踏破セヨ輝キノ龍、天ヲ衝ク機王ノ産声 其の二十二
イエーイ!夏休み!
追記:二十三になっていたので二十二に直しました。
『必滅魔弾』。
ジョブチェンジして生えて来た『呪砲絶禍』と『聖砲神撃』を即サクリファイスして産まれたスキルである。
#の後の数字に応じて成長するスキルであり、使い所を誤ると死に直結するスキルである。
なんかもう少しカッコいい名前はなかったのかと小一時間運営を問い詰めたくなるが、性能自体は満足のいく物であった。
『必滅魔弾#2』
発動条件……HP及びMPが半分以上残っていること
残存HP及びMPとその『上限』を1にして、その数値に比例した属性無しの砲撃。特定部位にヒットした時、ダメージ増加。
と、随分と不親切な説明であり、倒すまでユニークだと気づかなかった『模倣鉱爬』に使用するまでは威力すら理解出来ていなかった。
この『特定部位』が厄介者で、要は急所であるが、1箇所のみなので脳死で頭に撃ち込んで実は胸部にコアがありますなんて洒落にならない。
だから開幕ブッパは避けてチクチク削って急所を探してた訳だ。
ジェリンドの場合、頭部の宝玉が恐らく特定部位に当たる。
視認する限り『必滅魔弾#2』は確実に額の宝玉に当たっていた。
当たっていたのに。
「何故生きているのです」
『模倣鉱爬』の頭を吹き飛ばす程度の威力はあったはずなのに何故コレは生きている?
『………龍冠廻理・輪廻龍皇』
削った命は戦場では戻って来ない。
『龍冠廻理・紡勝龍皇』
紡いだ言の葉を引き金にジェリンドが光を纏う。
スキルは使えない。アイテムも残っていない。
死ぬ?ここで?
別に。所詮ゲームだ。
負けても誰も責めやしない。
そんな考えが浮かんで。
……………。
いやだ。
負けたくない。
勝ちたい。
だから。
何より。
拠点の妹達に。ロストギアに。
「格好悪い姿は見せられないから!!」
目玉に腕を突っ込んででもコイツを倒す!
ジェリンドが光を振り払う。その体には水晶の鎧が。手には水晶の剣が。
だからどうした。
『来い!!』
駆ける。
小石につまづいただけでも死ぬ状態だけど。
砕けた水晶を踏みしめ、振るう剣を避ける。
腕が振るわれる。鎧を蹴りつけて反動で跳んで回避。
すぐ着地。
翼が光を放つ。伏せて回避。
尾が叩きつけられる。視線振って誘導。逆にとんで回避。
ブレス。避けられない。
咄嗟に叫んでしまった。
「エーテル起動!」
MPの上限は0ではなく1で、スキルは使えないが装備で時間経過でMPを消費するエーテルは使えたらしい。真横に飛んで回避。
直ぐにエーテルの使用をやめる。翡翠のエフェクトが視界の端から消える。
ザリザリと地面を削り減速。そのままジェリンドに向かって走る。
剣。腕。足払い。尾の叩きつけ。ブレス。
心眼の予測すら見ないで回避。
目で追う暇なんてない。
そんな時間が続く。
元より、こちらはスキルが使えない。デスサイズは壊れているし、MPがないので砲撃も出来ない。
ジェリンドの攻撃が1度でも当たると死ぬ。それ自体は先ほどと同じだが、こちらのHPまで1だから、受け流すことすら出来ない。
だから、均衡も崩れた。
『晶閃!』
水晶の剣から飛ぶ斬撃。斜めの剣閃が放たれる。
エーテルも使い切って無理矢理避ける。
「……ぁ」
次は、避けられない。
『極葬龍吼!!』
初めて見る予備動作。翼の光が消えて、口腔に光が収束する。
そして、終わりが放たれた。
極光が迫る。触れる。体が融ける。
……。
極光の中だ。
何故生きている?融けた体が戻っている。
HPもMPも。装備も半壊だが使える。
………まだ戦える。
「『臨界機動』『機走破』『刻弦舞踏』『命脈踏破』」
光が途切れる。
『何故生きている!?』
お前にだけは言われたくない!
パチモンのエリクサーを左手で握り右手は砲撃の準備。
エーテルも駆使して飛ぶ。
『ガァァァ!!』
咆哮と共に水晶の礫が飛ぶ。
『臨壊機動』により引き伸ばされた時間。さっきまではスキル無しで避けてた訳だ、接近にリソースを割ける程度に余裕もある。
斬撃、礫、槍、息吹、全て避ける。
『臨壊機動』のデメリットで体力が削れ、『命脈踏破』でステータスがさらに上がる。
「フッ!」
肉薄して射撃する。頭に当てたが弾かれた。もう小粒は無駄か。
フェイクエリクシルを握り潰し、HPMPを全快まで持っていく。
今度こそ一撃で決める。
ジェリンドも気づいたか剣で防御体勢をとろうとするがもう遅い。
「『必滅魔弾#2』!」
魔弾は龍を穿った。




