⑤日野町駅「2人ってどうなの?」
⑤日野町駅 三国朱鷺
茅野ちゃんがユデダコみたいになってる.
そこへ真弥がすかさず言った.
「あれ? 深咲くん耳が赤いよ」
「赤くないとおもいますよ.」
あ,深咲くん棒読み. おっもしろ~い!こりゃ練習どころじゃないわ.
「いや実際赤いよ」
「同じパート内でカップルできたら面白いですよね~」
「陽乃ちゃんまで話を広げないで!」
「話を止めるってことは実際のことなんですね~」
「真紀ちゃんまで…」
「反対意見無し,全会一致でコレを採択…」
朱鷺は国会風に言ってみた.
「あの,全会一致じゃないですから.」
「じゃあ深咲くんは? 茅野ちゃんのことどう思ってるん?」
茅野ちゃんが倒れる寸前みたいな目になってる
「友達ですかね」
「え? 理想としては?」
「いまで十分です」
「え~,なにそれ~!!男を見せろ,深咲くん!」
茅野ちゃんもはや目を閉じて銅像のようになっている.
「で,茅野先輩. どうなんですか? リア充なんですか?」
「ちがいますー」
あ,茅野ちゃんも棒読み.
こんなに騒がれちゃねぇ,ましてや深咲くんのあの返答.
違うっていうしかないよねぇ~.
「あのさ,Tpだけでコンクールの打ち上げするっていう話してたじゃん.」
何事もなかったかのように真弥が切り出す.
真弥の一言で話が膨らんだってのに.
「あ,真弥先輩. お店決めたんですか?」
「それがぁ. 実はわたくし金欠でして~ お店なんかいけないことが判明しました!」
これまた真弥らしい. 自分で言い出しといて自分で断るのか.
「と,言うことで誰か明日,家を自由に使える人いない?」
うわぁ~ 自分の家は決して使わないというある意味せこい技.
「真紀ん家は無理です.」「あ,陽乃も同じくです」「朱鷺も無理.」
一年と三年即答.出遅れた二年が呆然としている.
「茅野ちゃん家は?」「マ,マンションだからうるさくできないんです.」
「歩瑠ちゃん家は?」「お,お姉ちゃんに聞かないとわかりません!」
「じゃあ深咲くんの家は?」
「…別に大丈夫だと思いますけど」
はい決定! めでたしめでたし!
結局お昼までしゃべってしまい,トランペットはずっとひざの上.
冷房で冷た~くなっていた. 楽器にとっては最悪の環境.
「ではここで休憩です!総員,午後からの合奏に備えて昼食~」
おしゃべりしすぎて休憩時間おしていたので,全員慌ててお弁当を食べ,そのまま全体合奏に突入,茅野ちゃんと深咲くんを追及する時間がないまま下校時刻に.
明日の集合場所を決めて,今日のところは解散.
家について携帯を見る. Tpのグループ内では,途中で終わってしまった茅野ちゃんと深咲くんについての話が繰り広げられていた.
深咲くんだけが携帯を所持していないので不参加.
朱鷺は携帯を腕からはずした. 腕時計型は便利なような不便なような…
『いま深咲くんいないから.』
『茅野ちゃんは深咲くんのことどう思っているの?』
『想ってないとおもいます』
『うわぁ~ いきなり別の漢字に変換してきた』
『ち,違います. 変換ミスです.』
『じゃあ茅野先輩の端末も茅野先輩の恋を応援してるんですね.』
『本当だ”思う”より”想う”方がエモーショナリーだよね!! 茅野ちゃんさすがっww』
『もう! ちがいますよ!!』
『あ~,図星で,否定しまくりだね~ww』
『あたってません! って,私もうねる時間なので失礼します』
『あ! こら~っ!! まだ20時だよ!!』
『歩瑠先輩,きっとそういってこれから深咲先輩の所に行くんですよ.』
『あ~なるほど.でも20時に人の家訪問しちゃあ駄目でしょ!』
『そうですね,明日じっくりと2人に話してもらうしかないですね』
『うんうん.じゃあ茅野ちゃんの話は一旦終わろう.』
ん? 全部のメッセージに5つの”既読”っていう文字が…
朱鷺以外で真弥,歩瑠ちゃん,茅野ちゃん,真紀ちゃん,陽乃ちゃんだから
茅野ちゃん読んでるじゃん!! こらっ!
『茅野ちゃん. 読んでいるなら話に参加しようか.』
『エ?ナンノコトダカサッパリデスネww』
『明日たっぷりと語ってもらうからね』
『耳ガ…ヨクキコエナイデス』
『端末に耳なんぞいらんわ! 目で見てるやろ!』
『茅野ちゃ~ん,先輩のお・は・な・し,ちゃんと聞こーねぇ』
『…ホンジツモゴリヨウアリガトウゴザイマシタ…』
毎日会ってたくさんしゃべってるのに,話尽きないねぇ.
あっという間に時間が経ってしまう.
明日の打ち上げ,楽しみだなぁ.ははっ.