第1話 異世界勇者の英雄譚
日本国内の、とある県の、とある市の、とある高校の、とある教室で。
本来なら授業が始まっているはずの教室の床に存在する異常があった。
教室の床で、魔法陣が光り輝いている。
そして、その魔法陣をボーッと見ながらポテチを食べまくっている男子生徒が一人。この男の名前は、佐藤心。顔は、百人中百人が『普通かちょっといいぐらい』というレベル。
ポテチを食べ終えたのか、袋を握りつぶしてから誰にともなくつぶやく。
「いったいいつまで待てばいいんだ。もう1時間たっているぞ」
そう、この台詞からも分かるように、魔法陣が出てきてから1時間たっているのである。
教室のドアと窓は全て閉まっており、何故か開かないし壊せないのである。
そのため、授業を受けるために教室の中にいたクラスメイト達と一緒にボーッとしているのだ。
この言葉に反応したのは三人。
「おいおい、どうした?せっかく異世界にいけそう(注、雰囲気です。)なんだ、1時間
ぐらい何だ」
こいつは小森悟。異世界物のラノベにはまったオタクである。
「佐藤君、気をしっかり持とう。皆で頑張れば、何があろうと大丈夫だよ!」
この会話がどこかかみ合っていない奴は白欄星夜。特徴を挙げるなら、まず『イケメンである』が出るだろう。今も俺の目の前で、多くの女子を引きつけるイケメンスマイルを振りまいている。はっきり言って、俺はこいつが苦手だ。
そこまで思考を進めると、魔方陣の輝きが一段と増した。
おっ、やっと異世界にいけるかな?
そう思ったのと同時に、視界が暗転した。
これが、後に『異世界勇者』と語り継がれることになる者の英雄譚の始まりであった。