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きっと一生忘れられない瞬間

キリがいいところまでなので短いです

 こうしていつものように彼女と登校した俺は、なんら変わらない日常を過ごす。

 友達と馬鹿話して笑って、授業は真面目に受けて、でも昨日の夜更かしのせいで、古典の授業ではうとうとしてしまって、委員長にノーと見せてもらって。そして、昼休みは当然美咲と一緒に過ごして。

 少し違ったことと言えば、登校直後に二人で保健室に寄ってマスクを一つもらったことくらいだろうか。

 そんな特別な変化のない、でも最高に楽しい時間を過ごし、放課後。

 俺は約束通り、美咲と二人でゆっくり歩いて帰った。

 昼休みでは収まらなかった話題、午後の授業で起きたこと。とりとめのない話を笑いながらする。

 途中で寄ったソフトクリーム屋ではイチゴと、頼みに頼みまくってようやく許しをもらえたメロンと牛乳のミックスを買い、それを食べながら彼女の家に向かう。

 美咲が俺の食べかけのミックスを舐めて、


「おいしっ」

 

 なんて、笑顔を向けたときは心臓がドキドキと高鳴った。

 俺が美咲のイチゴをもらった時なんて、味の感覚がわからなくなるくらい緊張した。冷静を装っていたけど、絶対顔は赤かったし隠しきれてなかったろうなあ。


「伸一君、ここまででいいよ。ありがとう」


 そんな楽しい時間はあっという間に過ぎていき、美咲の住むマンションのエントランス前に到着した。


「おう! じゃあまたな――っ!?」


 そう言ってつないでいた手を放そうとしたのだが、逆に美咲が強く握ってきた。


「ど、どうした美咲? まさか、俺と離れるのが寂しいのか?」

「……うん、そうだよ。いや?」


 ちょっと茶化し気味に言ったのだが、返されたのは真剣な眼差しだった。


「い、いやじゃないよ! でも今日まっすぐ帰ったのは、美咲の風邪を治すためだろ? こんなところでいつまでもしゃべってたら意味がない。な? 帰ったらメールもするし、明日も会えるんだから」

「……わかってるよ、……だから」


 美咲は、うつむいたまま俺の左手をギュッと両手で握る。数秒後、意を決したように顔を上げると、


「――だから! 風邪の治るおまじないをちょうだい!」

「――――っ!?」

 

 気づいた時には美咲の顔がすぐ目の前にあり、俺のくちびるには柔らかく少し冷たい感触を残していた。

 すっと俺から顔を離すと、


「……ふふっ。もらっちゃった。メロン味のおまじない」


 そう言ってはにかむ。


 そんな彼女の照れくさそうな表情は、イチゴ味とともに俺の脳に強烈な記憶として刻み込む。

 

 ――きっと、いや絶対、俺は今日のこの瞬間を忘れない。

ようやく次はプロローグにつながる話です

佐々木家の闇が徐々に明らかになります

と言ってもラブコメなので、おバカな方面です

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