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媛西電車 Ⅱ  作者: Hankyu3058
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⑫石手川駅「動揺?」

⑫石手川駅 筒石信乃

「ああ~,お腹空いた~!」

「もう7時過ぎとるがね.お母さんもお腹空いた~.食べよ食べよ.」

ん?また残り物?

お兄ちゃんが名古屋に行ってからご飯がぱっとしないような…

お母さん手ぇ抜いてる?

「ねえ,これ昨日も食べたよぉ~.」

「文句言うなら自分で作りよ…二人だとおかずが余るんやけん仕方ないやろ.」

そりゃそうやけど~.

お姉ちゃんもお兄ちゃんもいないとお母さんと2人きりでなんだか寂しい.

料理好きなお母さんでもさすがに気合い入らんのかね.

普段は一人っ子がよかったって思うけど,いなくなると寂しいもんやねぇ~

うちが広いから余計にそう感じるのか.

「いただきま~す.」

「で,信乃. 今日はどうやった?」

「もうね~,深咲が来たけんびっくりよ.みんな浮き足だってしもうたというか.でも練習もちゃんとしたよ.屋上で吹いたり,部活の後は石手川で吹いとったんよ.綾羽先輩が私らを尾行しとってね.3人で吹いたんよ.」

「おぉ~ なんかええね. そういえば,深咲くんの楽器も古そうやったろ?」

「え? そうなん? 楽器まで見んかった~.」

「じゃあ今度見てみて. うちとおんなじで,深咲くんも直樹の使っとるけん.」

「へぇ~. あれ? 美波さんのじゃなく直樹さんの?」

「美波はね高校卒業して売り飛ばしたんやって.」

「そうなん?せっかく直樹さんと結婚したのに楽器がないなんて」

「美波と直樹も最初から付き合ってたわけやないしね 大学生の頃,電車の中でたまたま再会したらしいよ」

「伊予鉄?」

「いや媛鉄やったと思うよ」

…よくあんな広い路線で偶然会えたね.

運命的な二人.ええなええな~.

私も深咲と一緒に媛西電車に乗ってみたい~.

深咲と2人でどこか行ってみたい~

小学生のころからずっと深咲のことは好きやったけど

今日1日で深咲への想いが大きくなった気がする.

背も伸びて,制服姿が大人っぽく見えて,でも変わってなくて.

深咲のことばかり考えていたらいきなり母さんが叫んだ.

「信乃っ! こぼしとるよ!」

「え. うそ!」

信じられん,味噌汁こぼしとる…

今になって太ももに味噌汁の熱さを感じる.

空想ってある種の麻酔薬だ…

「ちょっと,固まっとらんで はよ拭かんかね!」

またぼーっとしてた. 布巾をもらってとりあえず床や椅子を拭く.

スカート,洗濯せないかんやろうか…

「信乃?味噌汁臭うけん洗っときなさいよ!もう,帰ったらすぐ着替えないけんよ.」

はいはい.お母さん,洗ってくれんのかぁ…

着替えて,スカート一枚洗濯機に入れて回し始め,食卓にもどってご飯の続きを食べる.

先に食べ終わったお母さんは食器を洗っていた.

このままやとお皿も自分で洗わんといけんかも.とほほ~.

そういえば兄ちゃんの試合,本番はいつやろう?

合宿も兼ねるけん今回は長く行くって言うとった.

んー名古屋ええな~. きしめん食べたい.味噌カツもええな~.

兄ちゃんはJRで行ったんかな?

でもJRやと岡山からは新幹線使えて速いけど

四国出るまで長いよね~ それなら媛西電車使って…

深咲が乗って帰っていった媛鉄.

直樹さんと美波さんの運命の媛西電車.

桃色の媛西電車.

深咲,明日来てくれるかな~.

「ちょっと!片付かんけん,はよ食べて!」

お母さんの声で我に返ったらまた足が冷たくなっていた.

今度はお茶をこぼしていた…

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