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媛西電車 Ⅱ  作者: Hankyu3058
11/13

⑩石手川駅「よろしくね!」

⑩石手川駅  桜川深咲

誰かが椅子をひとつ足して,輪になって座らされた.

「3年の西宮彩羽です. よろしくね~」

「2年の相川志乃です. よろしくお願いします.」

「1年の池田美子です. よろしくお願いします.」

いきなり自己紹介が始まり,俺もつられて

「2年の桜川深咲です. よろしくお願いします」

と言ってしまった.

「ねぇ. なんて呼べばええ? っていうか学校でなんて呼ばれとるん?」

先輩が尋ねる.

「”深咲くん”って呼ばれてます」

「OK. ほんなら私もコレから深咲くんって呼ぶけんね.」

…おお.まじの愛媛人.

「…じゃあ私は深咲先輩でええですか?」

「あ,はい.」

うちのパートと同じで,ココも全員下の名前で呼び合っているらしい.

2年はシナノとシノ.一文字違い.なんかまぎらわしいな~.

「ところで深咲先輩ってどこの中学ですか?」

「東日野中学校. あ,西宮の…」

「彩羽先輩?」

「いや,西宮先輩ではなく.兵庫県西宮市の東日野中学校ってところです.」

「兵庫県!」

信乃以外の3人が驚いていっせいに声を上げた

「まさかの遠距離!?」

「いつ,どうやって知り合ったん?」

「私たち双子だから.」

「え゛ぇ――――っ? 本当に!?」

「なにそれ!生き別れ?どういうことーっ?」

「話しややこしいんですけど.戸籍上は他人だけど双子みたいに育ったというか…」

「あ~びっくりした.でも兵庫と愛媛で双子みたいって,どういうこと?」

「実は私. 生まれたのは西宮市なんです.」

3人から一斉に驚きの声があがる. 

「え!?でもでも. 育ちはずっと愛媛県って前言っとったやろ?」

「母が,深咲のお父さん,お母さんに会いに行ったときにちょうど生まれたらしいので」

「そうか,もともとお母さん同士が友達だったから2人も友達なんやね」

「そうですね. まぁ誕生日も生まれた病院も同じですから」

また信乃以外の3人が驚きの声をいっせいに上げた.

「え! すごく運命的やね信乃! そんなことあるんや」

「まぁそれもあって私は年に1回西宮に遊びに行ってました!中学上がってからは会ってなかった,かな?」

たしかに,信乃に最後に会ったのは中学に上がる前の春休みかな?

「深咲と愛媛で会えるって思わんかったけん私もびっくりしてます.」

「そうなんや~.そりゃびっくりやね~.」

この学校最高だ. 変な恋バナに発展させない素直な人たちばかり!

「そういえば深咲くんはペット吹きにきたんよね? お近づきの印しにみんなでふこか!」

「石手川もええけど,ここの屋上もなかなかええんよ!」

彩羽先輩を先頭にぞろぞろと屋上へ.

やっぱりここの学校は最高.

屋上にも上れるし景色がすごくいい. そばを走る電車も色は松山に似合わないけどのんびりと進む3両か2両で個人的に好き.

うちの学校からみえる電車は超高速で長いからな~ 色は上品だけど.

17時を回っているけど日はまだ沈まない.

夏の夕日に向かってトランペットを吹く.青春って感じ~!!

俺にしては珍しく,やる気に満ち溢れている気がする.

完全下校ぎりぎりまで,お互いが吹いたことのある曲を合わせた.

ここの中学とうちの中学はけっっこう同じ曲を吹いている.

偶然も偶然ですごいな~

「そういえば深咲先輩の中学コンクールは何賞だったんですか?」

「銅賞. 去年も銅賞万年銅賞」

みんな驚いた顔をしたけど声はあげなかった.

「ちなみにそっちは?」

「今年銀賞. 去年は金賞.金賞の方が多いかな. あれ?まえ深咲に言わんかったっけ?」

聞いたっけ? 

吹いてる曲は同じでもレベルが全然違うんだな… 

「そろそろ帰らんといけんね.深咲くん,今日はありがとう!楽しかったわ.」

「いえ,こちらこそ突然お邪魔したのにありがとうございました.」

完全下校を知らせるチャイムが鳴り,校門を出た俺と深咲はみんなと別れて歩き始めた.

初めてじゃないかな2人きりで歩くの.

「そういえばいつ帰らんといけんの?」

「んー 松山にいるのが1週間だからあと6日かな」

「じゃあ,帰る日以外の5日間毎日こっちの学校に来て一緒に吹こうや!」

「俺もそうしたいけど母さんが何て言うかな?」

「そっか~. ほんなら今から河川敷でちょっとだけ吹かん?」

「いいよ. 日が暮れてしまわないうちに」

俺たちは青春よろしく生温かい風をきって川に向かって走った.

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