プロローグ
少しお馬鹿な話を書いてみたくなりました。
ラブコメちっくなものを目指します。
自分の部屋のベッドの上。
窓から差し込む茜色の夕日を背に受けて、俺は人生最大のピンチを迎えていた。
(二時間前には、人生最高の瞬間を迎えてたのにどうしてこうなった)
「……ねぇ、約束したよね?」
潤んだ瞳で俺の視線をとらえたまま、ジリジリと俺を追い詰める。
湿ったくちびるはとても淫靡で、そこから紡がれる声は耳と脳を甘ったるく震わせる。
ついさっきまでの、俺がよく知っている女の子と同一人物とはとても思えないその姿に、不覚にもバックンバックンと心臓が早鐘を打つ。
(俺はどうしちまったんだ!? あの時のドキドキがぶり返してんのか? ……てか、俺、あの時より……って、いやいやいや)
「た、たしかに一つ言うこと聞くって約束したけど、これは――」
「なんでもって言ったよね!?」
頭を振って、ふとよぎったあってはならない考えを払拭する。そしてなんとかこの場を切り抜けようと俺は早口気味にまくしたてるが、彼女はそれを遮り絶対に逃がさないという意思をぶつけてくる。
彼女は雌猫のように四つん這いでさらに迫ってくる。さっきまで履いていたホットパンツはすでに床に脱ぎ捨てられているので、頭越しに、ピンクと白のボーダーのショーツに包まれた可愛らしい臀部が嫌でも両目に飛び込んでくる。
(どうして、こんなことになったんだっけ……)
(俺が悪いのか!? 心に傷のあるこいつに、あんな安請け合いしちまったから……)
(でも、あんなの普通のたわいないどこにでもある約束のはずで……!)
グルグルグルグル終点の見えない思考を繰り返していれば、
「……もう、逃げられないよ」
彼女のショーツも視界に入らないくらい、その整った顔が俺に近づく。
鼻腔をくすぐる吐息。
いつもよりも、さらに高く感じる体温。
それこそどちらかが一歩間違えばキスしてしまう距離感で。
「…………お兄ちゃん」
「ゆ……柚」
「はやくエッチなこと……教えて? それで、わたしの気持ちが本物だってわかって?」
大切にしようと心に決めていた妹が、官能的な湿り気のある音吐を部屋に響かせた。
とりあえず短いですがプロローグを。