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媛西電車 Ⅱ  作者: Hankyu3058
9/13

⑧媛鉄松山(大街道)駅「松山に行ったら…」

⑧松山(大街道)駅 桜川深咲

「遅くなってすみません. これ,忘れ物です.」

「わざわざありがとう! なくしたと思てた」

「すみません,部屋の隅にあったので,俺,昨日まで気付かなくて.」

「ほんまごめん,ありがとう! いまからどっか行くの?」

「松山です. 愛媛県の.」

「へぇ~ 気ぃつけて.またお盆明けの部活で!」

Tp7人で打ち上げした日から1週間.

まだ宿題も全然終わってないけど今から松山へ7日間の帰省.

よりによってこんな時に真弥先輩の家に届け物とは…

朝からやれやれだよ.先輩にも迷惑だっての.

母さんが帰省前に部屋を掃除しろってうるさいから,やけっぱちで隅々まで掃除したら

見知らぬものが出てきて…真弥先輩のものだと判明したらしたで,帰る前に届けてきなさいとうるさく言われ…あーあ,滅多なことしゃべるもんじゃないな…

「深咲. 準備できたか?」

「うん.」

「じゃ,行こうか!」

家族3人で媛西電車の駅に向かった

10時発の快速特急.

一人で行きたかったなぁ.どうせ反対されるから言わないけど…

席は指定していても3人家族だから3席.

向かい合わせにしたクロスシートには他所の人が一人座ることになる.

しょうがないことだけど,話しにくいし,くつろげないよな.

満席じゃなければ大丈夫だけど.

まぁ話しにくいといっても母さんと話す気はないので別にいいけどね~.

松山に行って何しようかな…

去年みたいに1週間ゲームして過ごすのもなんなので今回,ゲーム機は置いてきた.

その代わりに持ってきたのはトランペット.

もともと父さんが使っていたものなので

おじいちゃんとおばあちゃんに父さんが見せたがっているというのもあるけど…

石手川の河川敷で吹いたろうかな. 家で吹いたら近所迷惑だろうし…

「そういえば綾奈と桜と乗ったときは通過する駅名を読めるかやったね~」

「そうだったね. もう20年以上前だよ!」

「今はもう全駅なんとなくわかるから面白くないな」

「あれは桜がいたから面白かったんよ」

「マグロ駅な~. 美波駅とかあったな.」

…父さんと母さんの思い出話が始まった.

横でずっとこれを聞かされるのも疲れるので

電車に興味はないけど一番前,運転席の後ろに行く.

誰にも邪魔されないし,家で聞く阪急の音と違って媛西電車は静かで気にならない

四国に入って,徳島駅を発車したときにデッキから出た. さすがに脚,腰疲れてきた.

「深咲,昼ごはん食べよ?」

と渡されたのは昨日の晩ご飯の残り物.

電車内でコレを食べるのか…

飽きもせず2人は食べている間も思い出話に花を咲かせている.

いつまで続くんだ?

弁当(?) をかきこみ,再びデッキに行った.

電車は山の中を走る.スピードも速く感じられて最高だ.

木々の緑が光って見える.電車の旅も悪くないな.

いつの間にか愛媛県に入って,いつの間にか媛鉄は地下にもぐった.

『まもなく終点松山,松山.大街道です.』

ホームにつくところを見届けたい気もしたけど,座席に戻って降りる支度をした.

荷物を背負ってホームに下りて,観光客でパンパンの市内電車に乗り換える.

まだ15時だ.何しようかな…

こんな小さい箱の中にこんなに人が乗って…早く降りてぇ~.

人を掻き分けなんとか無事に古町駅に降りた.

「あ,深咲. ここ綾奈の家.知ってる?」

「そうなの?こんなご近所なんだ」

こんなところに信乃のおじいちゃんおばあちゃん家があるんだ~

…そうだ! 信乃の家に行ったら駄目かな? 最近会ってないし.

信乃もトランペットやってるらしいから誘ってみたいな.

一人より二人で吹くほうが楽しそうだしな.

もう中学2年生なんだから許してくれるはず.

家に着き,おじいちゃんおばあちゃんに挨拶を済ませたところでお伺いをたてた.

母さんには反対されたけど父さんがOKしてくれたし決定権は俺にある!

トランペットと500円玉を握り締めて出発!

松山に全然似合わないオレンジの郊外電車に一人ゆられる.

媛西電車みたいにガラ空きの快適な車両は川を渡り駅に入った

『石手川公園,石手川公園です.』

ココから先は全く判らないけど,勘を頼りに信乃の家を目指す.

信乃の家は媛鉄石手川駅の目の前.媛鉄は地下を走っているので

交差点の看板などで確認しながら歩く. 歩く.

ようやく媛鉄の石手川駅に到着.とりあえず駅の周りをぐるっと一周して

“筒石”の表札をさがす.

あった~~~~!!

勘で探せる俺は天才かもしれない.

ココだココ間違いない.

アポなしできたけど大丈夫かなぁ.

深呼吸をひとつして,インターホンを押した.


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