踏破セヨ輝キノ龍、天ヲ衝ク機王ノ産声 其の十二
遅れを取り戻すための二重召喚です。
「夜に飲むエナドリは罪の味だぜぇ………」
「ほどほどにしてくださいよ?」
「お母さん、そんなことするから身長伸びないんだと思うんだけど………」
「やめて母さんそれは俺に刺さる………」
「ごめんなさいごめんなさい僕がチビだから閃に恥ずかしい思いさせて……」
「兄貴がお父さん泣かせたー!さいてー!」
「え、俺のせいなのか?」
「……閃、どうせまたイチャイチャし始めるから気にしなくていい……」
「明、宿題終わったのかお前?」
「ギクッ!」
「……お姉ちゃんが手伝ってあげる」
「姉貴が夏休みの間外出してるのをほとんど見てないんだが、友達いないの?」
「……閃と一緒にしないで」
「(´・ω・`)」
心に負った傷が深すぎる。
蜥蜴共のエリアを抜け、ドワーフの亡霊共のエリアを進む。敵が強いと数を揃えて殴る蜥蜴と違い亡霊はアップデート後は近寄って来ない。
来るの自体は一ヶ月ぶりだが、ルートは覚えているし、何よりわかりやすい目印があった。
俺を消し飛ばした奴のブレスの痕である。というかマップが修復されてないって結構ヤバいと思うんだが。
歩みを進めると見えてきた。前回は直ぐに退場するハメになった巨大な空間である。ちなみに下まで結構距離があるので着地に失敗したら死ぬ。
その為の飛行用装備である。洞窟が狭くてほとんど練習出来てないが。
気分は紐なしパラシュート付きバンジージャンプである。つまりスカイダイビングだ。
正規の方法ではどうやって下に降りるのだろうか、などと考えながら足を踏み出す。何か考えながらの方が怖くないしな。
重力に体が引っ張られて。
落ちる。落ちる。落ちる。
風景が加速し、地面が近づいてくる。
着地まで目測20メートル、ら10メートル、5メートル、「『エーテル』機動」『エーテル』を起動、背中から推進力と浮力を受けるイメージで……!
結果から言えば着地は成功、損害なし。ただしMPは少し減ったので留意しておこう。
改めて最下層からこの大空洞を見渡してみる。
縦にも横にも上にも広いフィールド。特に上は百メートルあるかもしれない。やはりあいつは機動力が高くてスタン狙って袋叩きにするタイプのボスか?
幾つかある横穴は恐らく正規ルートか。蜥蜴共のエリア以外にもエリアがあったのか?
そこらから剥き出しになっている水晶、鉱石、宝石の数々。幾つかは足場に出来るほど大きい。
そして。
明らかに一つだけ意図の違う横穴がある。
象が何匹も収まる程の横穴、その奥に。
輝く眼と水晶の翼を持つドラゴンがいる。
『貴様は……何時ぞやの神の尖兵ではないか』
さあ、ご対面だ。