これまでのあらすじ
急峻な山脈により東西に二分された大陸――その東側の軍事大国であったルクト帝国は、大陸西部の覇権を巡って北西部に位置するイリル王国と熾烈な争いを繰り広げた。
工業力に劣るルクト帝国は、高い魔力適性を持つ軍人を航空魔術師として教育・養成し、空対地攻撃を主軸とした戦法で戦術的優位を確保した。
ルクト帝国軍 開発隊群実験航空隊を創設した帝国最強の軍人ユルゲンは、イリル王国の機動化された火砲と電撃侵攻に対して航空戦術にて対抗。占領地を奪還し、瞬く間にイリル王国に逆侵攻した。
帝国側の損害を軽微に抑え円滑な補給を実施、驚異的な速度でイリル王国首都を包囲するに至り、イリル王国とルクト帝国の間に停戦協定が締結される。
王国が提示した降伏の条件はただ一つ。実験航空隊を率いたユルゲンを、戦争に関する罪で裁くことであった――
一軍人が崇拝される状況を苦々しく思った貴族院はこの条件を受諾し、ユルゲンは絞首刑に処されることとなる。
自らの死を偽装した彼は、自らが構築した飛行術式を駆使し山脈を越え、大陸東部へ逃亡する。山脈に隔てられ複雑な海流により東西の交易が殆どなされていないそこは、魔術技術が西部に比べて劣った土地であった。
そこで彼は自身の名をラーベと改名し、一介の冒険者として平凡に生きていくことを決意したのだった。
『東部冒険記』と記された古びた旅行記を基に、ラーベは言葉を覚え、いざこざに巻き込まれつつも冒険者として歩み始めたが、ある冒険者の手により木々が鬱蒼と生い茂る樹海に転送されてしまう。
そこでラーベは巨大な白狐と出会う。白狐は樹海を縄張りとする一族の中で最強の存在であり、『魔王』討伐のための力を持った人間に助力すべく研鑽に励んでいた。
ラーベの実力を知り、その身を人型に変化させた白狐はラーベの冒険への動向を申し出、彼は白狐にシルヴィアと名付けて冒険の旅に出ることとした。
シルヴィアに人間としての常識を教えつつ冒険者家業に励んでいると、彼らが拠点にしている森で遭難者を発見した。ラーベ達が住む辺境領の北に位置するオーラフ公爵領にて勇者として指定された半魔の少女、レインであった。その見た目によって不遇の人生を歩んできた彼女を保護し、パーティーメンバーに加えたラーベ一行は一端の冒険者となるため様々な依頼をこなしていく。
そんなある日、街に魔獣が攻めてきた。それは巨大な亀であり、子亀を引き連れて彼らの住む街を己の欲望を満たすためだけに蹂躙しようとする。ラーベは封印していた帝国式飛行術式を展開、地対空攻撃を実施し丘亀を撃破する。この術式の波長を哨戒網で捉え、ラーベの下にやってきた人物がいた。十年生死を共にし、彼が東部に逃亡してから今までずっとその身を探していた彼の部下、アリアだ。
シルヴィア、レイン、アリアをパーティーメンバーとするラーベ一行は、彼らの功績を辺境伯に報告するため王都に向かった。王都での身支度を済ませ、ラーベ一行は辺境伯が住まう邸宅へと足を運ぶのであったが――
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