言っておる」
「何故?」
「貴様はあの洞窟をほぼ完全に踏破してしまった、だがこの鉱脈はあれ以上のイベントは用意出来そうにないからな、貴重な機人種のテスターをノンアクティブにする訳には行かぬからな」
なるべく隠密行動を心がけて貰うがの、と笑うロストギア。急に表情を引き締め、
「まず服を着ろ」
そう言えば装備は全ロストしてたわ。
ブクマとか評価してくれると嬉しいなー!(チラッ)